Apacheソフトウェア財団はObject Oriented Data Technology(OODT)アーキテクチャをトップレベルプロジェクト(TLP)に選出した。OODTはもともとPasadenaにあるNASAのJet Propulsion Laboratory(JPL)でつくられたもので、地理的に分散した異種のコンピューティングとメタデータミドルウェアによるデータリソースの透過的な統合を実現する。
OODTが立ち向かおうとしているチャレンジは主に科学領域から生まれたものである。科学領域では大量の重要なデータが地理的に異なる場所にある独立したデータリポジトリの中で生成され蓄えられている。ユーザがこれらのデータを分析したり取り出したりする必要があると、そのユーザは多様なカスタムビルドツールを利用しなければならない。この問題を解決するために、OODTは分散リソースへの透過的アクセス、データ検索やクエリ最適化のための機能を分散処理や仮想アーカイブとともに提供している。このようにOODTを利用するアプリケーションは異なるデータソースから一元的な方法でデータを扱うことが可能である。OODTの実装は主にJavaで書かれていて、その開発者によれば“コンポーネントのダウンロードと依存関係の自動化のために”Mavenを利用している。
OODTは主に次のような機能を提供している
- カタログとアーカイブ:リソースからメタデータを抽出し、そのメタデータを長期アーカイブにストアし、バージョン管理やデータ取り出しも実現する機能。
- グリッド: メタデータを含むリソースのようなエンティティを説明し概略を提供したり、“標準フォーマットで生成物(リソース)やメタデータを取り出す”ためのコンポーネント。OODTは、CORBAやRMIに加えて、概略を提供したり生成物のサービスを提供するためにRESTを利用するWebGridを含む。
- 共通:クエリ表現、シングルサインオン、IOストリームやロギング、XMLといったような種々のユーティリティなど共通機能を提供するユーティリティコンポーネント。
- OODTアジリティ: Apache OODT の Python による再実装。高いパフォーマンスと開発や統合の加速を目指すもの。
ApacheOODTウェブサイトによれば、このソリューションは科学コンピューティングに適しているだけでなく、情報の処理そのものに対するモデルを含む一般のソフトウェアアーキテクチャを提供している。さらに、知識検索に対するサポートを導入し、データ、技術、メタデータが不均一である状況を隠蔽する統合層を提供している。
2010年1月、JPLはOODTをApacheライセンスでのインキュベーションプロジェクトとして提供した。インキュベーションプロジェクトは多様な開発者コミュニティが品質の向上とコードの利用に対するコミットメントを示すかどうかを検証することになっている。わずか11ヶ月後にOODTがトップレベルプロジェクトに昇進したことは、Apache財団がOODTをその技術ポートフォリオの重要な部分であると考えていることを示唆している。この文脈で興味深いのはApache HADOOP (“信頼性があり、スケーラブルな分散コンピューティング”)とOODTがお互いをどのように補完していくかであろう。