「Scrum Kickoff Planner」がAdam Weisbart氏によってリリースされた。このガイドの目的は、新しいアジャイチームやプロジェクトを始めるときに、重要なポイントに関するチームのディスカッションをうまくファシリテートすることだ。
このPDFドキュメントは、スクラムチームとのキックオフ・ディスカッションの一部として記入するようできている。チームとその合意のやり方、コラボレーションのためのツール、プロダクトオーナーの役割、スプリントのスケジューリング、ほかのチームとの調整、完了の定義、見積もりに対する準備と合意のやり方など、重要なポイントに関するディスカッションを促進する。イントロダクションには次のように書かれている。
このガイドはチームづくり(もしくは再起動)のときに検討すべき、基本的な質問を提供します。各チームメンバーに1部コピーを配布して、少し時間をとって、みんなで集まって記入しましょう。このプランナーの一番の目的は、コラボレーションとコミュニケーションを養うことです。すぐれたユーザーストーリーと同様、会話を促進するようになっています。
このプランナーは、Adam氏がアジャイルコミュニティに紹介してきた、アジャイルマニフェストと価値のポスター、「Update the Card Wall」リマインダ・アプリケーション、「Build Your Own Scrum」エクササイズ、「アジャイルアンチパターン・プロジェクト」といった一連のフリーで役に立つツールの最新作だ。
InfoQはアジャイルコミュニティ向けの新たなリソースについて調査すべく、Adam氏と情報交換した。
InfoQ: このガイドの対象読者は?
私がこれを作ったとき、大きく3種類の読者を思い浮かべていました。
- 新米スクラムマスター: 多くの人と同様、私も認定スクラムマスターのコースをとることで、公式にスクラムマスターとしてのスタートを切りました。私のインストラクターだったJimi Fosdick氏にはとても感謝しています。彼の2日間のコースのおかげで、スクラムをはじめる準備ができました。この「準備」というのは、世界に出て行くための十分な情報を、危険を伴うことも含めて、私に与えてくれたということです。もちろん真のマスターになるためには何年もの訓練が必要ですが、私は新しいことに取り組むことに興奮したものです。私は自分の認定スクラムマスターコースの生徒が最初のチームをうまくセットアップするのに役立つツールはないか確かめようと、「Scrum Kickoff Planner」を一部取り入れました。私の場合は幸運にも、スクラムキックオフの質問でJimi氏を困らせることができましたが、彼の電話番号をみんなに教えたいと言っても彼は許してはくれないでしょう。そこでコーチがやるように、プロセスを通してあなたをガイドするために、このプランナーを作ったのです。
- 問題を抱えているチーム: これまでのコーチングで、しばらくスクラムをやってきたけれども行き詰まりを感じているチームにたくさん出会いました。彼らを見てわかったのは、多くの場合、しっかりとした基礎ができていないということです。「Scrum Kickoff Planner」はチームにしっかりとした基礎を築くのに役立つため、チームを再起動するのにすぐれたツールになります。プランナーの質問は会話を弾ませます。会話が弾むことは、すぐれたチームにつながります。
- アジャイルコーチ: プランナーはコーチとして万全の準備をするためのすばらしいアセスメントツールになります。再起動を必要としているチームに役立つのと同じ理由です。現場でこのガイドを使うことで、コーチは見落しがないか確認できます。
InfoQ: チームがこれを使って会話をするとき、一番おすすめの方法は?
私は最大限インタラクティブにこのガイドを使うことをおすすめします。見てきた中で唯一間違った使い方だと思ったのは、ひとりがコンピュータに入力して、ほかの人はまわりに座っているというものです。これは退屈です。プランナーを印刷して、各チームメンバーに配りましょう。全員に記入させて、ボロボロになるまで使い切りましょう。これはスクラムマスターがファシリテーション・テクニックを使う絶好のチャンスです。ポストイットとペンを準備して、完了を定義する1時間のセッションをしましょう。全員にブレストさせましょう。5分程度、各自黙って完了の定義に入ると思うものを書き出させるのです。それからアフィニティ・グルーピング(似ているものをまとめる)を使って、各ポイントについて会話をファシリテートするのです。楽しくやりましょう!
InfoQ: 情報を集めたら、それを使ってチームは何をすればよいのでしょうか?
成果物もよいのですが、会話はもっとよいことです。私はチームに、さらなる会話を促す、生きた成果物を作らせます。たとえば、チームが完了の定義(DoD: Definition of Done)を考えついたら、それをタスクボードの隣りや、デイリースクラムをしている場所に貼ることをおすすめします。これによって、スプリントバックログにあるアイテムが完了したかどうか判断するとき、みんなでDoDを見直せます。スクラムマスターは、チームメンバーがDoDを見直して必要に応じて更新するのをうまく助けるとよいでしょう。エンジニアリング・プラクティスとチームワークが改善するにつれ、新しいチームのDoDも厳格になっていくでしょう。DoDについて会話をし、必要に応じて更新することによって、DoDという成果物を生きたままにしておきましょう。もしチームがスプリント中にいつミーティングがあるか覚えられないのなら、プランナーを使って一緒に作ったスケジュールをチームの居室にも貼っておきましょう。
InfoQ: どう記入したらよいか助けを求めている人に対して、おすすめの情報源はありますか?
私は助けを求めている人たちから話を聞くのが大好きです。このガイドを有益な情報で更新し続けたいと思っています。是非、このプランナーを紹介したブログ記事のコメント欄に書いてください。たくさんコメントがつけば、議論をさらに深めるためのオンラインコミュニティを用意するつもりです。興味をもった人がたくさんいたら、定期的なオンライン・ミートアップの開催も考えたいですね。
InfoQ: なぜこれまでこのようなガイドがなかったのでしょうか?
このプランナーを作るまで、私は新しいチームを立ち上げるたびに、このようなドキュメントを作らなくては、と思っていました。スクラムコミュニティにも同じことを考えていた人がいると思います。問題は、現場にいて年に1つか2つのチームしか立ち上げていないとき、プランナーを書くことの投資収益が低いことです。私は年にいくつものチームを立ち上げており、私の生徒もこのようなプランナーを必要としていることがわかっていたので、ようやく腰を据えてこれを作りました。みんな自分のチームのことで忙しくて、余裕がないのだと思います。私は余裕のないスクラムマスターとコーチを助けたいと思っています。それがこのプランナーをコミュニティにシェアすることにした、一番の理由です。このプランナーによってチームが成功するチャンスを高め、成功したスクラムチームが世界中で増えることが、私たちみんなにとってよいことだと信じています。
InfoQ: 今後、このガイドについて検討している改善というのはありますか?
はい。現在、完了の定義づくりやプロダクトビジョンの立て方といった、掘り下げるべきアイテムについて、チュートリアルになるようなサポート教材に取り組んでいます。また、プランナーを実際に使った人たちから話を聞いて、皆さんの提案を取り入れていくことを楽しみにしています。
「Scrum Kickoff Planner」 Adam氏のWebサイトからフリーでダウンロードできる。スクラムチームをセットアップするときに、あなたが使っているアプローチや事前にカバーする重要な議論ポイントはあるだろうか?