HP は昨日,HP Hybrid Delivery を発表した。これは Amazon の AWS や Rackspace の製品への対抗を意識した,コンピュータインフラストラクチャのフルセットである。同社が コンバージド・インフラストラクチャ (converged infrastructure) と呼ぶそのアーキテクチャモデルでは,クラウド上にホストされるアプリケーションに対して,コンピュータ処理/管理スタックのすべてが一括した形で提供される。この製品において HP は,いくつかの点で現行の競合他社製品との差別化を図っている。
製品について
エンタープライズサービス – コンピュータ処理 機能
- ストレージ管理 – HP SAN のサポートと管理
- ネットワーク管理 – すべてのネットワークコンポーネントの監視と管理
- 障害および変更管理 – 初期導入時の障害サポートと変更管理
- 設備管理 – ハードウェア設備の管理
- HP エンタープライズクラウドサービス・ポータル – 操作上の可視性,パフォーマンス,および構成パラメータを提供する管理ポータル
- Windows および大部分の Linux ディストリビューションをサポート
HP CloudSystem はすでに発表済のサービスを,プライベートクラウドとパブリッククラウド,さらにハイブリッドクラウド環境という,すべてのクラウド形態を提供対象とするサービスコレクションに統合したものだ。この統合システムでは,社内およびクラウドのインフラストラクチャ管理のすべてにおいて,HP の Cloud Service Automation が使用される。
さらに HP Cloud Discovery Workshop という名称で,HP サービスの指導による1日ないし2日のトレーニングのシリーズも用意されている。
差別化について
AWS との主な違いは,HP のシステムでは同社の管理する物理マシン上でワークロードを実行可能なことに対して,現時点ではクラウド大手の中で Rackspace のみが仮想マシンをサポートしている点に見ることができる。これ以外の差別化要因としては,HP では顧客自身がインスタンスを管理するか,あるいは HP が管理を提供するかを選択できる,2つのサービスレベル契約が提供されていることが挙げられる。
- HP サーバ管理 (HP Managed Server) – すべての管理,監視,保守ソリューションが提供される。顧客はオペレーティングシステムを気にする必要がない。
- 顧客サービス管理 (Client Managed Server) &ndash 初期OSインストールのみが提供される。それ以降は顧客自身が OS とそのライセンスを管理維持し,その安全性を保証する。
HP がハイブリッドクラウドコンピューティングモデルを重視するのは,プライベート,パブリッククラウドの両方に対する多額の投資が期待できるからだ,とエンタープライズセールス取締役副社長 Thomas Hogan 氏は述べている。
私たちは,インフラストラクチャ資産の基盤提供に重点をおいています。今後数年の間には,すべての情報資産の4分の1がプライベートクラウドに,さらに4分の1がパブリッククラウドによって提供されるようになるでしょう – そして 2014 年には,クラウド関連の商用エコシステムの価値は1兆ドルに達するものと思います。
競合会社と比較すると,HP がクラウド製品の提供に多少の遅れを取った感はある。しかし EDS 買収を通じて獲得した長期に渡るホスティングビジネスの経験と,定評のあるエンタープライズデータセンタ経験,この2つの組み合わせが,管理されたプライベートクラウドの世界におけるリーダーシップを同社にもたらすことだろう。