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イノベーションの促進役としての EA

原文(投稿日:2010/12/09)へのリンク

エンタープライズアーキテクチャ (EA) はほとんどの IT 組織において,ビジネスニーズへの適合あるいは整合を達成するメカニズムとして理解されている。しかし Lockheed Martin 社のシニアフェローである Melvin Greer 氏は, Government Computer News (GCN) でのインタビューを始めとする数多くの発言を通じて,エンタープライズアーキテクトたちに対して,イノベーションの実現者として EA を推進するように求めている。InfoQ では,エンタープライズアーキテクチャに対して氏が持つビジョンと,それが IT とビジネスの関係に与える影響を明らかにすべく,氏にインタビューを行った。

InfoQ: イノベーションの持つ意味や関連性は人によってさまざまです。EA が実現するイノベーションとはのようなものなのでしょう。

イノベーションとはよいアイデアを収益化することである,と言っていいでしょう。完全にビジネスのコンテキスト中の存在です。私たちがイノベーションを語るときは,新たなビジネスアクティビティ,新たな製品ないしサービスの開発,ビジネスの隣接マーケットへの拡張による組織利益の拡大,などといったものを指しています。

氏は GCN とのインタビューで,イノベーションに関するこのアイデアの例について説明している。

エンタープライズアーキテクチャを使用する重要な例は,サービス指向アーキテクチャとクラウドコンピューティング戦略の開発に見ることができます。私は [Lockheed 社の] SOA 能力センタ (Competency Center) のディレクタを務めていますが,このセンタの目標は,私たちが関与するすべての政府機関プログラムに対して,サービス指向アーキテクチャの認識と適用性を向上させることにあります。そこでは SOA インフラストラクチャと SOA ソリューションの採用に関する物差しとして,エンタープライズアーキテクチャが使用されています。SOA 実装の成否を判定する方法について考えるとき,エンタープライズアーキテクチャの一部である正常適合性に関するメカニズムが,その測定手段を与えてくれるのです。

氏は SOA に関して,具体的なビジネスを目標とした Web サービス開発のためのサービスモデリングツールだけでなく,米国国防省アーキテクチャフレームワーク (Department of Defense Architecture Framework, DODAF)連邦政府エンタープライズアーキテクチャフレームワーク (Federal Enterprise Architecture Framework, FEAF) の成果としての Information Exchange Matrix (IEM) についても言及している。 私たちは次に,イノベーションにおける EA フレームワークの影響について質問した。

InfoQ: 現在の EA フレームワークはイノベーションに対して,あなたが想像したように対処していると思われますか。あるいは具体的な領域での進展があったのでしょうか。

複雑に発展する EA の性質に適応するため,EA管理成熟度フレームワーク (Enterprise Architecture Management Maturity Framework, EAMMF) 2.0 が拡張されました。以前のバージョンに加えて,さらに多くのスコープとコンテントが追加されたことに,私は意を強くしています。GAO (General Accountability Office,政府説明責任局) はフレームワークを更新して,エンタープライズアーキテクチャの進展を反映させてくれました。ここで私が強く言いたいのは,アーキテクトたちが EA の正当性に対する態度を改める必要がある,ということです。ビジネスを熟知しているアーキテクトたちは,ビジネス指標を利用することで,ビジネス上の使命と目標に沿ったビジネスのイノベーション,あるいはアーキテクチャ的に成熟したプログラムの開発提供,といったものに注目した EA ビジネスケースを開発する上で,有利な立場にあるのです。

EA あるいは関連する技術革新がすべてビジネスのコンテキスト内にあるとすれば,「IT とビジネスの整合性」とはどのような概念なのだろう? 氏は次のように答えている。

ビジネスとの整合性というコンセプト自体,学校教育的な古くさい EA 概念だと思っています。セールスにはビジネスとの整合性が必要だ,などと主張する人はいません。それこそ単なる笑い話です。アーキテクトたちが IT をビジネスに適合させる方法として EA の利用を語るとき,そこに危険なメッセージが潜んでいるのです。つまり,1) IT とビジネスはそれぞれが調和的でない異なった目的を持っている,それゆえ調整が必要である,という前提,2) IT とビジネスを遂行するチームは別である,という考え方の強調,の2つです。これはビジネスに対して,IT はビジネスとは異なるミッションをサポートし,ビジネスの本当の目的を理解しない,異なる義務感を備えたものである,というメッセージを送ることになります。IT がビジネスの言葉を話し,ビジネスの延長として同じツールと指標を用いてスコアを付け,すべてのコミュニケーションにおいてビジネス革新への貢献を伝えるならば,調整という行動は無用なのです。

インタビューを結ぶにあたって氏は,現在のトレンドとして注目されている,IT 責任者に対するコアビジネススキルの重要性や,SOA やクラウドコンピューティングといった技術動向に関する EA の役割などについて説明した。

非 IT 関係者を CIO に登用する動きが目立っています。この役割に望ましいスキルとして,ビジネススキルが求められていることを示すものでしょう。継続的な意見交換,あるいは EA と SOA ,クラウドコンピューティングの相互関係の理解にも注目すべきです。私は現在,EA が基本的なプロセスであり,SOA がクラウドコンピューティングにおけるデファクトアーキテクチャである,というコンセプトを進めています。現在はまさにビジネス変革の時であり,エンタープライズアーキテクトたちはそれぞれが関連する急速な技術革新において,最前線の役割を担うのです。

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