Oracleは、分散型インメモリ・データグリッドである Coherence のバージョン3.7をリリースした。新製品は Elastic Dataと呼ばれるフィーチャを導入した。 Coherence製品の開発副社長である Cameron Purdy氏によると、ストレージ媒体にも関わらず、データへのアクセス速度をメモリー並にできる。
基本的にメモリーとフラッシュでパフォーマン上の差がないのです。R&Dのお蔭で、フラッシュ デバイスとJava NIO機能の周りを改善しました。なので我々は、ソリッドステート ストレージデバイスを非常に高速で動かすことができます。バージョン3.7で行ったガベージコレクション(GC)の最適化とフラッシュへの透過的なオーバーフロー能力の両方により、大きなGCの遅延無しに、相当に大きなヒープサイズを扱えます。同時にヒープに合わないものは、何でも自動的にフラッシュに保存されます。我々が管理できる情報量が極めて劇的に増えたわけです。
設定も至って簡単だ。JVMに増減するデータにどのくらいのメモリとどのソリッドステート ストレージデバイスを割り当てるかを言えば、後は自動的にやってくれる。
製品を単純化するという、このテーマは他でも見られる。今回から設定は、XSDベースなので、Oracle自身のCoherence用 Eclipseベースツール のようなツールは、クラスタやキャッシュを完全に自動的に設定できるようになる。
他に注目されている領域は、 Coherence*Extend クライアント/サーバー プロトコルである。Extendによって、様々なアプリケーション、例えばExcelスプレッドシート、C#アプリケーション、あるいはC++コードがクラスタに繋がるようになる。これらは、商取引や銀行取引システムで普通に使われており、セキュリティと低遅延の要求が強いシステムである。3.7では、負荷バランス機能が改善されており、設定が簡単で、ハードウェア ベースのSSL高速化をサポートしている。Purdy氏が言うには、
我々は、WKA (Well Known Address)サポートを追加しました。そのおかげで、クライアント側は、非常に簡単な設定になります。WKAの1つを介して、クライアントはアタッチし、次に、そこから負荷バランスします。そのために、クライアントは、素早く潜在のサーバー全てを発見して、それらを跨いで負荷バランスできます。負荷バランスは、クライアント側かサーバー側のいずれかで実現できます。
ソフトウェア ベースの負荷バランスを別にして、Oracle Coherenceチームは、ハードウェア負荷バランサーである F5 BIG-IP Local Traffic Manager (LTM)との統合を行った。この統合は、ハードウェアSSL高速化をサポートしているので、 Coherenceはサーバー側でSSL高速化を実現できるようになった。Intel CPUを介して、高度な命令を使える利点がある。例えば、CPU集中型のSSL暗号化をハードウェア負荷バランサーに振り分けることができる。
最後に、Coherenceチームは、GlassFishの統合にも取り組んでいる。3.7リリースは Coherence*Web のネイティブな統合を行なった。これは、GlassFishのSPIを介して、クラスタ環境でセッション状態の管理する、専用のHTTPセッション管理モジュールである。これによって、GlassFishアプリケーション サーバー上に、Coherence*Webを「コード変更なし」でインストールと設定ができる。このため、サポートに関しては、GlassFishはWebLogicと同格である。
元々のCoherenceは、Tangosolによって開発されたが2007年4月にOracleによって買収された。その頃Coherenceには120程の直接顧客があった。買収以来、Coherence製品のインストール数はかなり伸びて、今では1000のオーダーになっている、とPurdy氏は語った。従来のようにCoherenceは金融サービス会社に使われているが、Oracleは他の業界に配置することを始めている。例えば、eコマース、電気通信、ロジスティックスなどの会社やRiot Games (QConでのプレゼンテーション) や LucasArtsなどのゲーム会社の大手にである。