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アジャイルとセールス

原文(投稿日:2013/07/13)へのリンク

Agile and Sales: Reflections on my first Scrum Sales Team と題された記事で,セールスマネージャのEric Krisfelt氏は,"営業チームにもアジャイルは可能か","どうすればそうなれるのか" というよくある質問に,自らの経験をもって答えている。営業組織でのスクラム実践に用いたステップを詳説することで,技術とは無関係のチームでも,自己組織型のアジャイルチームになり得ることを示す内容だ。

手始めとして氏が行ったのは,従来型の営業スチームがスクラムを実践するための4つのステップを定義することだ。

トレーニング: アジャイルあるいはスクラムのトレーニングをすることは,チームがそれらの方法論とその目標を理解する上で重要です。営業チームが開発サイクルの理解を深めることができれば,それはすべての人にとって有益なものになります ...

スタンドアップ:スタンドアップによって,プロセスがユーザや外部のチームに与える影響に対して素早く適応し,対応することが可能になります。営業チームにとってスタンドアップはごく自然なものです – 営業マンは概して気が短く,ポイントを押さえて問題解決に役立つ,成果重視型の短時間のミーティングを好む傾向がありますから ...

スプリントとレトロスペクティブ: 営業でのスプリントのサイクルは,一般的な開発チームよりもずっと長いかも知れません。ですが,スプリントの構造に従うこと自体については,セールスマネージャとしてはさして問題にはなりません。営業チームは月単位の目標を立てることが多いので,スプリントの設定もそれに合わせることにします ...

プロダクトバックログの再解釈:私たちのチームはEPICボード(ユーザ)を取り入れて,タスクを "保留(pending)","実施中(in-progress)","完了(completed)" というステータスを持った "バックログアイテム" として構成しました。そうすると突然,マネジメントチームを含む営業部門全体が,イタレーション中のタスクの数がいかに膨大であるかを,はっきりと認識するに至ったのです。

これらのステップを実践することで,販売チームへのアジャイル適用は容易だった,と氏は報告している。個々のメンバの協力で,トレーニングは快く受け入れられた。またスタンドアップやレトロスペクティブは,それまでのミーティングやプロセスの解釈を変えるだけで十分だった。プロダクトバックログは新しい概念だったが,一旦実施されれば,販売部門で起きていることが技術など他のすべての部門に対して透過的になる,という成果も得られた。このように各ステップは効果的に実施されたのだが,氏が指摘する最大の課題はマネジメントだ。

経営陣をアジャイルに転換するのは,容易なことではありません。個々の営業スタッフの責任はどうなるのか? 営業担当者の埋め合わせはどうやって行うのか? チームの誰かが十分な営業活動をしない場合はどうなるのか?さらに多くの幹部が,週の目標を決定するにはスタンドアップミーティングは短すぎる,という考えでした。

営業チームに対してスクラムのメンタリティを完全に適用するには,チームメンバだけではなく管理する側も,従来の営業方法論から大きく変わる必要があるのだろう。スクラムを採用した営業チームはこの変遷に成功した。しかし残念ながらマネジメントはそうではなかったようだ。以前のプロセスが再び適用され,スクラムフレームワークは破棄されることになったからだ。

今になっても理解できない理由で,組織の再構成が実施されて,スクラム営業チームは廃止されてしまいました。しかしその時にはすでに,アジャイルの威力が営業でも確認できていました。メンバ個々の売上貢献だけではなく,チーム全体としても,会社から指示されていたノルマを初めて達成することができたのです。

保守的な経営陣が自分たちの知っているものに戻すというのは,新たなプロセスの実現に挑戦した組織の最終的な結果として,それほど珍しいものではない。氏のチームに限らず,チームがアジャイルに失敗する場合に見られる,根本的な原因のひとつなのだ。Ken Schwaber氏は,自身のブログwhy Agile failsに次のように書いている。

アジャイルの導入時には,そのプラクティスと,チームあるいは組織の文化との間に不調和が生じます ... 一部のマネージャは,チームあるいは組織が成功を収めるのは唯一,自分たちの方法,自分たちの知性と洞察のみを通じてである,と固く信じているのです。それではチームの自己組織化は実現しません。

経営陣によってアジャイルは廃止されてしまったが,氏はスクラムフレームワークを販売組織に導入することに成功した。技術志向の方法論が販売チームにも適用できることを立証したのだ。Jeff Sutherland氏も同様に,営業チームをスクラムに移行させた経験について概説している。

営業チームにスクラムを導入してから,同社の売上は倍増しました。これがスクラムの適用のみによるものだ,と明言するのは難しいのですが,ゼネラルマネージャによれば,収益増加の少なくとも50%はスクラムを採用した結果だということです。業務拡張を目指す同社では,達成に向けてさまざまなアクションを実施していますが,その中においても,営業チームによる自己主導的な活動であること,セールスプロセスの効率性が反映されていること,調査と適用の頻繁なサイクルが実施されていることなどから,スクラムの利用が大きな意味を持っていると言えます。

Eric Krisfelt氏のチームが目標を達成できたのはわずか6ヶ月に過ぎないが,それでも彼らは,"アジャイルの共同作業モデルが仕事量の増加だけでなく,より継続的な収益と報酬に繋がる" ことを確認できたのだ。結論として氏は,スクラムの実施からいくつもの前向きなレッスン – 自己組織型のチーム,個々の場合よりも特定ドメインにより深く集中できるようになること,すべてのチームメンバのワーク・ライフ・バランス向上 – を学んだ。アジャイルはセールスチームでも実践することができる,氏はそう考えている – 実際にうまくいくのだ。

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