BigCommerce.com の共同創設者である Mitch Harper 氏は Sydney Morning Herald の最近号で,ソフトウェア技術者になるためには大学教育は間違った方法かも知れない,という主張をしている。学位を持たない独学のソフトウェア技術者である同氏は,大学が学生たちをソフトウェア技術者であることの現実についてほとんど何の心構えもできないままにしている,とした上で,そのように考える理由を次のように説明する。
(オーストラリアで) 新規創業する会社は,新たな業務に前向きに取り組むことのできる卒業学生を必要としています。PHP や Python,Ruby (その他の現代的なプログラム言語) に精通していて,望むものならば,大学で学ぶような論理的側面とは対照的な,ソフトウェアエンジニアリングの実践的側面を理解している人物が必要なのです。
オーストラリアの国内問題と思われる部分もあるが,他の国でも同じような議論が続けられている。例えば Dan North 氏のブログ記事 "プログラミングは工芸ではない (Programming is not a craft)" は,読者の間に激しい議論を引き起こしている。氏の意見によれば,プログラミングはプロフェッショナルと呼ぶのに相応しいものではない。ソフトウェア技術者になるためのハードルがあまりにも低すぎる,というのがその理由だ。
最近になって,何人かの起業家たちが Harper 氏の意見に反対する立場を取っている。Freelancer.com の CEO である Matt Barrie 氏は 11月14日,次のような記事を書いた。
金曜日の Sydney Morning Herald に掲載された Mitchell Harper 氏の意見記事 " ソフトウェア技術者になりたい? それなら大学へは行くな (Want to be a software engineer? Don't go to university )" を読んでぞっとしました。[...] 熱意に満ちた若い学生たちに対して,最近流行の言語が教えられてないという理由で大学へ行かないように勧めるのは,根本的に誤りではないものの,危険な考え方です。仕事を見つけることは簡単とは言えませんが,だからといってハイテクブームに乗って自身の会社を興したいと思うのであれば,それをバックアップしてくれる人を探すことがさらに桁違いに困難であることが分かるでしょう。
同じ記事で,mijura.com の共同設立者である Adam Brimo 氏は次のように説明している。
コードを書けるからといって,すべての人がソフトウェア技術者やコンピュータ科学者になる訳ではありません。彼らは大規模な金融システムや検索エンジンを設計したり,あるいは次世代の強力なプログラミング言語に貢献したいとは思っていないのです。1,000 ドル程度のちっぽけな Web サイトの構築はできても,次世代の Google は構築できませんし,将来の技術を創造することもありません。彼らはそれに取って代わられる側の存在なのです。
ソフトウェアエンジニアリングの学位に対する低い評価は Harper 氏の本意ではないのかも知れない。いずれにしても氏は興味深い議論を引き起こした。大学は学生に対して,本当に適切なソフトウェアエンジニアリングのスキルを提供しているだろうか? 理論的側面に偏りすぎているのではないか? あるいは,もしかするとこのコンテキストでは,大学教育を過小に評価し過ぎているのかも知れない。
この議論について,読者はどのように考えるだろう?