Microsoftの開発者向けカンファレンスであるBuild 2013のセッションは,同社CEOのSteve Baller氏による基調講演で幕を開けた。InfoQではカンファレンスの様子をライブで伝えているが,今回はそのプレゼンテーション内容を簡単に編集してお届けする。新しい技術やコンセプトがいくつか紹介されてはいるが,全体としてWindows 8の改良と移行促進がテーマという印象だ。
Ballmer氏は今回のBuildについて,前回(2012年11月に開催)から短期間で実現できたことに満足感を示すとともに,同社が迅速なリリースサイクル,"ラピッドリリース(rapid release)" への移行期にあることを強調。ソフトウェアとサービスを提供するソフトウェア企業へと移行する。Microsoftのアプローチと戦略についてBaller氏 "...迅速なリリースサイクルこそが,当社の活動の基本なのです。"
前回の11月にWindows 8システムは "注目される存在" になった。そして今回,Windows 8.1には "圧倒的な数のイノベーション" がある。すべての開発者のみなさんに,素晴らしい仕事と繁栄を約束してくれるツールとなることを約束します ... 当社はWindows - そして - Windows Phoneの開発を,今後も迅速に進めていきます。
Ballmer氏がWindows 8.Xベースの新デバイスをいくつか,手短に紹介。その中にNokiaのスマートフォン(Lumia 925, 928, 521)や,新たなパートナシップの下にWindows 8フォンを自社ネットワークに投入するSprintなども。
スマートフォンの話題に続いてBallmer氏は,Microsoftのビジョンは "携帯電話に限定したものではなく ... Windowsを搭載した革新的な新デバイスの爆発的拡大[が実現する] ... イノベーションにある",と主張。
昨秋のホリデーショッピングシーズンの状況については,タッチ対応システムの店頭での品揃えが不十分だったと認めた上で,今後はより多くのデバイスがタッチ操作をサポートするようになる,と語る。タッチシステムを備えたWindows 8のユーザは,タッチ操作のないWin8ユーザはもとより,Win7ユーザと比較しても,ずっと快適な操作が可能だ。
- Windowsを搭載した小型タブレットが発売予定。"これらはPCとは呼べませんが ... タブレットが販売されます。"
- 実用的な 2in1 タブレット。タブレットあるいはPC,どちらの名称が適当か分からないが,いずれにおいても "ファーストクラス" の機能。
- Lenovo Helix。Core i7を装備。ペンを内蔵。2ポンド。丸1日のバッテリ持続時間。"言わば,いつでもどこでもWindows,です"。
Windows 8.1公開。
近々リリースされるWindows 8.1について,Ballmer氏は "デスクトップと最新アプリの洗練されたブレンド" である,と表現。スタートバーとメニューの復活への声援と喝采。ユーザが望めば,アプリケーションをデスクトップに直接起動することも可能。
Bing内蔵
BingとGoogleの匿名利用体験はBingに軍配。Windows 8.1にはBingが組み込まれる。アプリケーション開発プラットフォームとしてBingを開放(詳細は後述)。
ユーザニーズに対応したWindows 8.1 : Julie Larson-Green
MicrosoftのLarson-Green氏が登壇,いくつかのMicrosoft製品のさまざまな改善を実演してみせた。最初は近日リリース予定のWindows 8.1だ。Microsoftは11月のローンチ以後,Windowsに800以上の更新を実施したという。スクリーン上のデモでは8インチのWindowsタブレット,Outlookメール,Bingの機能拡張などを紹介。Bingの改良に関するデモでは,あるバンドを検索してみせた。検索結果は,そのバンドに関するページのコレクション ... 曲,ビデオ,画像 - まるで誰かが製作したかのようだが,Bingが生成したものだ。
Xbox Musicの無料音楽ストリーミングサービスがWindows 8にも提供される。Windows 8.1に組み込み予定。その他,8.1の拡張として,アプリケーションのナビゲート方法,新機能であるsnap-toペインへのウィンドウ操作,複数のアプリケーションウィンドウの同時オープンなど。新しいApp Viewでは,8.1システムにインストールされたすべてのアプリを簡単に見ることができる。デスクトップアプリでは特に便利だ。
Larson-Green氏によれば,"Windows 8.1のアプリはすべて新規か,あるいは8.0以降改良されたもの" だ。
(Windows 8.1プレビュー が公開中,IE 11のプレビュー版も含まれる。)
Antonie Leblond 氏がステージに登場。
Windows 8.1には5,000の新API(!?)が追加されていること,VS2013によって次世代のモバイルアプリ,あるいは接続型アプリの開発が容易になることなどを説明。続いてVS2013の新ベンチマークツールをデモ。アプリの実行速度のみならず,ネットワークの有効性,オペレーションによるバッテリ性能への影響などが確認できる。
VS2013では非同期デバッグが改善され,非同期コールスタックの保存が可能になった。Windows 8.1はブラウザとデスクトップアプリの両方で,WebGLとMPEG DASHをネイティブサポートする。
Windows Storeの拡張: アプリケーションの自動更新がサポートされた。常に最新バージョンを保持することが可能。ユーザの購買履歴を元に,購入およびダウンロードのリコメンドを行うページも追加されている。
マルチモニタサポートに重要な機能追加: モニタ毎に独立したスケーリング係数を持つことが可能になった。物理的に異なる複数のモニタを使用するユーザのエクスペリエンスを改善するだろう。
Gurdeep Singh Pall氏とBingチーム
Pall氏はYahooとFacebookがBingを使っているとした上で,チームとしては今後,PCやタブレット,携帯電話,TVにまで,Bingの利用範囲を拡大したいと述べた。 "... 1990年代のWindowsを通じて,APIがよくできていれば,サードパーティがそれを使って素晴らしい成果を挙げてくれることを学んだのです"。
続いて氏は,開発者プラットフォームとしてBingを提供することを発表した。検索,Webのインデックスとリバランス,エンティティとナレッジ,NUI(Natural User Interface) など,Bingの技術とノウハウが開発者に公開される。
さらに氏は,3D機能を持ったWindows 8.1マップアプリを使って,非常に面白いデモをして見せた。この3Dイメージ制御も,他の開発者が埋め込んで使用できるようになる。 そのデモでは,マップビューであるビルにズームインした上で,音声で "このビルの設計者は誰か" と質問すると,Bingがスクリーン上のイメージを検索し,その名前を示してみせていた。
次に氏は,Windows 8.Xデバイス上のカメラで名刺を撮影した。BingはOCR機能を備えていて,名刺のテキストを処理することができる。そのテキストはスペイン語だったので,氏はBingでそれを英語に翻訳してみせた。処理が終わると,氏はそれをトラベルアプリに追加するように,音声で指示した。これらはすべて,Bingのテクノロジ と音声コントロール機能を使用して行われている。
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Ballmer氏がステージに再登場。基調講演の最後に,Project Sparkのデモが行われた。デモは,Windows 8コンピュータ上でゲームのマップとレベルを作成している開発者から始まる。これをAzure上に保存し,XBox Oneシステムにロードする。XBox上でプレイしたり,あるいはタブレットでさらに編集し,それからXBoxでプレイを継続することもできる。
最後にBallmer氏は,Microsoftの望む "ラピッドリリース",革新的エクスペリエンスのすべてのデバイスへの展開,という自身のテーマを繰り返した。氏の表現によれば,最大かつ最高のエクスペリエンスに "近づきたい" のであれば,Windows 8ファミリのデバイスを使用するべきだ。
Build 2013に関するInfoQの報道に,今後もご期待頂きたい。