Veracity は Windows，Mac，Linux にインストール可能な，分散データベースをリポジトリとして使用する DVCS である。
Veracity は比較的新しい分散バージョン管理システム (Distributed Version Control System / DVCS) である。1年以上前からテストが続けられてきたが，今回のバージョン 0.9.1 が "利用可能 (ready to use)" として一般公開されることになった。Git や Mercurial などと共通する点は多いが，違う部分もいくつかある。我々は Veracity を開発した SourceGear の創設者である Eric Sink 氏に話を聞いた。氏によると，この DVCS は分散データベース (Decentralized Database) をサポートしているという。
Veracity のユニークな点は，その "分散データベース" にあります。ほとんどのバージョン管理ツールはディレクトリやファイルなど，ファイルシステム指向のデータ管理を行うように設計されています。Veracity でも同じようなことは可能ですが，レコードやフィールドなどといったデータベース指向のデータ管理も行うことができるのです。
ファイルシステムのデータの場合と同じように，Veracity の分散データベースはデータベースのすべての履歴を保持します。すべてのレコードのすべてのバージョンが，誰がいつ更新を行ったか，というログ情報とともに履歴に残ります。さらに自動マージ (レコードおよびフィールドのレベルで) や制約違反の解決機能といった，" データベース・チェンジセット" のプッシュおよびプルもサポートします。
このような機能によって，このデータベースは "分散" が可能となっているのです。
ユーザは Veracity のレポジトリとして，さまざまなデータベースを選択することができる。氏の説明によれば，
Veracity は API を通じてレポジトリインスタンスの操作を行います。データ保存に関する詳細は，この API によって隠蔽されます。これは Veracity のユーザが，データを保存する方法を選択可能にするためのものです。現在のバージョンでは，このような "レポジトリストレージ・プラグイン" として FS3 と呼ばれるものだけがサポートされています。このインプリメンテーションでは，ブロブデータはファイルに保存されて (各データファイルのブロブの大きさは 1GB まで)，SQLite を使ってその格納場所を追跡しています。
エンタープライズ SQL データベースにすべてのデータを保存するようなストレージレイヤのプロトタイプもあります。この種のものは今後，SourceGear を通じて公開される予定です。その内のいくつかはオープンソースではなく，プロプライエタリな製品になるかも知れません。
Veracity はレポジトリインスタンス間の複製，プッシュ，プルをサポートします。インスタンスの実装されているストレージレイヤが異なっていても，このような操作が可能です。ですから例えば，Veracity チームがレポジトリインスタンスを Oracle に格納する (そのための実装が完成した時には，ですが) 中央サーバを運用して，開発者のデスクトップでは FS3 を使用する，というような設定も可能でしょう。
Veracity は C と JavaScript で記述され，CMake を使用して構築された。Windows ，Mac，Linux 用のバイナリが用意されている。 ソースコードは Apache 2 ライセンスの下でオープンソース公開されている。クライアントインターフェースがどのようなものか知りたい向きには，公開レポジトリが用意されている。
Visual Studio や Eclipse との統合，高速インポート／エクスポート，サブモジュール，Wiki など，行うべきことはまだ多い。しかし Sink 氏によれば Veracity のコードは十分に安定していて，現在のレポジトリは将来的に互換性が保たれる予定である，ということだ。今週実施される OSCON 2011 の期間中には，バージョン 1.0 のリリースが予定されている。
参考までに，SourceGear では Vault という，Microsoft SourceSafe の代替として設計された Windows 用バージョン管理システムを開発している。