ボストン地域のあるアジャイルのトレーナーは無償でテスト駆動開発のトレーニングを提供している。Pay-What-You-Canと呼ばれるこのトレーニングは、受講者が対価を払うことを決心しない限りは無償の贈り物だ。さらに対価を払うと決めても、どのくらい払うかは受講者次第だ。新しい贈与経済 へようこそ。
Heart Healthy ScrumのMichael de la Maza氏はボストン地域のアジャイルコミュニティの有名なメンバだ。氏はピンク色の先の尖った帽子をかぶってアジャイルゲームをするのを好む。氏はボストン地域で初めてアジャイルゲームを利用した人物であり、スクラムインスクールプロジェクトの指導者でもある。そして今、氏はテスト駆動開発のトレーニングを提供している。しかも無償で。
Pay What You CanはTDDのトレーニングプログラムだ。このプログラムでは、授業を体験してTDDを学習し、そして授業が終わってから受講者が払いたいと思う金額を支払う。自分で決めた金額を封筒に入れて支払うのだ。
氏によれば、
Pay-What-You-Canは無料または費用が安い場所で開催したり、参加者に自分のラップトップなどトレーニングに必要なものを持ってきてもらうことでトレーニングの費用を低く抑えることに注力しています。受講者には授業の最後に自分が払える分だけ参加費を払ってくれるようお願いします。典型的な言い方をすれば、“授業の最後にインストラクタがすべての受講者に封筒を配り、受講者は支払える金額を支払う。”ということです。
参加者にはトレーニングに対して10セントも支払う義務はない。
Michael de la Maza氏が構想し育てたこのPay-What-You-Canの方針は明確に贈与経済の特徴を示している。この贈与経済は現代用語としては、Eric Raymonds氏によって有名になった。氏はオープンソースについての著作の先駆者だ。In 贈与経済としてのハッカー文化 という文書で氏は下記のように書いている。
贈与文化は希少性ではなく豊富さへの適応です。この贈与文化が発生するのは、生活必需品の不足問題があまり起きない集団です。温和な気候と豊富な食料を持つ経済圏に住んでいる先住民の間には、贈与文化を観察できます。また、私たちの社会でも、とりわけショービジネスや裕福者層の中で贈与文化を見ることができます。豊富さは指揮統制型の関係を維持するのを難しくしますし、交換関係をほとんど無意味なゲームにします。贈与文化では、社会的なステータスは何を制御するかではなく何を与えたかで決まります。
アジャイルコミュニティは贈与経済の経済構造へ移行しているのだろうか。これはアジャイルのアイディアを広めるのに理想的な方法なのか。長期的に見れば、評判の向上のような良い副作用は即座に支払われることよりも価値があるのか。
Pay-As-You-Canと同じようにアジャイルユーザグループの会合も無償の贈り物なのだろうか。恩送りは全体を最適化する無駄のない概念なのか。
贈与経済は希少性が問題にならない原始的な文化に存在する。地球上に残っている原始的な文化はほとんどなく、贈与経済も標準的ではない。システムの言葉を使えば、無償のサービスを提供するコミュニティの活動は "全体を最適化する"活動であり、これはリーン開発の概念そのものだ。
Michael de la Maza氏は賢く創造的で突飛な発想をするボストン地域のアジャイルコミュニティのメンバとして知られている。氏はMITの博士号を保持し、チェスの短期間上達法についての本の著者でもあり、そしてアジャイルのトレーナ兼コーチでもある。
InfoQがこの記事に掲載するために氏にコメントを求めたところ、氏の返答は下記の通りだ。
お金を使わず
勉強したいなら
Pay-What-You-Canを使う
計画をしなさい
信じているのは互恵関係
うぬぼれよりも
信頼重視
砂金の偽造はしない
授業は10月25日にマサチューセッツのウォルサムで予定されている。ここで申し込みができる。
入場するのは、定義通り、無償の贈り物だ。