今週、Red Hatは、クラウドベースのプラットフォームアズアサービス(PaaS)企業Makaraの買収を発表した。Makaraはそれ自身インフラをもっていないという意味で、PaaSプロバイダの中では珍しい存在である。そのかわり、Makaraのサービスは他のクラウドプロバイダ上で仮想レイヤとして動作し、デプロイ、スケーリング、モニタリングに対するよりシンプルなツール群を提供している。これを、移動型PaaS、つまり、蜜に統合され、公開された形でホストされたクラウド管理ツール群をクラウドファサードとして提供するもの、と考えよう。
Red Hatはこの買収の動機を次のように説明している。"JBoss Enterprise Middleware インフラストラクチャにMakaraクラウドアプリケーションプラットフォームを統合することで、Red Hatはより包括的なPaaSソリューションを提供し、多くの組織が最小限の変更でアプリケーションをパブリックおよびプライベートクラウドへ素早く移行することが可能になる。"
理論的には、どんな開発ツールショップもJCloudsのようなツールを用いてMakaraのような管理ポータルを実装することが可能なはずである(Makara自身もJCloudsを利用しているように見える)が、Marakaを利用する1つのメリットは、Marakaが自動スケーリングとマネジメントに早くから目を向けて、開発者向けの多くの決断を行ってきている、ということである。
JBossアプリケーションをMakara上にデプロイするには、そこにクラウド証明(例えば、デプロイする人がもつAmazon EC2アクセスキーと秘密鍵など)を提供し、アプリケーションをデプロイするクラスタのサイズを伝え、アプリケーションのJBossデプロイフォルダの中身をアップロードし、データベーステーブルを追加する。一度行なってしまえば、Makaraはログファイルを監視し、適切にスケールアップしたりスケールダウンしたりする。
特にトライアルアカウントにサインアップすることを快く思わないような人たちには、マーケティングだらけのウェブサイトを調査して、Makaraが正確に何ができて何ができないかを理解することは難しいだろう。そこで、InfoQでは、Makaraのトライアルアカウントに実際にサインアップし、他のPaaSプロバイダとMakaraとの大きな違いを明らかにした。
- Amazon EC2とvCloudといったクラウドプロバイダ間で移動できること。今のところ、EC2は"オンデマンド"エディションのみでサポートされ、vCloudはプライベートクラウドでのみ利用可能なので、この可搬性は一部理論的なものではあるけれど。
- パフォーマンス履歴に対する指標を含むパフォーマンス監視ツールの統合スイート
- Splunkが提供しているものと似たログ集約
- 各リリース間のファイル単位の変更が比較可能な組み込みのdiffツールを含む、ファイルブラウザ
- Apache rewriteルール、任意のJVMパラメータ、すべてのJBoss設定ファイルを含む熟練者向け設定へのアクセス。これは驚くべきこと。
- クラスタマシンへのsshアクセス
- MySQLへのrootアクセス
上記のようなものであるにも関わらず、Makaraはそのクラスタにデプロイされたアプリケーションの自動スケーリングと監視を提供している。その背後では、サービスがアプリケーションを監視し、負荷に応じてスケールアップ、スケールダウンを行っている。開発者はデフォルトのスケーリング戦略を利用することもできるし、平均CPU負荷や各サーバへの毎秒のリクエスト数といった指標に応じて独自の戦略を指定することもできる。
しかしながら、Makaraには期待していなかった側面も幾つかある。まず第一に、Makaraは開発者のアプリケーションの一部を効果的にアウトソースするので、AmazonがAWSアカウントページにおいてしっかりと"保護のために、秘密アクセスキーを他のいかなる人とも共有すべきではありません"と記載されているにもかかわらず、開発者はMakaraにプライベートアクセスキーを提供しなければならない。さらに、請求は、Makaraではなく、その下にあるクラウドプロバイダを通じて行われる。最後に、推定ではあるが、Makaraが提供しているsshアクセスとMySQLルーツアクセスを利用して、Makaraが追加している開発者は監視、ログ集約や自動スケーリングの値などを壊してしまう方法がある。
Makaraは同時にPHPで記述されたような非JBossアプリケーションのデプロイもサポートしている。しかし、Red HatはJBossを保持しており、そのプレスリリースでPHPについては一切言及していない。そのため、Red HatにおけるPHPの未来は不確かなままである。