ニューメキシコ・ハイランズ大学(NMHU)が"世界が直面している複雑で"危険な"問題やシステム的な課題を、コンピューティングを使って解決する能力を持つ専門家のコミュニティ"を育て、支援するためのユニークなプログラムを再開した。NMHUは検証のためにこのプログラムを試験的に導入した。そして、より短い期間で、大学を卒業した熟練の専門家と共に幅広い教育を与えることが可能であることを実証した。InfoQは以前、このプログラムの理念や構造について記事を書いた。また、運用1年目の体験レポートも行った。
ハイランズ大学でのこのプログラムは試験的な運用を行った年の終わりに棚上げになってしまった。学問的な価値や成功がないという理由からだ。その後、このプログラムはサンタフェ大学で実施されたが、大学が財政的な理由で閉鎖されてしまった。そして去年、ハイランズ大学でこのプログラムが再始動して、この秋、再び完全に運用が開始される。
このプログラムの根底にある概念や思想には次のような考え方が含まれている。すなわち、複雑な問題に対する革新的解決策の発見と実装は、本質的には"芸術"であり、形式的な科学やエンジニアリングの実践には還元できないという考え方だ。このプログラムの本当の目的は、"創造的博学者"に学位を与えることだ。創造的博学者とは、複数の領域の知識を身に付け統合し、ビジネスや政府、社会が直面する問題に対する解決策を発見し実装するために必要な考える技術を持つ個人のことだ。
下記がこのプログラムの具体的な特徴だ。
- 徒弟制度。すべての学生は複数のプロジェクトでチームで作業をし、アジャイルな手法を使って、プロの開発者と共に働きながらプロジェクトの目的を達成しなければならない。プロの開発者は指導役になり、通常は大学卒業後、就職してから獲得するような暗黙の知識を授ける。
- プロファイルに基づく学生の評価。このプログラムでは、能力を示す7つのレベルと共に数百の"資格"が定義されている。学生はすべての資格について、レベル3の能力(新しい文脈に持っている知識を適用できる能力)に達したこと示さなければならない。さらに、重要な資格についてはレベル7の能力(その資格に関わる領域を理解するために独創的な提案ができる能力)に達する必要がある。このような仕組みを導入することで、学生が強力な基礎知識と経験を持つと同時に、個々人の興味がある分野の知識を獲得し専門化することを保証できる。
- 卒業時には、課程の名前と評価が書かれた単なる成績証明書ではなく、業績のポートフォリオが授与される。
- すべての学生が専門家集団のメンバになることを期待されている。したがって、論文や発表によってそのような専門家集団に貢献することができる(新入生を含む学生の60%はこのプログラムの試験期間中に論文を書いて発表し、OOPSLAやアジャイルの会議に受理されたり査読を受けた)。
- 学生は卒業するときには、専門家のネットワークを持つ。これは実習で協業した専門家のネットワークがあるからだ。また、その専門家が参加する会議とも関係を持てる。
- プロジェクトや学業のすべての活動は"ワンルームスクールハウス"で行う。これは、アジャイルのチームルームを真似ている。教育は'要求に応じて'行われ、現在のプロジェクトの文脈に即座に統合され適合される。こうすることで、伝統的な大学の学期と3時間のコースを基本に据えるプログラムと比べて、知識を伝授するのに必要な時間が大幅に少なくなる。
加えて、このプログラムは外部の組織に次のような機会を提供する。開発力の提供(オフショア開発と同じくらいの値段で)。"エクスターンシップ"(学生を選び、自分の企業の自分のプロジェクトで働いてもらう。学生はここで最良のインターンシップよりも広範囲で継続的な指導を受けることができる。)そして、研究と雇用だ。
このプログラムについての詳細は上述したInfoQの記事を参照されたい。問い合わせはDavid West博士宛に。連絡先はdmwest@nmhu.eduまたはprofwest@fastmail.fm。