MicrosoftのエンタープライズアーキテクトであるNick Malik氏がビジネスアナリストとビジネスアーキテクトの違いを示す記事を書いたところ、氏の考えに対する反論が現れた。氏はビジネスアナリストとビジネスアーキテクトの仕事は根本的に違っていると主張しているが、Kevin Brennen氏はこの考えに強く反対し、両者の役割の類似点を指摘している。
Nick Malik氏は記事で、ビジネスを分析するということだけが両者の類似点だと主張している。続けて氏はこの2つの役割の目的や技法、出番や性質を概括する。氏によれば、ビジネスアーキテクトは先進的なモデルやツールを使って、ビジネス能力の中にあるギャップを特定し、そのギャップを解消しようとする。反対にビジネスアナリストは既存の事業の枠内で働き、利害関係者へのインタビュー結果を使って、ITソリューションに必要なシステム要件をを作る。このような理解をもとに、氏は両者の間に明確な線を引く。
この2つの役割には、共通点がほとんどありません。根本的に違っているのです。もちろん、両方の役割を担える人はいます。
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しかし、実際、私はビジネスアナリストがビジネスアーキテクトに上手く転身した事例をしりません。
この考えに即座に反論したのがIIBAのKevin Brennen氏だ。氏は"ビジネスアーキテクチャはビジネスアナリシス”という記事で、Nick Malik氏のビジネスアーキテクトの定義に対しては論難せず、ビジネスアナリストの役割についての考えに根本的な問題があることを指摘している。
Nickのビジネスアーキテクトの仕事に対する理解が間違っていると言いたいわけではありません。問題なのは、Nickが自身のビジネスアーキテクトとしての実際の経験に即して、ビジネスアーキテクトが何に時間を費やすべきかについての考えを示していることです。また、意識的かどうかわかりませんが、ITにおけるビジネスアナリシスを軽視して、ビジネスアーキテクチャの複雑さや重要性を高く評価しています。
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詳しい説明に入る前にはっきりと書きますが、すべてのビジネスアナリストがビジネスアーキテクチャに関わるべきだと考えているわけではありません。ビジネスアーキテクチャもビジネスアナリシスのひとつですが、ビジネスアナリストには他のキャリアもあります。両者が全く異なる仕事であるというNickの考えに強く反論したいだけです。
Brennen氏はMalik氏のビジネスアナリストがビジネスアーキテクトの比較を取り上げて、論拠が弱い点を逐一指摘している。氏はビジネスアーキテクトとビジネスアナリストが組織内の異なるレベルで働くことには同意するが、そのような違いが原因で両者の仕事に根本的な違いが生まれるとは考えていない。
違いはひとつあります。ビジネスアーキテクトは戦略の領域で働きます。一方、ビジネスシステムアナリストが働くのは戦術の領域です。しかし、この違いは両者を全く別の役割だと考えるのに十分なほど大きな違いだとは思いません。
この反論に答えて、Malik氏はもとの記事を更新し、主張を明確にした。Malik氏はビジネスアナリストの定義を変更し、ITに関係のないチームの仕事も含めた。また、両方ともビジネス分析が主要な仕事であるということも繰り返し指摘している。さらに、両者のスキルの違いについてはより丁寧に説明している。
ある人のスキルを見れば、重複する部分があることがわかります。優秀な人は素晴らしい分析技術を持っており、多くのことができるでしょう。しかし、ここで話題にしているのは人ではありません。役割について話しているのです。
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これは私の個人的な経験です。多くの人がビジネスアナリストからビジネスアーキテクトに上手く転身していると考えるのにやぶさかでありません。しかし、この転身に苦しみ、失敗する人を多く見てきました。私の経験から言えば、この転身はとても難しいのです。
また、この更新で新しい結論が加えられている。氏はビジネスアナリシス知識体系ガイド (BABOK)がビジネスアナリストの仕事をどのように記述しているかに着目し、BABOKが示す多くのタスクがアナリストの役割の違いを示すのに役に立たないことを問題視している。
これはアナリストではなくBABOKの問題です。ビジネスアナリストの“定義”の中に、これほど多くの役割が含まれているので、似た領域の他の専門職の役割を定義しようとすると、必ずビジネスアナリストの役割と重複してしまいます。
また、後続する記事でも、氏は2つの役割を明確に区別している。
ビジネスアナリストの役割はビジネスアーキテクトの役割よりもより戦略的です。ビジネスアナリストは昔からある役割で、ビジネス領域の問題を理解し、その問題を解決するためビジネスの要求を文書化します。ビジネスアナリストはソリューションを開発したり、ソリューションの方向性を示す役割を担いません。問題を理解し、問題解決に必要な要求を文書化するのが彼らの役割です。
ビジネスアーキテクトは最近になって現れた役割です。部署や部門が問題解決の要求を正しく行い、正確にITリソースを活用できるようにするために必要な役割として現れました。そしてそこからITとは関係のない領域へ役割が拡大したのです。ビジネスアーキテクトの役割は重要です。ビジネスアーキテクトが関わらなければ、本当の企業の問題が既存のビジネスにリソースが取られてしまい、手つかずのまま残っている状態で、企業全体にとっては必要のない仕事をしてしまうかもしれません。
Malik氏は同一人物がこの2つの役割を担う場合もあることを認め、2つの役割の責任を明確にし、ビジネスアーキテクトの仕事を明確にする必要があると主張している。