英国は財政削減に向けた政府ICT(情報通信技術)戦略の一環として、アジャイルプラクティスの導入に関心をもっている。英国政府はいくつかの取り組みでアジャイルプラクティスを利用することで、IT関連の実質的なコスト削減を検討している。
ICT戦略でカバーされるものの一つに以下がある。
各部門でパイロット“アジャイル”プロジェクトを特定し、政府機関と民間企業の長所を兼ね備えたバーチャルなセンターを作って、プロジェクトの早期立ち上げおよび動員を可能にする
内閣府国務大臣Francis Maude氏はこう語る。
これは単なる各部門のICTコスト削減および効率改善のための計画ではありません。戦略の効果的実行は第一線の公共サービスを急速に改善するプログラムですでに始まっています。たとえば、ユニバーサルクレジット・プログラムは最初の ‘Digital by Default’ サービスのひとつであり、アジャイルなアプローチを導入してリスク削減とビジネス改善に取り組んでいます。
国家債務の悪化に際して、ITコストを削減しようとしているのは英国政府だけではない。今やほとんどの西欧各国政府は形はどうあれ緊縮財政を求めている。高額な予算と予測できない納入を伴うITプロジェクトは、その実行にあたって、もっと効率的に効果的に進めるよう強いプレッシャーを感じている。
しかしながら、アジャイルへと向かう英国の動きにも批判がないわけではない。政府系ICT弁護士のAlistair Maughn氏は政府機関におけるアジャイルソフトウェア開発に異なる見解を示している。
「アジャイル開発手法はイテレーションを通してITプロジェクトを柔軟に実現するよう作られています。顧客をもっと直接的に参加させ、顧客要求の変化にすばやく適応できるよう作られているのです。つまり、最終システムは徐々にしかできてこないのです。顧客は完了したプロジェクトに固定費を支払うわけではないのです。顧客はリソースのコミットメントに費用を支払うのです。 」
彼はさらに踏み込んで、アジャイルプラクティスが政府系ITプロジェクトでうまくいかない4つの理由を挙げている。彼の言葉を言い換えると次のようになる。
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政府機関の顧客はシステムにどれだけのコストがかかるか事前に知りたがる。
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最悪の場合、アジャイルは不十分な改善手段しか提供できない。
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アジャイルな決定も中央政府のマネジメント階層を経ることは避けられない。これはアジャイルプロジェクトに対するクリプトナイト(訳注: スーパーマンの弱点である鉱石)のようなものである。
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アジャイルは事前に成果物の明確な仕様を提示できない。したがって調達の法的要件で比較選定できない。
Almost in reply, 英国初のアジャイル実験は、プロトタイプWebサイトとして2011年の5月に実現した。Alistair氏のコメントのすぐあとのことだ。それ以来、いくつかの成功事例によって、政府はアジャイルプラクティスをITプロジェクトにどのように利用できるかを示してきた。英国は2013年までにICTイニシアティブの50%にアジャイルプラクティスを利用することを望んでいる。