今年の AYE (Amplifying Your Effectiveness) カンファレンス はノースカロライナ州のケアリで開催された。Jerry Weinberg, Johanna Rothman, Esther Derby, Don Gray 各氏の主催するこのカンファレンスには,3日間の体験ワークショップの他,オプションとして参加者にカンファレンスのやり方に慣れてもらうと同時に,カンファレンスで取り上げる予定の重要な概念を紹介する1日のウォームアップ・チュートリアルがある。さらにカンファレンスの終了後には,参加者がこの3日間で学んだ内容を実際に活用できることを目的とした,2日間の追加セッションも用意されていた。
Web サイト での紹介によれば,AYE カンファレンスには次のような特徴がある。
AYE カンファレンスの特徴のひとつは,そのセッションのデザインです。多くのカンファレンスでは1~2人の発表者が前に立って,聴衆で一杯になった椅子の列に向き合う,というのが基本的な形式です。チュートリアルや丸1日のワークショップであっても,このスタイルは変わりません。しかしこのカンファレンスでは,シミュレーションと体験に重点を置くことで,テーマをより深く理解できるようになっているのです。
ウォームアップ・チュートリアルでは MBTI (Myers-Briggs Type Indicator) 評価 が取り上げられ,参加者はそれぞれ MBTI の示す類型とその意味,コミュニケーション方法などについて学ぶことができた。
チュートリアルでは他に The Satir Interaction Model (対話モデル) や The Satir Change Model (変化モデル),さらに Congruence (内的一致) (これも Satir の提唱による) などのトピックが紹介された。特に The Satir Change Model については,カンファレンスの中でも頻繁に取り上げられていた。
セッションのひとつを紹介しよう。
Organizational Mapping(組織マッピング): Jerry Weinberg
Organizational Mapping は Virginia Satir 氏の Family System Sculpting アプローチをベースとした,"組織をより広く深く理解するためのツール" である。
このセッションでは,参加者はまず最初に組織を選択して,その組織に関して調査してみたい課題を決定する。
次に任意のシンボルや色を使って,白紙の上に自分なりの説明を自由に描写する。
それが完了したなら,次には名前や別名を使ってマップに他の人たちを自由に追加する。色やマップ上の位置を使って相互関係を表現したり,お互いの関係の内容を示してもよい。
物理的なアイテムをマップに加えても構わない。
次のステップでは,個々の人物についての3つの方法 (少なくともひとつは肯定的,ひとつは否定的に) での説明を考える。
それが終わった参加者は,その組織で "空中に漂っていそうな" フレーズや,任意の組織ルールを追加する。
組織全般を十分に表現したビューが完成したなら,その全体を見渡して,痛みや喜び,問題,計画,パフォーマンス,パワーなどといったものの色付けやシンボル化を行う。
最後はマップに映画のようなタイトルを付けて完成である。
おそらくは,そしてこれが重要なのだが,参加者は他のメンバと完成したマップを共有することになる – すなわち説明したり,質問に答えたり,さらには議論の結果に従ってマップの修正を行うのである。
次の図はそのようなマップの一例だ。
Jerry は参加者に対して,Organizational Mapping を実践する上での注意点を付け加えている。
特に組織の内部で使用する場合には,Organizational Mapping が強い洞察性と感情的反応を引き起こすことがあります。ですからコンサルタントあるいは組織には,どんな問題が "持ち上がっても" 大丈夫,と言えるだけの心構えと対策が必要です。この警告を無視すれば組織を損なったり,コンサルティング上の信頼を失うことにもなりかねません。
これ以外のセッションも同じように,強い感動を覚えるものだった。Johanna Rothman 氏のセッション "Adapting to Change in Your Life (人生の転機への適応)" は,目まいの診断に関する氏の個人的経験を単に扱っただけでなく,多数の参加者それぞれの課題をも明らかにするものだった。
さらにはカップルのコミュニケーションに関する BoF (Birds of a Feather) セッションの実施を求める声もあった。カップルのコミュニケーションは時に感動的で,時に奇妙で,そして愛おしくもあるものだ。
Jason Little 氏もまた,BoF セッションについて 記事を書いている。氏が取り上げたのは,MBTI や気質といったものを Schneider Culture Model にマップする方法に関するセッションだ。
氏は次のように書いている。
そこで説明されたことは,私のセオリーそのものでした。変化の主役であるあなたが組織やチームの文化 (組織にはさらにチーム,部署,交流サークルごとのサブカルチャがあります),スポンサーや組織参加者たちの MBTI の選択について理解しているのなら,より確率の高い成功を得るために,アジャイルの適用あるいは移行という結論を得ることも可能でしょう。
Michael Mahlberg 氏は BoF セッションについて,次のように語っている。
AYE で意義深く有益なのは,何もメイントラックのカンファレンスだけではありません。BOF 自体,ちょっとしたチュートリアルなのです – その範囲も,毎日の生活に適用可能なテクニックの習得 (CTA (Cognitive Task Analysis/認知タスク分析), @cjunekim による) から始まって,その時々の主体性を追求し続ける行動様式改善 (@toddcharron による) のような話題にも踏み込んで,これまで時間がなくてできなかった文書の書き方クラス (Leo Hepis 氏による) というような内容にまで至る,実に幅広いものなのです。
以前にもカンファレンスに参加したことのある氏は,その経験からセッションについて次のようにも言っている。
数年前に受けたことのあるセッションでさえ,実施するグループが違えば違ったことを学ぶことができる,というのは実に魅力的です。他のカンファレンスとは違う,というモットーに忠実なセッションは,まさにカンファレンスの参加者によって作り出されるもので – カンファレンスのセッションはこうあるべきだと私は思います – 学習環境の構築と体験の促進に努めるホストの協力とともに,新たな分野に対しても開かれたものになっています。
Yves Hanoulle 氏も同様の意見だ。
ここ数年間に参加したカンファレンスで,すべてのセッションブロックに出席したのは今回が初めてです。
Tobias Fors 氏は,カンファレンスで得た重要なものとして,
私が AYE に参加する度に得ているのは,歓迎されているという感覚です。そして,新たな友情関係も!
Jason がさらに,
私にとっての最も大きな収穫は,人を正すのではなく,人が問題を解決する手助けをする方法を学べたことです。
Michael は,人間関係においても得たものがあったという。
私にとって今回が4回目の AYE なのですが,ここだけでダンバー数 (人間関係の規模を表す限界数) に達するのは確実です。それでも毎年,AYE では興味深くずっと付き合っていきたい – それも,これまで経験した以上に頻繁に – と思える人たちがますます増えています。
今年の AYE カンファレンスは,その参加者すべてに対して何かを提供した。スケジュールに掲載されたセッション,即興の Birds of a Feather セッション,さらには参加者の間で交わされた会話でさえも,そのすべてがいろいろな方法で,参加者全員にそれまで経験したことのないほど豊かな感情を与えたのだ。