BT

最新技術を追い求めるデベロッパのための情報コミュニティ

寄稿

Topics

地域を選ぶ

InfoQ ホームページ ニュース ベクトルの集合としてのエンタープライズアーキテクチャ

ベクトルの集合としてのエンタープライズアーキテクチャ

原文(投稿日:2011/07/13)へのリンク

Tom Graves氏とRobert Phipps氏がエンタープライズアーキテクチャ(EA)をベクトルに例えることを提案している。企業を要素の塊として見るのではなくベクトルの合成物として見るのだ。この方法は、本質的には静的な状態ではなく様々な変化のベクトルの複雑な相互作用の結果であるエンタープライズアーキテクチャの動的な様相を明らかにする。

Tom Graves氏は自身のブログの"ベクトルとしてのエンタープライズアーキテクチャ"という記事で波動と粒子の二重性とエンタープライズアーキテクチャの間にある興味深い類似について書いている。

私が面白いと思ったのは、この類似について考えることで‘現在の状態’と未だに存在しない‘未来の状態’の対立というようなことについて議論の不幸な罠からエンタープライズアーキテクチャについての議論を救うことができるかもしれないと思ったからです。昔からある物理学の粒子と波動を使ったメタファをエンタープライズアーキテクチャに適用します。いつも‘コンポーネント’や‘ビルディングブロック’と呼ばれているものは粒子です。なので、簡単に‘状態’についての言葉に戻せます。しかし、同じ量子のような要素を粒子ではなく波動として捉えると、すべては‘状態’ではなくベクトルを持つ、すなわち、変化の軌道と方向、速度、質量や慣性をもつように見えます。プロジェクトは組織を‘現在の状態’から‘未来の状態’に変えるのではなく、特定の方向へ特定の速度で向かうベクトルを提供するのです。このベクトルは未来の任意の時点の‘状態’を暗示するかもしれませんが、その一瞬のスナップショットは実際に起きている動的な様相を無視します。しかし、ベクトルは相互に衝突します。単一のベクトルが‘未来の状態’を示しているとしても、すべてのベクトルの相互作用全体はどこか別の方向へ向かっています。

Stuart Boardman氏は波動を使ってEAへのアプローチを確立する方法の重要な特徴について説明している。

量子力学的な側面にもっと話しを広げて、(対象の)アーキテクチャを確率的な状態として議論することができます。“to-be”のアーキテクチャの価値はまず第一に一歩一歩進んでいくことで実現されることの利益を理解しやすくすることです。しかし、世界は誰もが知っている通り、そこへたどり着く前に世界は変わってしまいます。なので、良い目標は変化と不確実さを許容します。そして、優れた一時的状態では変化のサイクルの中のひとつの時間枠の中で明確な価値を提供する必要があります。

Robert Phipps氏はこの件についてさらに詳しくブログに書く予定だが、ツイッター上にこの類推が単なるメタファを越えた広がりを持つように考えているのが分かるつぶやきを残している。

@pbmobi @leodesousa @nickmalik ベクトルはある指標を表現する、直交する次元で作られた空間に定義されます。
@pbmobi @leodesousa @nickmalik 基本的な理論はペーテル・ヤーデンフォシュ氏の著書の'the geometry of thought'に紹介されている概念空間ですが、次元はEAから取ってきています。
@pbmobi @leodesousa @nickmalik ヤーデンフォシュ氏は嵌め込みの次元の概念空間を示してくれました。これにはシステムの状態とベクトルが両方とも定義されています。
@pbmobi @leodesousa @nickmalik 組織とエンタープライズアーキテクチャの特性を次元として利用してヤーデンフォシュ氏の言うような空間を構築します。

概念空間とは、広い意味では、幾何学的な構造と複数の質の次元を使って概念を表現しようとする試みだ。認知科学から生まれたこの方法は人工的システムの開発にも利用されている。認知的な課題を解決するためだ。

Richard Veryard氏はこの比喩を使った比較を認め、動的な側面を表現することの必要性について考察している。

EAに必要なのは、様々な変化の中での複雑な相互作用について理解することです。企業は普通、たくさんの変化で満ちあふれています。その中には"プロジェクト"として公式になっているものもあります。そしてこのようなプロジェクトでは、企業の現在の状態(AS-IS)に対する単純化しすぎた、間違った考えと楽観的すぎる未来の状態(TO-BE)に基づいて動きます。
ベクトルを比喩に使った場合、これらのプロジェクトや他の変化の動きの相互作用は予測できません。相殺されて、企業システムとして変えられない本質的な特徴だけが残る場合もあります(複雑なシステムが変化を前にしてその成立根拠と深層構造を保存しようとする能力については多くのシステム理論家によって研究されてきました)

David Sprott氏はこの議論を認めてCBDI-SAEは継続的進化という概念を通してこの考えを反映していると付け加えた。氏は様々な企業の近代化の努力と、直線的な状態変化ではなく、多元的な活動としてこの近代化を捉える必要に着目している。

さらに進んで、As-Isのビジネスを、(yes OK)というベクトルが集まった、成熟した状態の流れを計画し生み出すための全体的な多次元活動として捉えます。そうするとベクトルには下記が含まれているでしょう。
- アーキテクチャ: ビジネス、サービス、情報、ソーシャルネットワーク、実装、技術、配置
- ポートフォリオ: 段階的なコンポーネント化と状態遷移のエンジニアリング
- サービスアーキテクチャ: ビジネスに基づいた段階的なサービスの提供
- クラウド: 段階的な切り離し
- 標準化と差別化: 合理的でビジネスに必要な戦略的な差別化が意図されている一般的なサービスの導入。もちろん、両方ともクラウドが鍵になる
- 組織: IT部門の所有権をビジネス活動の中核に移譲する
- プロセス: 継続的進化
- その他たくさん。CBDI-SAEの実践者に注目。

この類推が抽象的で変化の中で情報が失われてしまうと考える評論家もいる。

抽象的過ぎると思います。企業はベクトルや粒子ではなく人の集まりです
この類推はとても便利ですが、アイディアや知識を伝達するには使えません。ふたつの領域の似ている部分はとても限られていますし、私たちが物理の専門家ではないからです(そうでないなら類推する必要はありません。話は‘明らか’だからです)。私たちの理解は常に限界があります。人から人へ伝わるときに、伝達内容は変化してしまうでしょう。

あなたはEAにベクトルのメタファをつかう方法をどう考えるだろうか。

この記事に星をつける

おすすめ度
スタイル

BT