企業がアジャイルを導入するとき、業績評価の方法を変えるべきかどうかが論点になる場合ある。業績評価と報賞のプロセスは個々人の成果を元にトップダウンで行われることが多く、チームとしての貢献や協力は査定されない。何人かの著者がフィードバックを次に活かしたり、既存の評価制度を改めることで個人やチームの成果を向上させる方法について話している。
Naresh Jain氏は、従業員の業績と給与の評価を混ぜるべきではない理由を説明する。氏によれば、業績の問題は直接的に対処されるべきだ。
誰かの業績が良くないなら、その人がその仕事に向いていないということです。助言したり、ガイドしたりして助けられますし、違う仕事を選ばせることもできます。これでも業績がよくならないのなら、その人は去るべきでしょう。それが、その人にとっても組織にとっても最も良いことなはずです。
氏は続けて、組織内の適応的なアジャイルチームがどのように業績の悪い人をはじき出すかを説明する。
アジャイルチームのような協力関係の強いチームでは業績の悪い人の隠れ場所はありません。すぐに生き残れないことを自覚し、誰かが何かする前に、去っていきます。チームや組織に適合しない従業員を業績の観点から排除すれば、業績の良い人だけのチームが出来上がります。しかし、業績というのは幅広いものだということを忘れてはなりません。
氏は360度評価を導入し、従業員同士がフィードバックを与え合い、高めあうことを推奨する。氏はこれを“最小限の驚きの原則“と呼ぶ。
マネージャとのフィードバックミーティングで何も議論されないのは驚くべきことです。一緒に働いている人について何らかの議論がされるべきです。
Forbesのtime to scrap performance appraisals?と題した記事で、Josh Berisin氏が年次の業績評価での問題点について書いている。
従業員は定期的(日時、週次)のフィードバックを必要としているし、欲しています。したがって、年次のフィードバックは遅すぎるだけでなく、驚かしてしまうことになります。
従業員は一年間に多くのリーダーや仲間と共に働きます。したがって、1人の人だけで正しい評価はできません。
また、ポジディブで啓発的なフィードバックに動機付けられます。しかし、“評価”というプロセスはこれとは真反対であることは常です。
そして、企業は従来の評価の仕方を見直そうとしている、と言う。
組織の構造が変わり、企業はよりアジャイルにならなければなりません。重要なタレントは不足しており、日常的な配置換え、コーチング、情熱とエンゲージメントの生成、継続的な能力開発が成功への鍵です。
昨年、InfoQでPat Reed氏がアジャイルの能力開発と適応的なキャリアについてのフレームワークの記事を書いた。この記事は、アジャイルの不可欠な部分である協力的な方法でタレント管理をするにはどうしたらいいかを説明している。氏は“業績管理プロセスとシステムは壊れている”と言う。
年次で評価する方法は、次第にモチベーションを失い、長所よりも欠点が目立つようになっています。顧客に価値を届けることから焦点が外れ、次第にチームの効率性と健全さを毀損するネガティブな態度を生み出します。
Pet氏によれば、頻繁なフィードバックは業績管理方法を改善する。
週次で1:1の業績やキャリアについての面談を行うように、マネージャをトレーニングします。そして、リーダーシップの開発やコーチング、賞賛、建設的でポジティブなフィードバックを直接示すことがマネージャ自身の業績や報賞になるようにします。
myth #5: We can and must have an objective ranking systemという記事では、Johanna Rothman氏がなぜランキングシステムが自身にとって合理的でないかを説明する。
人々は自身の能力を最大限に発揮して貢献します。もし、貢献していないとしても、彼らのせいではないかもしれません。ランキングシステムが使いやすいと思うなら次のことを考えてみるといいでしょう。
- 人々は何を続け、何を変更するべきかに関するタイムリーなフィードバックを十分受け取っているか。
- 人々は仕事に対する知識を持っているか。
- 組織や環境は人々が最大限の能力を発揮できるようになっているか。
組織や環境は人々が最大限の能力を発揮できるようになっているか。
人々にはフィードバックが必要です。アジャイルな組織では何よりもチームメイトからのフィードバックが必要です。アジャイルに移行しておらず、マネージャに仕事が振られているなら、チームのメンバはフィードバックを必要としています。彼らは自分たちがどのように働いているかを知る必要があるのです。しかし、ランキングシステムはそれを教えてくれません。貢献が十分でないなら、十分でないことを知る必要があります。優れた貢献をしているなら、優れた貢献をしていることを知りたいのです。
Chris Sims氏はアジャイルな組織の、スクラムチームのメンバの業績を管理するための業績管理の仕組みの必要性についてブログに書いている。
業績管理の仕組みが適切だとして、どのような“業績”を求めているのかを明確にする必要があります。スクラムを実施しているなら、ハイパフォーマンスなスクラムチームが必要です。このようなゴールを設定してから、チームのメンバがチームとして振る舞ってくれるように業績管理の仕組みを形成します。ヒーローやロックスターに高い評価を与える仕組みを作れば、他のチームメイトと協力関係を作るより、見た目が良くなるような仕事の仕方をするようになってしまいます。
アジャイルでの業績管理の仕組みはチームに対する貢献が増加することを支援する。
もちろん、チームは個人で成り立っており、個々人が可能な限り強くなってほしいと思っています。したがって、業績の評価の仕方は個人の成長を支援するものにするべきです。個人の成長を促すものにするには、強みを評価し、弱点を補完する仕組みにする必要があります。または、新しいスキル領域へ導き、新しい方法で貢献できるような仕組みでなければなりません。