12月13日付の最新 プレスリリース によると SAP は,Boston で開催された SAP Influencer Summit において "複数の大手ソフトウェアベンダがオープン SAP HANA プラットフォームを既存製品に採用して,まったく新しいアプリケーションを構築中である" ことを発表した。その中には T-Mobile や TIBCO などの企業が含まれている。インメモリテクノロジ HANA が発表されたのは 2010 年のことだ。SAP によれば,DBMS 技術はそのプラットフォームロードマップの中核にあると同時に,同社のクラウドおよびモバイル戦略をサポートすることになる。
HANA はリアルタイム分析アプリケーションを用途とするプラットフォームだ。パフォーマンス最適化のため,HANA は大量のオペレーションおよびトランザクションデータを任意のデータソースからメモリ上に読み込む – これらすべてがリアルタイムで実行されるのだ。このような機能を活用できるアプリケーションクラスのひとつとして,Smart Grid アプリケーションがある。例えばスマートメータの大量な情報を解析することで,消費量をより正確に予測し,コストを削減することが可能になる。SAP の広告によれば,システムの設定方法によっては,データ解析を 3,600 倍まで高速化できるという。
考慮しなければいけないのは,HANA がまだ開発途中であるということだ。HANA の主要な構成要素は,Business ByDesign Software Development Kit,Java ベースだが言語非依存のサービスを提供する the River application Platform as a Service,分析アプライアンスなどである。
Gartner Research の技術レポートによれば,
HANA のアーキテクチャは現在開発中であり,完成までにいくつかの重大な変更が行われる可能性があります。これは SAP ユーザに対して,新世代技術への移行と統合に伴う潜在的な問題の所在を示すものです。
SAP のビジョンによってメガベンダである競合他社は,自らのクラウドおよびインメモリコンピューティング戦略の明確かつオープンな回答を迫られることになります。
技術的困難への対応,市場開拓という問題への対処に加えて,SAP は同社の顧客基盤の最も保守的な部分にも受け入れられる方法で,この高度に革新的なビジョンを導入しなければなりません。
一部の批評家が疑問としているように,大量のデータをメモリに保持するという戦略については,現実に機能するのかどうか見極めが必要だ。結果的にプレスリリースでは,成功事例を紹介することでこれらの疑問を解決しようとしている。例えば,米国 T-Mobile エンタープライズ情報技術担当副社長である Jeff Wiggin 氏の発言として,
ユーザのニーズにリアルタイムで対応できることは,私たちに信じがたいほどの競争上の優位性を与えてくれると同時に,カスタマエクスペリエンスの質を向上させるものであると認識しています。そのようなエクスペリエンスを提供するためには,セールスとマーケティング活動を基礎として支えるプラットフォームが必要でした。ユーザの気持ちを理解し,それに基づいて週単位ではなく,分単位で行動することを可能にするものです。SAP HANA はまさにそれを提供してくれました。
T-Mobile は HANA を使用して20億のユーザレコードを管理し,必要なレポートすべてを平均5秒のレスポンスで発行することに成功している。
さらに保守的なIT ベンダたちでさえ,現在は自らのクラウド戦略を推進しようとしていて,その速さには目を見張るものがある。
HANA の背景にある技術的トピックの詳細に興味のある読者は,SAP 創設者である Hasso Plattner,Alexander Zeier 両氏の 共著 "In-Memory Data Management" を読むとよいだろう。また Gartner も2ヶ月前,HANA に関する 技術レポート を発行している。