HP と Dell の両社が IaaS クラウドサービスビジネスに参入する。ともに自社製サーバを使用して，OpenStack(HP) あるいは vCloud(Dell) 上に独自のインフラを構築する。Dell はさらに，Windows Azure と OpenStack をベースとするクラウドの提供についても発表している。
HP は今年７月，OpenStack プラットフォームをサポートして，１年前の OpenStack イニシアティブ創設時に参加した約 100 社の企業 – Citrix， Dell， RightScale， AMD， Intel， Rackspace など – に加わることを発表した。同社は "OpenStack コミュニティにおいて積極的な役割を果たす" と発表している。"HP は今回の参加を，ユーザとパートナ，開発者を対象とした，パブリック・プライベート・ハイブリッドの各クラウド環境におよぶユニークなインフラと開発ソリューションを実現するための機会ととらえています。" すでに OpenStack の Launchpad や IRC チャネルには，数人の HP 技術者が参加している。
OpenStack に参加したのはまだ１月ほど前のことだが，HP は７月よりもかなり前から OpenStack ベースのクラウド製品に取り組んでいて，９月７日には Cloud Compute や Cloud Object を含む HP Cloud Services を発表している。同社はすでに，米国政府や企業を対象に計算，ストレージ，ネットワークなどのリソースを提供する Enterprise Cloude Service や，パブリック・プライベート・ハイブリッドの各クラウドを管理するプラットフォームである HP CloudSystem などの製品を持っている。しかし３月14日の HP Summit 2011 で発表された新しい HP Cloud Service では，クラウドサービスの課金方法としてはデファクトである，従量制ベースでの計算およびストレージ提供を採用する。
HP Cloud Service は現在ベータ版で，提供対象は登録されたユーザに限定されている。また利用可能な計算リソースにも，最大で10インスタンスという制限がある。ストレージリソースには制限が設定されていないが，実用目的に使用しないように警告されている。製品版の提供開始時期については発表されていない。各サービスを提供するデータセンタ構築には HP のサーバが使用されている。
数日前に Dell と VMware は，Dell としては初となるクラウド構築に関するパートナーシップについての共同 発表を行った。このクラウドは Windows Azure を始めとする他データセンタでも使用されている PowerEdge C シリーズを使用して，パブリック・プライベート・ハイブリッドの各クラウドに必要なコンサルティング，アプリケーション，インフラサービスの可用性を提供する VMware vCloud Datacenter Service を基盤とするものだ。Dell は自社あるいはユーザのデータセンタをベースに VMware vSphere と vCloud Director を使用して，プライベートあるいはハイブリッドクラウドを構築することを目標としている。
Dell Services の副社長兼 CTO である Mark Bilger 氏はさらに，同社のクラウドソリューションは VMware の vCloud に限定されたものではない，今後数カ月で Windows Azure や OpenStack をベースとする新たなソリューションへ展開する予定である，とも述べている。この発言は，Dell のストレージ戦略担当ディレクタである Carter George 氏が 以前に公表した，同社が IaaS と PaaS サービスをともに提供する予定である，という内容とも符合する。
Dell Cloud は今のところ，ごく限られたベータ版ユーザを対象に提供されている。しかし今月にはベータテスタ追加，年内にはテスタの公募をそれぞれ実施して，2012 年内の製品版サービス提供開始を予定している。