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モバイル Web の動向

原文(投稿日:2011/08/22)へのリンク

先週はモバイルのエコシステムに関する重要な変化がたくさんあった。第1は Google による Motorola Mobility の買収で,Android の開発が今後もオープンな手法で続けられるのか,という点に疑問を持たせる出来事だった。その次は週末,HP が TouchPad の扱いを終了 したことだ。これはモバイルデバイスにどう影響するのだろう?

Google による Motorola 買収は,ハードウェア製造能力よりも,特許面での防御としての意味が大きいようだ。かつてモバイルと通信業界のグローバルリーダであった Motorola は,革新的な製品 (RAZR のような) をいくつも開発してきた。重要な契約 (ROKR の iTunes 同期機能のような) をいくつも主導した時期もあった。しかし RAZR の製品ライン – 当初はトップエンドの携帯電話として設計され,後に大量生産品に方針を変更した – が,Motorola の設計部門の生み出した最後のイノベーションとなったのだ。

2000年代半ばに起きた大きな問題のひとつは,Symbian オペレーティングシステムに移行したことによる苦難だった。かつては Sony Ericsson の P800 や P900 レベルなどハイエンド機種の代表格であった Symbian だが,Nokia と Sony,さらには Motorola との間に生じた継続的な機種差別化(特に UIQ に関して)は,それが解決する以上に数多くの問題を生み出した。最終的に Motorola は,iPhone の発売後間もなく 3,000 人の人員削減とともに Symbian を捨て,Android オペレーティングシステムに集中することになる。 それでもマーケットシェアを取り戻すことはできず,今回と同じように ハンドセット部門の売却 が検討された – 最終的に Google によって買収される3年前のことだ。

HP が TouchPad で演じた失態は,それが 不評のレビュー を受けた時に始まる。HP がモバイルセグメントへの参入を目指して Palm を買収した時,元 Newton のデザイナによって生み出され,一時は名を馳せたこのブランドの復活を,多くの人々が期待した。そのために HTML5 や JavaScript など標準技術をベースとした WebOS プラットフォームが開発された。HP は WebOS を積極的に売り込み,つい先週の火曜日までは,家庭向け組込デバイスへのシステムの 採用を他のメーカに働きかけていた のだ。

先週半ばまでにわずか 25,000 台を販売した後,Best Buy にはまだストックの 90% が残り,倉庫で貴重なスペースを占め続けていた。高まる批判と現実を反映した販売予測修正の中,HP はデバイスのディスカウトを開始した – 最初は50ドル,次に100ドル。それでも Engadget を始めとする レビューの評価は概して厳しく,特に(他にもあるが) プラットフォーム向けアプリケーションの少なさが指摘された。

HP はその数日後,最終的に Touchpad のサポートおよび販売の終了を発表して手を引いた。WebOS が実働する唯一のデバイスがなくなったため,そこで動作するアプリケーションを開発する機会も同時に崩壊した。このシステムをライセンスする相手を見つけられるかどうかには,大いに議論の余地がある。実行可能なデバイスが存在せず,アプリケーション開発手段のないような状況では,今後数年間は HP の最大の過ちのひとつであり続けるに違いない。もっとも 100 ドル大特価セール で古いストックを処分すれば,今やコレクション対象となった製品でも入荷する端から売れてなくなるだろう。

モバイル企業の買収は危険と背中合わせだ。革新的技術を持った小企業は巨大企業に買収されるや否や,その敏捷性と文化を(時には主要な開発者も)失ってしまう。Microsoft はかつて Danger の Sidekick を買収した。Sidekick はかってはモバイルの世界で愛されていたが,クライアントデータを損失する 失敗をした結果,今ではまったく忘れ去られてしまっている。Bluetooth を搭載した Color Organizer は Psion が市場に持ち込んだようなものだが,1990 年代に栄光を築いたのは Palm だった。HP は Palm (と Compaq) を買収したが,今はどちらもハードウェア事業が残るのみだ。かっては Symbian の理想の父親像であった Nokia は,ひどい継父像になり果ててしまった挙句,現在では Windows Mobile に賭けるありさまだ。

過去10年間にモバイルに参入した企業で,成功を収めたのはわずか2つだ。そのひとつが Google と Android オペレーティングシステムである – Google はハードウェア製造手段を持っていなかったので,他の参加者に対して中立でいることが可能だった。もうひとつは Apple と,タッチスクリーンインターフェースで革命を起こした iPhone である。同社は最初 iPhone それ自体で,次には iPad で成功を収めた。しかし Google のポジションは中立性をベースとしていたにも関わらず,Motorola の買収によって,実際にはそうではなくても,2社の関係に対する印象を変える恐れがある。

RIM はどうだろう? BlackBerry は企業ではいまだベストセラーを続けている上,先日発売した PlayBook には多くの称賛が寄せられている。しかし,まだまだ長い道のりがある。QNX のような強力な組込オペレーティングシステムの買収(と採用)が成功を保証するものでないことは,Symbian のライセンシが知るところだ。しかしそれは,現時点では Android-iOS エコシステムの派生物に過ぎず,将来的に HP と同じ瞬間を迎える可能性もある。

確実なことがひとつある。デバイスの断片化が少なくなったことで,モバイル開発が容易になった,という点だ。その上,これらデバイスのすべてが HTML5 と WebKit フレームワークをサポートしているため,ポータブルな Web ベースアプリの開発はそれにも増して簡単なものになっている。

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