2010年の調査によると企業がデータセンターを仮想化する努力は鈍化したようだ。この調査はInformationWeekが行ったもので、年次で行っている調査の第2回目だ。主な調査結果は、約20%弱の企業が2011年までに25から49%のサーバを仮想化する予定で、10%弱の企業が50から74%のサーバを仮想化する予定だ。
1年前、企業はデータセンターを仮想化することに意欲を示していた。これはサーバ環境を整備し、運用上の柔軟性の確保や電力消費の抑制、物理的空間の確保、災害時回復体制の強化、高度な可用性の確保が目的だった。仮想化については楽観的な見通しが支配的だった。1年前のInformationWeekの調査によると、54%の企業が50%から90%超のサーバを仮想化するつもりであり、53%の企業が半数のサーバの仮想化を予定していた。実際の仮想化の計画を報告したのは1%の企業だけだった。しかし、仮想化の動機は昨年とほとんど変わらなかった。もっとも大きな変化は運用柔軟性と俊敏性確保に対する願望が上昇したことだ。また、仮想化を電力消費の抑制のため行う企業の割合は5%まで下落した。経済状況やグリーンコンピューティングへのコミットメントの上昇を考慮するとこれはやや奇妙なことかもしれない。
ビジネス目的を達成するためのITの能力は仮想化によってどのように影響を受けるのか。企業はこの質問を受けた。下記がそれぞれの上位3つのビジネス目的の評価点と下位3つの評価点(評価点の意味は、'1'は大幅に悪化する、'2.5'は変わらない、'5'は大幅に改善される)の平均値だ。
- アプリケーションやサービスの高可用性 - 3.9
- 災害時回復 - 3.8
- 新サービス配置の高速化 - 3.8
- ビジネスユニットによる自己供給 - 3.3
- データセンター人員の削減 - 3.2
- IT部門の負担 - 3.1
この調査のもっとも面白い結果は投資対効果についてだろう。ROIを計測するつもりの企業は30%だけで、83%の企業は仮想化は"うまく元が取れる"と考えている。70%の企業はROIを計測していないが、その中の87%は"支払った分だけの価値を得られる"と感じている。
仮想化に深く関わる企業はいくつかの関心事を報告している。そのうちの上位3つは、
- 最大の関心事は、既存のデータセンターの管理ツールの仮想化環境への対応機能。
- 次はアプリケーションの性能を監視する能力。
- 3つ目は仮想化マシンのライフサイクル管理と仮想マシンの無制御作成。つまり仮想マシンの不規則なライフサイクル。
このInformationWeekの調査はGartner Groupとの共同調査だ。Gartner Groupの調査では仮想化されたのはデータセンターの負荷の16%だけだ。このデータセンター仮想化の流れの鈍化は、CIOたちが次のことに気付いたことの現れだ。つまり、仮想化のコストは"よろめいて"いて、利益は"はっきりしていない"。
理由はたくさんあります。簡単に仮想マシンを作成できる能力があると、もっと多くの仮想マシンを作っておきたいという考えに傾きがちです。その結果、ITマネージャはたくさんの仮想マシンが手中に散らばっているのを発見するでしょう。またひとつの環境に多くの仮想マシンが集中して構築されると、性能や管理の問題が現れます。仮想マシンが動作しているかどうかの監視だけでなく、VMが確保しているリソースが適切かどうかも監視しなければなりません。... そしてひとつのサーバにホストされている仮想マシンの数が増えると、I/Oに問題が発生し始めます。
I/Oについての認識を持つことは仮想化についての主要な検証ポイントだ。この点は多くのベンダが解決策を提供してきた。CiscoとVMWareはネットワークの"織物"を構築した。これはUnified Computing Systemを通じて提供される。HPは BladeSystem Matrixを提供し、サードパティベンダのXsigoはBladeSystem Matrix向けのI/O Directorを提供する。また、I/Oそのものを仮想化しようとする試みも行われている。ハイパーバイザの仮想スイッチからI/Oを移動して、ストレージやネットワークの宛先に応じてパケットを分割したりルーティングしたりできるハードウエアデバイス上にI/Oを組み込むという試みだ。
他の将来有望な技術的進歩と同じように、仮想化は大きな期待と共に導入された。しかし、その期待は経験によってやや和らげられた。組織が仮想化技術を有効に使おうとするにつれて、経験も期待に答えるようになるだろう。