ドイツの企業である combit が先日リリースした List & Label 18 には,マルチスレッド動作の最適化や インメモリ・データベースなど,パフォーマンス面でいくつかの改善が図られている。Windows 8のタッチ ジェスチャもサポートされて,パン操作や指2本でのズーム操作が可能になった。
Top-N-Reportingによって,結果列によるクロス表のソート,印刷時の行数制限などの操作も可能だ。データソースなどのパラメータ設定に使用する WinForm アプリケーション形式のウィザードや,64bit ネイティブのPDFエクスポートも製品に含まれている。
このList & Label 18(LL18)はリボンのサポート,jQuery モバイル HTMLのエクスポート,複数ページ対応のビューア,新しいバーコード,裏面印刷,NuGen,クロスページエクスポートなどを備え,Amazon Web Services や Visual Studio 2012 へのインテグレーションに対応する。
開発マネージャを務めるJochen Bartlau氏がInfoQとの独占インタビューに応じて,製品のさまざまな側面や機能について詳細に説明してくれた。
InfoQ: LL18は他の競合製品と比べて,どのような点が違うのでしょうか。
List & Label はアプリケーションに対して,シームレスかつタイトに統合され,その重要な部分を担うようになります。インストールも xCopy で簡単にできますし,データベースドライバを追加でインストールする必要もありません。ページはあくまでページとして扱われます。レポートのバンドを組み合わせるような,理解の難しい概念は必要ありません。ロイヤリティフリーのDesignerを使えば,ユーザ自身で簡単に,直感的に作成することができます。活発なユーザベースが,私たちにとって技術革新のための貴重な情報源になっています。製品の機能の大部分は,ユーザからの要求に直接応えるために実装されたものなのです。この製品のもつフレキシビリティの前には,"不可能"という言葉はもはや存在しません。
InfoQ: Amazon Web Servicesへの統合には,どのようなメリットがあるのでしょうか。
クラウドコンピューティング が代表的なバズワードのひとつであることには,現在でも変わりありません。しかし,アプリケーションをクラウドに配置することには,単なる宣伝文句以上の意義があります – ロードバランスやスケーラビリティ,信頼性などを考えてみてください。
List & LabelをAWSアプリとして運用するのは,クライアントのWinFormアプリで使用するのと同じくらい簡単です。そして何よりも素晴らしいのは,AzureやAWS,ASP.NET,あるはWPF/WinFormsのどれを使っても,すべてのレポートが簡単に交換可能なことです。
InfoQ: LL18ではNuGetがサポートされているということですが,開発者にはどのような点でメリットがあるのでしょうか。
NuGetを使えば,既存のサードパーティ製コンポーネントをアプリケーションで簡単に利用できます。List & Labelの場合には,必要な依存モジュールがアプリケーションに自動的に追加されるようになるので,セットアッププロジェクトの作成がとても簡単になります。さらに自動更新チェックによって,ユーザが重要な新しいサービスパックや機能アップデートを見逃すこともなくなるのです。
InfoQ: 裏面印刷は開発者にとって重要な機能なのでしょうか。
ユーザにとってメリットのある機能が何であるかを確認するため,当社ではユーザ調査を毎年行っています。その中でとても要求の多かったのが,実はこの機能だったのです。ですからこれは,ユーザの要求を主体とした機能と言っていいでしょう。
InfoQ: ではユーザの視点から見た場合,裏面印刷にはどのようなメリットがあるのでしょう。
多くの国では,契約条件を請求書の裏面に印刷するようなことがごく普通に行われたり,あるいは法律上の要件であったりするのです。これはエンドユーザが何とかできるようなものではありませんから,プログラム側で対処する必要がありました。私の知る限り,この機能を備えたレポートエンジンはList & Label が初めてです。
InfoQ: Top-N-Reportingについて詳しく説明して頂けますか。
クロス集計オブジェクトのための,強力な新機能です。売上データを例にするならば,収益順に並べる (クロス集計の先頭にトップセラーを置くなど) だけでなく,トップ5の販売情報のみを表示するようにフィルタすることも可能になります。このように,データの迅速かつパワフルなオーバービューを提供することができるのです。
InfoQ: LL18アプリケーションのバックエンドとして,MySQL を使用することは可能ですか。
柔軟なコンセプトを持ったDataProviderによって,どのようなデータソースでもバインド可能です。MySQLに関しては,当社がホストするオープンソースプロジェクトがあって,MySQLをサポートするためのソースコードを提供しています。ですから,最新のMySQLリリースが利用可能になれば,ユーザ自身ですぐにサポートすることができます。当社のサポートを待つ必要はありません。
InfoQ: LL18でWindows Store用アプリを構築することは可能ですか。Windows Phone 8はサポートされるのでしょうか。
Windows OSのインフラストラクチャに多くを依存しているため,Windows RTやWindows Phone を直接サポートすることはできません。ただし実際には,さほど大きな制限ではありません。ポータブルデバイス上で帳票をデザインしようというユーザは,ほとんどいないからです。
印刷については,レポートアプリケーションをサーバにおいておけば,PDFなど当社のサポートする多彩な出力形式のいずれかを使用することが可能です。当社でも,タッチ指向のサンプルや,セルフサービスのレポートWebアプリをバージョン18で提供しています。
InfoQ: LL18を使用して,Android Jelly BeanベースのタブレットPCなど,モバイルデバイス用のアプリを構築することはできるのでしょうか。
基本的にはWindows Phoneの場合と同じです。つまり,必要な動作を行うWebアプリを用意することになります。バージョン18では,出力形式としてjQueryモバイルのサポートを導入しました。ネストしたデータでも,タブレットやスマートフォン上で容易にブラウズできるようになっています。
InfoQ: QRバーコードスキャナはサポートされているのでしょうか。
数年前,QRコード が訛伝される以前から,List & Labelでは印刷対応していました。当社のバーコードサポートは常に最先端の位置にあって,現在では50以上のバーコード形式をサポートしています。
InfoQ: LL18には無料版もあるのでしょうか。
すべての機能が利用可能な トライアル 版が無償で提供されています。当社の製品を30日間,テストすることができます。開発者を支援するためのプリセールスサポートサービスも提供しています。
InfoQ: LL18では,ソーシャルメディアをどのように活用していますか。
Redmine Reporty のようなオープンソースのプロジェクトを,広い範囲で運営あるいは支援しています。Redmine Reporty は,バグ管理システム(Ticketing System) として人気であるRedmine用の,本格的なレポートデザイナを備えたレポート支援ソフトウェアです。combitのWebサイトでは,名刺などにバーコードがすぐ必要な方のために,使いやすいオンラインのバーコードジェネレータを無償で公開しています。ここで紹介したものを含むさまざまなプロジェクトについては,FacebookやTwitter,Google+などを通じて情報を提供しています。combitは VSIP(Visual Studio Industry Partner) Premierパートナですので,Microsoft のソーシャルチャネルへもアクセス可能です。
InfoQ: List & Labelの今後のロードマップについて説明してください。LL19にはどのようなことが期待できるのでしょう。
ここ数年間で成功してきたことを,当面は継続するつもりです – 年ベースでの新リリース提供,既存機能の拡張,ITのトレンドトピックをサポートするための新機能導入などです。
ユーザのフィードバックを尊重して,チェックリスト上でよく見える機能を追加することで,製品が肥大してしまわないようにしたいと思っています。バージョンサイクルはまだ始まって間もないのですが,チャート機能の追加や,レポートのインタラクティブ性を向上することなどを検討することになると思います。