MicrosoftのCU-RTC-Web は、WebRTCの弱点を示し、WebRTCへ 別のアプローチを行っている。
WebRTC は、リアルタイムなブラウ ザ間マルチメディア通信を実現するクライアントサイドAPIを定義する規格だ。このAPIを実装するブラウザはビデオと音声通話をサポートする。2011 年、規格が実装されたソースコードと共にGoogle によって提案された。この規格は、2012年の第4四半期には勧告候補になる予定だったが、少なくとも1年の遅延により、現時点では W3C ワーキングドラフト である。この規格はChrome、Firefox 、Operaによって実装されている。
Appleは、Safariでどのように対応するかを明確にしていない。WebRTCがWebKitにコミットされているとはいえ、Appleは立ち位 置を示していない。考えられる1つのソリューションは、Safariおよび他のブラウザの機能拡張であるWebRTC4Allプ ロジェクトだ。もしくは、現在のドラフトがデファクトスタンダードになれば、AppleはWebRTCを受け入れるだろう。
Microsoftは、W3C WebRTCのワーキンググループに積極的に参加しており、2012年8月に、Customizable, Ubiquitous Real Time Communication over the Web (CU-RTC-Web)と呼ばれる新たな提案を提出した。 InfoQは、CU-RTC-Webの詳細を知るためにMicrosoftのOpen Tech EvangelismチームのOlivier Bloch氏と議論した。Bloch氏は次のように述べる。まず第一に、Microsoftはマルチメディア通信APIがいくつかの要件を満たす必要があると考えている。
- キーウェブ理念の尊重 [ステートレスな相互作用を含む]
- 既存のネットワークインフラストラクチャ上におけるユビキタスな展開
- ネットワーク品質の変化に対してカスタマイズ可能な応答性
- 人気のあるメディア形式とコーデックだけでなく、将来的なイノベーションに対してオープンな柔軟性
そしてWebRTCは最初の2つの要件を満たしていないとBloch氏は言う。 CU-RTC-Webの役割は次の通りだ。
CU-RTC-Webは、WebRTC API規格の別のアプローチだ。
CU-RTC-Webは代替規格になることを意図していない。標準化の議論を助け、より正しく早く相互運用可能な真の規格に到達する方法と考えてい る、
この提案の妥当性を示すために、MicrosoftはHTML5Labsにおいて、CU- RTC-Webのワーキングプロトタイプ実装を発表した。
WebRTC APIの現ドラフト実装(ChromeとSafari)は、相互運用性がないことが実証されている。
私達の提案を明確にして前進させるため、CU-RTC-Webによる代替アプローチを実装したプロトタイプを発表した。私たちはコードにおける対話の 価値を信じて、CU-RTC-WebのアプローチでChromeとIE間の相互運用性を実証する。
これによってW3C WebRTC ワーキンググループは、CU-RTC-WebとMicrosoftが提案したアイデアの幾つかをWebRTCに含んだ。しかし「現アプローチ(WebRTCプロトコルと WebRTCのAPI仕様)が安定版となることは遠い。正式な標準化の前に相互運用可能な実装を構築し利用するといった改良と明確化が必要だ。」
結論として、CU-RTC-Webは異なる標準を作成する試みではなく、WebRTCにある相互運用性の弱点を示し、ワーキングドラフトへ特定の変更を提 案するMicrosoftの手法といえる。