Ken Schwaber氏はJeff Sutherlandと共にスクラムの発案者だ。この記事は氏への連続インタビューの第三部だ。今回はスクラムの認定制度や試験、Java開発者のためのアジャイルの認定などについて話を聞いた。
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氏はScrum.Orgの創設者だ。この組織はスクラムの講義やスクラムの証明書、スクラムスキルの評価を提供する資格認定組織である。
Ken、プロフェッショナルスクラム開発者の資格について教えてください。
昨年、Martin Fowler氏は、スクラムの多くの実践は“軟弱”だと言いました。氏が言いたいのは、スクラムチームの開発者はすべてのスプリントの最後に固い漸進的結果を構築できないということです。イテレーションの結果が貧弱であるか本当はイテレーションが完成していないということでしょう。Martinと話したとき、スクラムチームには現代的なエンジニアリングの実践技術(受け入れテスト駆動開発やリファクタリングのような)を利用して時間を区切って働くことに慣れない開発者やソース管理や継続的ビルド、自動結合や結合テストのような方法を使った現代的なエンジニアリング環境での開発方法になじみのない開発者が見られるということに私と彼の意見が一致しました。
スクラムは開発サイクル全体をひとつのスプリントに集約しました。そして、要求をスクラムチームの開発者が実装できる可能性のあるものと捉えることで従来の作業と決別しました。これは多くの開発者にとって、とても激しい変化でした。ウォーターフォール開発を広めたすべての非効率性や無駄が明らかになるからです。
エクストリームプログラミングはこの変化に対処するためのプロセスを構築するための重要な一歩でした。しかし、XPやXPのトレーニングは主流ではありません。なので、私は開発環境を構築する製品を開発する企業と協業して、すべてのスプリントでしっかりした漸進的成果を生み出す方法を顧客に示しました。このプログラムはプロフェッショナルスクラム開発者プログラムといいます。このプログラム名にはツールと技術を示す接尾辞(.NETまたはJava)がつきます。
私はプロフェッショナルスクラム開発者プログラムのための評価を作成しました。これを作ったのはスクラムマスタのスキルの評価を作成した理由と同じです。スクラムチームやスクラムの環境で働く開発者になるための知識を自分がどのくらい持っているかを評価してほしいと思います。この評価は講義の資料を元に作成しています。そして、講義の資料はこの産業の最良の実践や特定のツールの使い方、そしてスクラムを元に作られています。私はこの評価が自己評価活動になることを意図していました。また、私たちはプロフェッショナルスクラムマスタ資格に必要な知識を示す人には誰でも証明書を提供します。驚いたことに、多くの組織が私たちと一緒にスクラムプロジェクトのチーム(の開発者)に参加するのに適任の人を選別する方法としてこの評価を利用するために私たちと協業しています。請負業者が適格かどうか判断したり雇ったりするためにはこの評価はとても便利です。
Java開発者の資格はどのような状態ですか。
私たちのパートナーのうち5つがPSD.Javaプログラムを開催しています。各プログラムはRTCのようなJava開発のための特定のツールを扱います。公開講座はすべてScrum.orgで見つかります。またパートナーのZuehlkeは12月にJavaコースを開催することを発表しました。現時点ではパートナーが開催する顧客向けのJavaコースはかなり予約されています。もし特定の技術について支援ができるかどうか調べたいなら、私が仲介して適切なパートナーと連絡をとれるようにすることもできます。
ICAgileの認定制度にはどのような意見を持っていますか。'メリットバッチ'モデルは一般的なアジャイルの認定制度として理にかなっているでしょうか。
私はAlistair Cockburn氏の仕事をとても尊敬していますし、ICAgileの認定制度も同様に素晴らしいものになるでしょう。しかし、私が注力しているのは、幅広い観点で見つかる問題ではなく現時点でスクラムに見つかっている特定の欠落です。
スクラムはITとは関係のない領域にも広まりつつあります。それは、サービスビジネス開発の分野や複雑さが支配する領域です。この点についてどう思いますか。
素晴らしいことだと思います。Jeff Sutherland氏はすでにスクラムを宗教団体で利用しています。また、ある講義に参加した人は自分の子供と一緒にスクラムを利用しました。この子の名前はEmilyで、Emilyは生後18ヶ月で缶詰の野菜を食べたがりませんでした。父親はめげずに毎晩、スプーンで何杯も野菜を与えようとしても、Emilyは口を閉じてそのスプーンを叩き落とそうとするので、食事の時間全体が遅くなり食卓も汚れてしまったでしょう。そこで父親は家に帰って、夕飯はスプーンで何杯欲しいかをEmilyに聞きました。Emilyはじっくり考えて1杯と答えました。父親はスプーン1杯を彼女に与えました。彼女はそれを食べました。父親やそれ以上は食事を与えずに他のことをし始めました。するとEmilyは声を上げて“もう一杯欲しい。”と言いました。これがスクラムです。スクラムとは可能なことを最善の手を尽くして実現する態度なのです。私はソフトウエア開発の分野に注力していますが、このような態度は、すでに浸透して幾分時代遅れでもある指揮命令型の働き方ではなく、複数人が共に力を合わせて働くことに転化します。
スクラムのための幅広い資格制度が増えることで、雇用者や求職者、資格を得ようとする人の間にスクラムに対して恐怖感や不安や疑いが生まれているという人もいます。このような人々に対してScrum.orgはどうやって価値を与えますか。
私たちが行うのは、目的に合致した、透明な評価試験を通じて価値ある資格証明書を提供することだけです。この評価試験は検証済みですし、継続的に改善されています。また、既存の知識に基づいています。したがって、この資格証明書を持っていることを要求されたら、それが意味することは明らかです。
この記事はKen Schwaber氏へのインタビューだ。
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