数年前、Mark Nottingham氏(当時はYahoo!に在籍)はHTTPの現状と(当時の)今後の取り組みについてプレゼンテーションしてくれた。それからWebは進化して、当初の想定以上にHTTPはさまざまな場面で使われるようになった。そしてMark氏もRackspaceに移った。HTML5とその先の進化やWebSocketの登場で、HTTPはさらに変化する必要がありそうだ。Webを動かすプロトコルの「次」が何かについて、最近Mark氏は自身のブログに記事を書いた。Mark氏はHTTPbisワーキンググループの議長であり、いくらか権威をもって語ることができる。まず第一に、HTTP/1.1をさらに明確にする取り組みは、ほぼ完了している。
みんなRFC2616をどうにか解釈しようとしてきました。RFC2616は彼らが考えた深い真実を注意深く記載したというより、HTTPがどのように書かれているかを記述した中間生成物でした。私は仕様の解釈に関する質問にいろいろ答えてることに気づき、(他のみなさんと同様、)箱をもう一度開けて、もっと注意深く書き記す必要があると実感しました。その作業がもうすぐ完了します。Conditional Requests、Range Requests、Caching、Authenticationの各セクションはワーキンググループのラストコール(最終草案)となり、エディターらは近々残りのセクションも加える予定です。
Mark氏によると、このアップデートに対するフィードバックは順調に得られており、開発者はすでに恩恵を受けているようだ。
[...] キャッシュの実装者らは、パート6の書き直しはタスクを非常にシンプルにしてくれたと教えてくれました。また明確になったことで、他にもブラウザなどの実装に影響を与えています。
HTTP/1.1仕様に切望されていたアップデートの完了はもうすぐだ。エディターらは最後の書き直しに取り組んでいる。しかし、HTTP/1.1の先はどうだろうか? Mark氏も指摘するように、ワーキンググループはもともと新しい作業をするために設立されたわけではない。だが、この数年で世界は大きく変化した。HTTPも進化しなければならない。2009年に最初のSPDYがリリースされた直後、Mark氏はこう語った。
言い換えれば、(Googleは)HTTP/2.0の最終的な設計へのインプットとして、SPDYを位置付けているようです。
Mike Belshe氏(SPDYの考案者)がワーキンググループにSPDYを提案すると、多くの人の関心を呼びました。当初のデプロイメント環境を超えて、このプロトコルはJetty、Netty、Amazonなど、いろいろなところでサポートされた。HTTPにまつわる問題とそれがワーキンググループに及ぼすかもしれない影響について、数年前にMark氏自身は次のように書いている。
[...] 2年前にHTTPbisをスタートしたとき、新しいプロトコルの作成については強い反感がありました。それは複雑な問題を引き起こすため、そしてデプロイメントの問題があるためです。ところが最近、多くの人がTCP上のHTTPの制約に不平をもらしているのを耳にします。いずれにせよ、もうすぐその問題への取り組みをスタートすることになりそうです。
こうした情勢とSPDYサポートの広がりから、HTTP/2.0に向けた作業を取り込むよう、既存のグループのチャーター(趣意書)を変更するのは避けられないことだった。こうして最近のミーティングで、チャーターのアップデートに関する議論が始まった。しかし、これは単にSPDYを採用するのではなく、HTTP/2.0の作成につながる要件について議論し、グループがこの領域でWeb全体のために何をするかを確認することになる。Mark氏の言うように、グループには今後何か月も何年も取り組むことになる数多くの作業がある。
私たちは次のようなプレゼンテーションをしました。SPDYだけではなく、ほかにも3つのプロポーザル(提案)がありました。MicrosoftのS+M、中間実装のルーズな連携要件、そして、Roy Fielding氏によるWakaの概要です。
参加者の多くは先入観をもつことなく、既存のソリューションを変更なしに標準化プロセスへと押し込もうとせず、HTTP/2.0にアプローチしているようだ。したがって、HTTP/2.0が実際にどんなものになるのか、現段階ではまだわからない。確かに言えることは、Webのプロトコルに大きなアップデートがあるということ、そして、それは意外に早くなるかもしれないということだけだ。