Ken Schwaber氏はJeff Sutherland氏と共にスクラムの発案者だ。この記事では氏への一連のインタビューの第二部をお届けする。スクラムの認定制度や試験、コーチング、作業管理へのカンバンの影響、そして氏の未来の知識労働への考えについて話を聞いた。
インタビューの第一部はここで見られる。
氏はScrum.Orgの設立者だ。この組織は、スクラムの講義やスクラムの認定やスクラムのスキルの評価を行う。
Ken、典型的な組織は協力して仕事をすることに対して低いレベルの支援しか行わない傾向があります。高いレベルの真の意味での協力が存在しないので、スクラムを推進するための重要な意思決定をするための権威(例えばPOやSMになる人物)はCEO、CFO、VPなどの公式な役職を持つ人物になります。そして、このような役割の人物が作成する方針がスクラムに対する需要を作りだしたのです。このような考えは、スクラムガイドが定義する正当なスクラムを使ってより規範的なスクラムを推進することを支持する根拠にはなりませんか。
もう一度言いますが、規範とは私たちをたくさんの問題に巻き込む古い習慣であり、規範に頼ることはとても滑りやすい坂にいるのと同じことです。規範的なガイダンスはその定義上、限界があります。つまり、あることを行う、べつのあることは行わない、という規定をするのが規範です。他方、スクラムは複雑な環境(わかっていることよりわからないことが多い)に対処するための手法ですので、規範そのものが間違っていることが判明するのはよくあることですし、意図していない結果もまねくでしょう。また、失敗したときの言い訳にも使われます。例えば、スクラムが“スクラムマスタの役割はプロジェクトマネージャが担うべきである”と規定したとします。この規定は次のような非難を生み出します。“他の人をスクラムマスタにしたかったけど、スクラムの規則にはプロジェクトマネージャがスクラムマスタをやらなければならないと書いてあるんだ。スクラムも俺たちのスクラムマスタも最低だ。こんなものに何を期待したらいいんだ。”
スクラムの目的は人々が意思決定を含む作業の中で自分のベストを尽くせるようにすることであり、その結果を考察できるようにすることです。望まない結果の場合は、結果に対して説明責任を持つ人物はその結果を改善するための策を適用する責任があります。規範があれば、説明責任を持つこの人物の役割は規範を思い出すことだけになってしまいます。
私たちは方法論者に捕まってはなりません。また、スクラムを使っている人が賢くなったり抱えている問題を特定したりする必要がなくなればスクラムはもっと単純になる、と主張する人とも距離を置くべきです。
Scrum.Orgの認定制度について教えてください。Scrum.OrgでProfessional Scrum Masterに認定されるにはどうすればいいのでしょうか。
認定や評価は広く受け入れられた知識から始まります。スクラムでは、その知識とはスクラムガイドのことです。このガイドはスクラムの発案者である私とJeff Sutherland氏によるスクラムの定義です。この知識を持っているかどうかを試験するためのいくつかの問題によって評価を行います。私たちは現在、85%以上の知識レベルを示した人に対して認定を行っています。
また、スクラムを使ってソフトウエア製品を作るための知識の評価もありあます。PSM II評価がそれです。3番目の評価は、スクラムチームで特定の技術(現時点では.NETとJAVA)を使って、漸進的にソフトウエアを開発するための知識を十分に持っているかどうかを問います。Scrum.orgはこのような知識を得るためのトレーニングプログラムを開発する組織と提携しています。しかし、このトレーニングと評価とは完全に分離しています。
トレーニングを受けなくても知識を得ることはできます。
有能なスクラムマスタのほとんどが障害として分類されるバックログを持っています。実際にはこれがスクラムの推進に独特の仕方で一役買っているくらいです。スクラムガイドの改訂版は新しい道具を含んでいますね。それはリリースバーンダウンです。では、障害として分類されるバックログがスクラムに組み込まれるのはずっと後になりますか。
これについてはアイディアがあることは確かです。私の本“Enterprise and Scrum,”で、私は企業のプロダクトバックログについて提案しましたが、これは実際は組織に関する障害のプロダクトバックログにすぎません。この点についてはスクラムを使う組織や人にとって便利で必要でありながら、スクラムの正式な定義には含まれない道具がたくさんあるのではないかと思います。
ノート
この記事はKen Schwaber氏のインタビューの第二部である。第一部はここで見られる。次のセグメントでは、スクラムとカンバンの関係やコミュニティレベルでのスクラムの成熟度、アジャイルコミュニティに次に起こることなど、時宜にかなった議論を巻き起こしやすいいくつかのトピックについて氏の意見を聞く。