様々なフォーラムでよく聞かれる質問は、スクラムマスタとプロダクトオーナーの役割の組み合わせは受け入れられるかということだ。アジリストのほとんどはこれらの役割は水と油のようなものだと信じている一方で、これらの組み合わせが避けられない状況もある。
Mike Cohn氏がハーバードビジネスレビューの興味深い例を引用した。Hayagreeva Rao教授は、海賊船の船長の仕事のプロフィールを定義するように学生たちに課題を出した。できあがった仕事のプロフィールには、船長の責任に関して主に2つの分野が挙げられていた。
- スタータスク–攻撃する船を決めたり、戦いの間に乗組員に命令したり、他の船長と交渉したりする戦略的な作業。
- ガーディアンタスク–海賊の戦利品を分配したり、争いを解決したり、乗船員を罰したり、けが人の手当てをしたりする運営的な作業。
Rao教授によると、1人で両方の責任を扱う能力を持つのは難しい。スタータスクはリスクを取って、起業家精神を持つ必要があるが、ガーディアンタスクは調和が必要だ。Mike氏の意見では、スクラムマスタはガーディアンタスクを実行する責任を持ち、プロダクトオーナーはスタータスクを実行する。両方のタスクは重要であり、わき目もふらずに注目し、注意する必要がある。
Boris Gloger氏はスクラムマスタはプロダクトオーナーにはなれないという意見の一連の理由を挙げている。以下に一部を示す。
- スクラムマスタは、自分がプロダクトオーナーとしてひどい仕事をすると自分自身に言えないだろう。
- プロダクトオーナーは、開発チームに対してスクラムマスタから何も助けを得られないだろう。
- スクラムマスタとプロダクトオーナーの役割は、チームが自分たちの技術的解決策を思いつくという考えに関して対立するだろう。
- スクラムマスタは、今では結果に巻き込まれている。失敗したら、経営陣からすべての非難を受けるのはスクラムマスタだ。
- レビュー時に製品の検証を誰が行うか? スクラムマスタ/プロダクトオーナーはもはや独立していない。
- スクラムマスタとしてプロダクトオーナーは品質の欠陥を受け入れる。スクラムマスタが突然、その権力を持つからだ。
Ben Johnson氏とGeoff Watts氏によると、実際の状況において、スクラムチームメンバが2つの帽子を被るいくつかのシナリオがある。スクラムマスタと開発者であることは最も起こりえることで、プロダクトオーナーと開発者になることはあまりない。3番目の組み合わせは、スクラムマスタとプロダクトオーナーであり、明らかに利益が衝突する可能性が高い。両氏によると、
これには、利益が衝突するさらにはっきりした可能性さえありますが、どちらの帽子がより支配的かによって、私たちはまったく異なる結果が見えます。例えば、ビジネス側から本当に選ぶ人がいないために、スクラムマスタがプロダクトオーナーの役割を引き受ける場合があります。この場合、もっと技術的に注目すべきことを犠牲にして、実際にビジネスで重要なことを重視するようになります。
しかしながら、両方の役割を組み合わせる状況や事情の例がある。
スクラムマスタとプロダクトオーナーの役割を組み合わせたトヨタ製品開発システムのチーフエンジニアの役割について、Richard Lawrence氏が引用した。Richard氏は以下のように述べた。
私は驚かずにはいれられません。トヨタは世界で最高の製品開発企業の1つです。トヨタのコンピュータエンジニアたちは、ソフトウェアチームの対立を免れた特別な人種なのでしょうか? 私たち残りのものは、自分たちの自分勝手な利益のバランスをとるために、役割を区別する必要があるのでしょうか?最低限でも、プロダクトオーナー、スクラムマスタ、そして、チームの利益が根本的に対立していると分かったら、なぜかを尋ねるべきです。私たちは皆、今も、将来も、価値のあるソフトウェアを作り出すという同じ目標を持つべきではないでしょうか?
同様に、以前、InfoQで議論されたように、Jason Little氏が示したのは、小さなチームのような状況では、プロダクトオーナーの責任の一部がスクラムマスタにひょっこり舞い込み、チームはうまくやっていかなければならないことだ。この取り決めは長く続くべきではないが、1年間のように短い期間ならば続けられると、Kevin E. Schlabach氏は述べた。 Ben Johnson氏とGeoff Watts氏は、スクラムマスタとプロダクトオーナーの組み合わせは、プロダクトオーナーが常にスクラムプロセスについて意識している場合にうまくいくだろうと提案した。
このように、スクラムはプロダクトマスタの役割を持たないという全体的な合意がある。スクラムマスタとプロダクトオーナーの役割が、ある期間、組み合わせされる状況もありえるが、この取り決めは一時的なもので、出来る限り早く改善されるべきなのだ。