3月7日に開催された CloudConnect 2011 で GigaSpaces は,第2世代クラウド対応プラットフォーム を2011年第2四半期にリリース予定であると発表した。この新しいクラウド対応製品は,同社 eXteteme Application Platform (XAP) の既存ユーザが提供の対象とされている。今回のリリースは特に,PaaS および SaaS 対応プラットフォームを新たに使用する,あるいはすでに使用しているユーザの要求に応えるものだ。
今回のリリースでは,以下の機能が追加されている。
§ サイロフリー(silo free)・アーキテクチャ。これはエンド・ツー・エンドのアプリケーションとデータを一体化した環境であり,クロススタック(corss-stack)対応,マルチテナンシ(multi-tenancy),統合化された SLA(Service Level Agreement) 駆動パフォーマンス,集中管理などを提供し,開発および運用プロセスを簡略化する。
§ クロススタック・ファイングレイン(fine-grained)・マルチテナンシ。Web 層から顧客データレベルまでをユーザ,データ,およびアプリケーションポリシ駆動で構成する。また,アプリケーションのマルチテナンシ性の全面的なコントロール,セキュリティ,高度な視認性を提供する包括的な管理コンソールによって,管理および監視操作を容易にする。
§ DevOps の組み込み。アプリケーションとミドルウェア全体のライフサイクルとリソースを統一的に管理,自動化することにより,運用時および開発時における複雑性を劇的に軽減する。
§ サードパーティ製ミドルウェア (Tomcat,Cassandra,JMS など) 管理機構の標準装備。デプロイ時あるいは稼動時,すべてのアプリケーションミドルウェアサービスを自動化および管理する。
§ オープン性。移植性を向上し,複数の言語とミドルウェアをサポートする。またプライベート,パブリック,およびハイブリッドの各クラウドにおいて,既存のプロセスやシステムとの統合を容易にする。
InfoQ では GigaSpaces チームから,技術的理解を深めるための情報を得た。
InfoQ: "サイロフリー・アーキテクチャ・プラットフォーム" について説明してください。これはマルチテナンシを意味するのでしょうか。あるいはそれ以外の,サイロ効果 (silo effect) を回避する何らかの側面があるのでしょうか。
私たちが "サイロフリー" という言葉で表現しているのは,マルチテナンシではありません。そうではなく,この製品が管理するすべてのサービスに対して,テクノロジや提供ベンダに関わらず,等質な自動制御と処理の方法を提供していることを指しているのです。任意のサービスをデプロイ,開始,再起動,停止,スケールアウト,フェールオーバ,アンデプロイ (デプロイ結果の撤回) 可能な,汎用的かつカスタマイズ性のあるサービスグリッドを提供することによって,アプリケーション間の橋渡しを行い,開発と運用の一体化を実現します。操作の内容はデプロイ対象サービスをカスタマイズするためのスクリプト,あるいは知識ベースとして保存されるので,IT 担当者ないし開発者は,簡単なシェルコマンドを使ったデプロイ操作でアプリケーションサービス全体を簡単にデプロイできます。
さらにユニバーサルサービスマネージャによって,クライアントの任意の監視および管理 API へのフレームワークのプラグインが可能です。サービスの管理に必要な数値情報は,このプラグインを通じて公開されます。この機能は Shell,JMX,SNMP などの標準による汎用的な機構の設定によって実現されています。以下の図は,その動作について示したものです。
GigaSpace の創業者で CTO の Nati Shalom 氏は,ユニバーサル・サービス・マネージャ (Universal Service Manager / USM) による Cassandra の デプロイ,スケール,モニタについて解説した プレゼンテーションを同社ブログに 発表している。
InfoQ: 適応性はポリシ駆動によるものでしょうか。また基本的な構成要素(knobs and dials)の中で,特に注目すべきものはありますか?
スケールアウトとスケールダウンのルールがそうでしょうね。CPU 使用率やトランザクションスループット,メモリ使用量,Web 要求レイテンシなど,さまざまなパフォーマンス指標に基づいています。API は完全にオープンなので,独自のスケーリングポリシを実装することも可能です。追加したいと思っていることのひとつは,ルールベースエンジン的なものを使用して,ユーザがスケーリングルールをもっと簡単に,コーディングをすることなく定義可能にすることです。
InfoQ: DevOps コンポーネントが管理対象とするのは,アプリケーションのどのフェーズなのでしょう?
いろいろなフェーズがありますが,簡単に言うと,ミドルウェアサービスとアプリケーションライフサイクルが対象です。つまり,
- ミドルウェアサービスに対して:マシンインスタンス (VM その他) の起動と停止,クラスタ全体へのミドルウェアのインストールとアンインストール,インスタンスの再配置,スケールアウト,必要ならばモニタ機能。
- アプリケーションに対して:デプロイとアンデプロイ,スケールアウトとスケールイン,インスタンスの再配置。
InfoQ: 他の主要 PaaS あるいは SaaS 対応サービスに比較した時,技術面での差別化要因として何が挙げられますか。
- オープン性
PaaS シナリオでは任意のミドルウェアサービスをサポートします。アーキテクチャを変更する必要はありません。
また SaaS シナリオでは複数のフレームワークとAPIをサポートします。基本的には,任意のクラウド技術上で任意の組み合わせのアプリケーションミドルウェアが実行可能です。またプライベート,パブリック,およびハイブリッドの各クラウドソリューション上で,実装変更を必要としない透過的なクラウド可搬性を提供します。
- 単一のコントロールポイント
アプリケーションからインフラストラクチャリソースまで,すべてのアプリケーションのデプロイとミドルウェアサービスが対象です。他の OSS プラットフォームとの統合ポイントも提供します。
- ユニークなハイパフォーマンス
SaaS シナリオに特化したスケーラブルなアプリケーションプラットフォームによって,ダウンタイムなしで機能変更が可能な,スキーマフリーのデータモデルを用いた継続的デプロイを実現しています。さらに内蔵されたリアルタイムバックアップと自己修復の機能により,高信頼性と高可用性も保証します。
- マルチテナンシ
デプロイ/サービスレベルとデータレベルの両方において,web からカスタマあるいはデータオブジェクトのレベルまで,クロススタック・ファイングレイン・マルチテナンシポリシが組み込みで提供されます。
そしてもちろん,サイロフリー・アプローチです。ビジネスの俊敏性と効率性に対する真のソリューションを,DevOps フレームワークが提供します。