Microsoft の Herb Sutter 氏は先日，同社の C++ 11 と C++ コミュニティへのサポート全般に関する重大な発表を行った。同社は VS2012 をリリースした時，新機能をいち早くマーケットに投入可能にするために，アウトオブバンドのリリースをサポートするアーキテクチャ設計を採用すると説明していた。しかし Sutter 氏の発表によると，C++ 11 標準サポートの完成度が向上した新しい Visual C++ コンパイラは，2012年11月に一般公開される CTP で提供されるという。完全とは言えないまでも，同社が一歩前進したことは事実のようだ。
今回のアップデートの説明の中で氏は，"私たち Microsoft は .NET も，HTML5 や JavaScipt も好きですが，それでも基本は C++ なのです" とコメントした上で，C++ への支持を証明するものとして，かつては C 言語が中心であった Windows も現在では C++ による記述部分が増えつつある点を指摘した。
Sutter 氏の言葉を借りれば，すべてのチームが依存する唯一のチームが Microsoft には存在する，すなわち "すべてのチームが (推移論的に) Visual C++ に依存している"。その意味でこの事実は重要だ。それはさておき，今回のプレビューで導入された新機能を紹介しよう。
- 明示的な型変換演算子
- Raw 文字列リテラル
- 関数テンプレートのデフォルト引数
- デリゲートコンストラクタ
- 統一初期化記法 (Uniform Initialization) と initializer_list (Vector の初期化記法は CTP では未サポート)
- 可変個引数テンプレート
説明の直後に氏は，今回のリリースがコンパイラのみであり，製品コードに用いるべきではないプレビュー版であることを強調した。(今回のプレビューでは，VS2012 Express for Desktop での使用がサポートされる)
CTP，正式名称は "Visual C++ Compiler November 2012 CTP" は現在，Microsoft から 入手可能だ。Microsoft の Stephan T. Lavavej 氏は，これら新機能の概要を説明した新ツアーを Channel 9 でリリースしている。
Sutter 氏はさらに，Microsoft が VS2012 のアウトオブバンドのアップデートを今後も継続すること，C++ 11 の次なるアップデートが間もなく，2013 年の前半には提供される予定であること，なども説明した。
アップテンポな ISO C++ リリーススケジュール
CTP だけが発表の内容ではない -- Microsoft と Google，IBM，Intel，その他の企業や団体が参加して，C++ 言語の振興，指導，開発を行う Standrad C++ Foundation を結成した。創設者として名を連ねるのは Herb Sutter, Bjarne Stroustrup, Chandler Carruth (Google), Beman Dawes (Boost), Michael Wong (IBM), Stefanus Du Toit (Intel) の各氏である。
Shutter 氏は C++ の重要な新標準であり，2017 年のリリースが予定される C++17 について説明した。C++ 標準としてはその前に，2014 年にもマイナーリリースが予定されていて，これまでのリリースのペース (C++98, C++03, C++11) よりも大幅にスピードアップされる。
新しい C++ に関する情報の認知度を高め，ニュース伝達を促進するため，Sutter 氏はさらに isocpp.org の設立を発表し，"C++ の反体制派同盟軍本拠地モデル" であると説明した。このサイトは，標準化プロセスに関する透明かつオープンなコミュニケーションを実現するとともに，現代的な C++ 開発に興味を持つ人々への有益な最新情報の提供を目標とするものだ。