アジャイルを採用すると、組織が機能するあり方が変わる。アジャイルの実践を取り入れるということは、より協力しあう環境を支援するということであり、自己組織化を行い、階層構造を壊すような組織のポリシーを支援することでもある。
まったく別々の組織に関する最近のふたつの投稿を見ると、物事がどのように変化したのかという例を知ることができる。
ERPベンダーであるSAPは最近カルフォルニアのパロアルトに新たに開発センターを開設した。その施設は徹底的にアジャイルのテクニックや実践を支援するように設計された。Computerworldの記事で、IDGのChris Kanaracus氏はこの新しい施設についてこう説明している。
SAPはクラウドベースのソフトウェアの中心企業になりたいと考え、その目的を達成するためにアジャイルソフトウェア開発の実践を取り入れてきました。
記事によれば、クラウドコンピューティングに参入するには、SAPのチームが今までとは異なる作業のやり方をする必要があるため、建物はアジャイル的な共同作業を支援するために設計されたのだという。
SAPによると、新しい建物の全ての家具にはキャスターが付いており、壁にはものを書くことができます。これにより、打ち合わせをしたり、チームで広いスペースを使う場合に素早く室内のものの配置を変えることができるのです。パーテーションや役員室はなく、全体的な設計は窓や自然光、それに全体的な「透明感」を際立たせています。とSAPは語った。
ベンダーによると、配置も、多様な従業員の個々のスタイルと習慣に適応するために考慮されています。例えば、内向的な人は望めばプライバシーを守ることができ、その一方で、誰かと共同で作業することを好む傾向の人もそれを実現することができます。
SAPの従業員からのフィードバックは良好で、こう言っている人もいる。
シリコンバレーで働いているような気分を感じたのはこれが初めてです。
アジャイルの実践によって働き方がどう変化したかを発表しているもうひとつの企業は、ゲーム開発会社のValve Softwareである。ブロガーのClinton Keith氏はValve Softwareの自己組織化の文化について最近の投稿でこのように考察している。
氏はValve Softwareがどのようにして、従業員向けハンドブックを自由にダウンロードさせるようにまでなったかを説明している。この組織が自己組織化のアプローチを仕事に取り入れたのかということを、このことがまさに体現しているからだ。Keith氏はValveについてこのように語っている。
凝り固まったプロセスや組織の階層構造がクリエイティブな開発には不適切であると見なされる場所です。
氏は従業員向けのハンドブックから以下を引用している。
組織の階層構造は予測可能性と再現性を維持するには非常に素晴らしいです。それらによって、計画が単純化され、トップダウン方式で大勢の人々を管理しやすくなります。軍隊のような組織が階層構造に強く頼っているのはそのためです。
しかし、あなたの会社がエンターテイメント企業で、この10年を最も知的で、革新的で、才能がある人々を採用するために尽力してきたのならば、そのような人々に机に座って言われたことをしろと命ずるのは、彼らの価値の99%を消し去るようなものです。我々は革新を起こす人を求めています。それはつまり、そのような人々が活躍できる環境を維持することが必要だということです。
氏は、この自己組織的な働き方のおかげで、Valveが理想的で得るものの大きい職場になっていると続ける。
Valveは、ほとんどの会社と比べても、最も高い定着率を誇っており、それでいて、従業員あたりの利益を見ると、GoogleやAppleでさえもを上回っているのです!
氏は組織に対して、階層的な構造から自己組織化へ変化するよう課題を提起している。最後にこう述べている。
我々の働き方に革命が起きています。それは普及するのに一世代の時間がかかるかもしれません。どのようにその革命を達成したらよいか、それによってどんな恩恵を受けられるかということを示す例が年々増えていっています。
アジャイルの実践は変化を推進しますか?そして、あなたの組織はアジャイルを取り入れたことによってどのように変化したでしょうか?
Shane Hastie氏 はアジャイルコーチ、トレーナー、コンサルタントとしてSoftware Education in Australia & New Zealandで働いている。