2012年9月,"アジャイル探検家で扇動家,右脳思想家" の Tobias Mayer 氏がビジネスクラフトマンシップ (Business Craftmanship)を立ち上げた。アジャイルソフトウェア開発からのアイデアを他の知識労働のコンテキストにも伝授し適用しようという,組織の開発と変革への取り組みである。
私はこれまで,アジャイルの作業方法に特有の基本的理念や価値観といったものを取り上げて,私自身の生活とキャリア経験に組み入れてきました。そうすることによって変革的で,しかも人間中心のフレームワークを構築したいと考えていたのです。私は今,組織全体を新たな道に向けて導く上で,その経験を活用できることに大きな喜びを感じています。
ビジネスクラフトマンシップはスクラムの基本目標を採用している。
アジャイル導入において通常重視される「何をすべきか」あるいは「どのようにすべきか」という目標に取り組む前段階として,このアプローチが実行に値する理由について組織が理解する場を与えてくれます。明確な目的意識を出発点とすることによってビジネス的観点と個人的観点の両面で,何をどのようにすべきかを自ら発想する能力を備えた,熱意ある労働力を生み出す可能性を開くのです。
当初数ヶ月の間に,氏はいくつかの記事を公表した。"本質的価値 (Core Value)" と題したブログ記事では,スクラムの価値観に対して批判的な立場を取っている。
スクラムに関する最初の書籍で提起された5つの価値観は,集中,勇気,オープン,コミット,そして敬意でした。本質的価値として賛同できる勇気は別として,その他の4つについては,行為に依存しないあり方を確立しようとしている点で,価値観としての基本的なポイントを逸しているように思うのです。
氏はさらに,健全な社会を創出する上での本質的価値をどこに置くべきかについて,自らの信じるところを次のように述べている。
- 勇気 – 自分の限界を知り,本心を語ること。
- 信頼 – 疑念ではなく信頼の場に導きを求め,それに従うこと。
- 調和 – 誠実さを持って行動すること。それによって行動や感情が常に一貫したものになる。
- 謙虚 – 自身の独自性を認め,強さを賞賛せよ。その上で集団の中のひとりとなるべく努力せよ。
- 奉仕 – 他人のニーズに気を配れ。求めるものと与えるものを同じ割合にせよ。奉仕とは,与えたものと同じ程度のものを受けられるものなのだ。
アジャイルマニュフェストには,"私たちは,プロセスやツールよりも個人と対話に価値をおく" という記述がある。"プロセスへの称賛 (In Praise of Process)" と題されたブログ記事では,人とプロセスのバランスを保つ上で,スクラムの果たす役割について説明している。
スクラムは価値と原則,そしてメタプラクティスから成るフレームワークです。それらを受け入れることによって,プロセスはコンテキスト – 人,製品,相互の関係,そして組織のリズム – に適したものになります。
私たちにはすでにプロセスがあります。なくなることはありません。必要なのは,よりよいプロセスなのです。私たちは互いに依存しています。プロセスはその相互関係において,等しく評価されなければなりません。
ビジネスクラフトマンシップブログの話題はさらに,氏がアジャイル思想家あるいはアジャイル扇動家という名の下で7年間を過ごすに至った仕事へと続いている。氏は以前にも "Tobias Mayer氏,スクラムアライアンスについて語る" というタイトルで InfoQ のインタビューを受けたことがある。