Maurizio Pedriale氏とAlan Hortz氏はAgile Tour Brusselsカンファレンスで,Legoによる課題で参加者たちにCynefinフレームワークを紹介した。Cynefinは組織の状況を把握し,それに対するアプローチを決定する上で,適切な判断を行うためのフレームワークである。ワークショップの内容はDave Snowden氏がHBR (Harvard Business Review) に寄稿したA Leader’s Framework for Decision Making (リーダのための意思決定フレームワーク) という記事に基づいている。WikipediaではCynefinのドメインを次のように説明している:
Cynefinフレームワークには5つのドメインがある。 最初の4つのドメインは次のものだ:
- Simple(単純) – 因果関係はすべて明白,「気付き - 分類 - 対応」アプローチ,最善のプラクティスの適用。
- Complicated(込み入った) – 因果関係の把握には分析あるいは何らかの調査,専門知識の適用が必要,「気付き - 分析 - 対応」 アプローチ, 適切なプラクティスの適用。
- Complex(複雑) – 因果関係の把握は振り返りによってのみ可能であり,事前には不可能,「調査 - 気付き - 対応」 アプローチ,突発的なプラクティスの気付き。
- Chaotic(カオス) – システムレベルでの因果関係が存在しない,「行動 - 気付き - 対応」アプローチ,新たなプラクティスの発見。
5番目のドメインであるDisorder(混乱)は,どのような因果関係が存在するのか分からない,という状態だ。この状態にある人々は,自分にとって意思決定に適した場所へ戻ろうとするだろう。さらに言えばサブドメインもあり,SimpleとChaoticの境界上にはCatastrophic(壊滅的)というドメインもある – 自己満足は失敗につながるのだ。
両氏はCynefin Legoゲームとして,複数のチームが4つの課題を行うワークショップの指導をしている。目的はCynefinフレームワークとは何であるかをまず理解し,アジャイルコーチングの状況でどのように使うのかを議論することだ。課題のそれぞれが,Cynefinのドメインのひとつひとつに対応する。課題終了後にはレトロスペクティブ(振り返り)を実施して,チームが課題にどう対処したか,作業をどのように体系化したかを評価する。
Simpleドメインに対応する最初の課題は簡単で,誰もが期待結果を理解できたので,すぐに作業を始めることができた。第2の課題は,Complecatedドメインを理解するのに有効なものだ。この課題が求めるものを理解して,そこに到達する方法を決定するのには,多少長い時間を必要とした。選択したアプローチはチームによって違ったものの,大部分が求められた結果に到達できた。
第3の課題では,実行すべき作業を説明するルールが導入されたが,求められる結果が完全には定義されていなかったため,各チームは要求を満足するものを構築するのに,さまざまなアプローチを試みることになった。レトロスペクティブで何が起きたのかを確認することによって,さまざまな方法を考えることができたのだ。最後の課題では,テーブルを替えることによってチームに変化を発生させた。最初のうちは第3の課題と同じようなアプローチを行っていたチームも,新しいメンバが入ってくるようになると様子が変わってきた。各メンバはチームが変化したことによって起きた混乱や,チーム内の別のアプローチに対処しようとしてさまざまなことを試し,他の人たちからのフィードバックを利用して,作業の方法を変更した。
セッションは各ドメインについての短いプレゼンテーションを行って終了した。その中で両氏は,異なるドメインにおいても,自身のコーチングやコミュニケーションのスタイルを適用してその状況を扱う,という方法について説明している。