Spring Framework のオリジナルの作者である Rod Johnson 氏が "自分自身の関心事を追求するため", SpringSource と VMware から退くことを 発表した。VMware による買収後の Spring チームは,これまでにも Peter Cooper-Ellis 氏や Mark Brewer 氏,Shaun Connolly 氏,さらには VMware 側で買収の仲介に一役買った Karl Rumelhart 氏といった,数多くの重要な人材を失ってきた。しかし同社は,Spring に何も問題はないという考えを変えていない。R&D の責任者である Christian Dupuis 氏,技術リーダの Mark Pollack,Mark Fisher,Juergen Hoeller 各氏が,数年前からそうであったように,それぞれの立場に残っているからだ。Hoeller 氏によれば,
Spring の主要な目標は変わっていません。それは,過去よりも現在のアーキテクチャ問題に注目した,エンタープライズ Java 開発向けの実用的なオープンソース技術を構築することです。現在の課題はビッグデータや NoSQL,HTML5,モバイルクライアント,ソーシャルネットワークなどで, Spring Data, Spring Mobile, Spring Social といった派生プロジェクトがそれぞれの課題に取り組んでいます。
Spring Framework 本体に関しては,Spring プログラムモデルでの非同期処理オプションに注力しているところです。来年リリースされる Java 8 の言語機能に,フレームワークとして対応するための準備も行っています。ですが,クラウドコンピューティングが中心的な役割であることには,もちろん変わりありません。Google App Engine や Amazon Elastic Beanstalk,Cloud Foundry のようなプラットフォーム・アズ・ア・サービズに,Spring は完璧にフィットするのです。
VMware の傘下にあることで,全般的な優先順位はクラウドコンピューティングやビッグデータへの戦略的投資と強く関連しているのですが,Spring プログラムモデル自体に大きな変更があるわけではありません。
Sprig チームはコミュニティとの密接な関係を保っています。各リリースにおける機能の優先順位にはユーザからのフィードバックが大きく反映されていますし,リリーススケジュールも必要に応じてダイナミックに変更されます。私個人としては,最近の Spring Data によるイニシアティブ – JPA や Redis, Mongo, Neo4j, Hadoop, GemFire などに対する革新的なデータアクセスを提供しました – も,コミュニティの大きな支援があればこそだと思っています。
Johnson 氏は 2002年10月に発行した書籍 "Expert One-on-One J2EE Design and Development" で,最初の Spring アプリケーションフレームワークをリリースした。2005年には SpringSource を起業し,2009年に VMware によって買収されるまで CEO を務めている。その後は VMware のシニアバイスプレジデントとなり,今回それを退任することになるのだが,今後も Spring には何らかの形で関与を続けたいと考えている。"Spring から完全に離れることは考えられません" と氏は語った。"技術的な関心がまだありますし,多くの技術者はよい友人です。ですから折に触れて,何らかの形で関与できたらと思っています。"
Johnson 氏は Neo4J のサポート企業である Neo Technology の会長には留まる予定だ。氏は昨年頃から,投資家あるいは役員として同社への関与を初めている。その他にも2社の役員に就任する予定であることを InfoQ に語ってくれた。詳細は明らかにしなかったが,数週間以内に発表されるだという。さらに氏は,再びコーディングに時間を費やすことができることを喜んでいて,Scala の習得に時間を使うことを考えている,とも語った。
趣味的なプロジェクトで,コードを書くことも始めています。 インフラストラクチャや,公開するようなものではありませんが,以前のように多くの時間をコーディングに費やせるのはとても楽しいことです! 本当にコードを書きまくっていたのは,多分2年位前のことでしょう (その後の SpringSource/VMware では,あまりそういったことはありませんでした)。これまでとは違ったものを見る時間を持てたのは嬉しいですね。そのプロジェクトを Scala に移植するかも知れません。新しい言語を学ぶことも,ずいぶん長い間ありませんでした。
PaaS ベンダである CloudBees で製品担当 SVP を務める Steven Harris 氏は,10年以上にわたって Oracle で Java サーバビジネス運営と Java EE JCP への関与を続けてきた人物だ。氏によると,
Rod が Java に与えた影響は,Spring フレームワーク自体のそれをはるかに越えるものです。フレームワーク自体の簡素化という発想の与えた衝撃は Java EE にとって重大な意味を持つもので,プラットフォームとして進展する上での大きな駆動力となりました。ライセンスフリーのオープンソースプロジェクトとしての成功もまた,Java コミュニティからの参画と競争を数多く引き起こし,それらを促進してきたのです。
我々は Rod の今後の活躍を祈るとともに,氏の次なる活動にも注目していきたいと思う。