IBM は昨年9月に出荷を開始した同社 zEnterprise 196 メインフレームの新しいインストラクションを活用するため,System Z メインフレームライン用の Java 仮想マシンとソフトウェア開発キットをアップデートした。
発表資料で IBM は,Java SDK 6 互換性テスト準拠を維持しつつ,JDK と IBM Just-In-Time (JIT) コンパイラの完全なリエンジニアリングを実施した,と述べている。
同社 J9 仮想マシンのバージョン 2.6 をベースとするこのメインフレーム JVM は,クリプトグラフィック・コプロセッサによる AES セキュアキーのサポートなど,メインフレーム独自の Java アプリケーションのセキュリティ機能を備えている。さらに今回の JDK アップデートでは,JZOS バッチツールキットも更新されていて,メインフレームエンジンに対する Java アプリケーションのバッチモードでの投入が可能となった。
提供される JDK には2種類ある。System/370-XA モードで動作し,旧形式のアプリケーションをサポートする 31-bit バージョンと,System z モードで動作する 64-bit バージョンである。どちらの利用にも v1.10 以降の z/OS が必要だ。また JDK は zEnterprise 196 マシン以外に System z10 のエンタープライズクラス (Enterprise Class / EC) ハイエンドや,ビジネスクラス (Business Class / BC) ミッドレンジのメインフレームでも動作する。z9 EC あるいは BC メインフレーム,z800 や z890 などのミッドレンジボックス,z900 や z990 などのハイエンドマシンといった,現在は販売されていない旧型のマシンの多くがサポート対象となる。
zEnterprise 196 メインフレームのベースとなっている z196 マイクロプロセッサは 5.2 GHz クアッドコア,アウト・オブ・オーダ実行をサポートする CISC ベースのプロセッサだ。マシンには最大 24 プロセッサを実装可能でコア数は 96,その上で 80 のオペレーティングシステムを実行することができる。また,最大で 3TB の RAIM (Redundant Array of Independent Memory) が搭載可能である。
Java アプリケーションの大部分が x86 ベースのシステム上で稼働している事実の一方で,銀行や保険,あるいは製造業などの大規模システムでは,現在でもメインフレームが数多く利用されている。IBM は新機種の販売額を直接的には公表していないが,同社の第4四半期の実績 から判断すると好調だったようだ。新機種が出荷開始されたこの四半期の同社利益は 7% 増の 290 億ドル,純利益は 9% 増の 53 億ドルに達し,System Z メインフレームの収益は 69% アップしている。