Yahoo!は最近、昨年に導入したランキングシステムに基づき、600人をレイオフした。一方、マイクロソフトはランキングシステムを放棄し、従業員をある種の重圧から解放した。
AllThingsDによれば、新CEOであるMarissa Mayer氏のもと、Yahoo!は昨年、従業員評価システムを導入し、その結果、この数週間で600人近くがレイオフされた。このシステムは同社のマネージャをも慌てさせている。チームのメンバをアンダーフパフォーマーとして分類し、ベルカーブを使った評価システムに従う必要があるからだ。
従業員を目標未達成にしてしまうことを避けられない場合がありました。こういう場合はとても嫌な気持ちになります。そして、今、私はQPRミーティングでそのようなことについて議論をしなければなりません。ベルカーブに合わせるためには、その従業員に目標未達成であることを伝えなければならないからです。本当は、そうでないにも関わらずです。これはとてもつらいことです。目的を達成できない従業員や間違って採用してしまった従業員を排除する必要があるのは理解できますが、実行するのは気が滅入ります。心の中でも人を失うのは避けたいのです。どのように正当化すればいいのでしょう。
匿名掲示板で、あるYahoo!の従業員はランキングシステムはマネージャにも適用されるべきだ、と書いている。
‘時折の目標未達成’という分類はL2とL3の幹部にも適用されるのでしょうか。幹部でも70%も目標を達成していない人がいます。とすると、定義上、彼らは‘時折の目標未達成’に分類されるはずです。
一方、退任する予定のMicrosoftのCEO、Steve Ballmer氏はスタックランキングシステムを廃止することを決定した。このシステムは、同社の内外から、Microsoftの最も破滅的なシステムだと思われていた。
The Verge: Vanity FairコントリビューティングエディタであるKurt Eichenwald氏はMicrosoftの"失われた10年"と共食い文化の原因として、WindowsとOfficeに執着していることと、同社のスタックランキングシステムを合わせて批判した。氏はこのスタックランキングが同社の最も破滅的なシステムであることを認めている現従業員、元従業員に多く取材をしている。
Bloomberg Businessweek: Microsoftの元従業員であるDavid Auerbach氏はBloomberg Businessweekに、スタックランキングシステムが従業員に頼るれるものがないという不安を与え、さらに“従業員同士が足を引っ張り合う”ようにしむけていた、と話している。
Forbes: スタックランキングは、マネージャが従業員をランク付けし、最低ランクの従業員を解雇するという仕組みで、MicrosoftのSteve Ballmer氏がGEから取り入れた恐るべきシステムだ。私が2012年7月に書いたように、Microsoftのスタックランキングはめちゃくちゃだった。
The Wall Street Journal: Microsoftのランキングは最高経営責任者のSteve Ballmer氏の元での、昇進と賞与、株式報奨の重要な要素だった。同氏は今年の8月に退任計画を発表している。しかし、Microsoftの現従業員、元従業員はかわりやすいランキング、マネージャ間の権力争い、不健全な競争を生んだこのシステムに不満を募らせていた。
MicrosoftのHR部門の責任者であるLisa Brummel氏が従業員に送ったメモによれば、これからは“ノーモアカーブ”であり、“ノーモアレーティング”であり、従業員の成長とチームの協力を強調している。
- チームワークとコラボレーションに重きを置きます。私たちは今、優れたパフォーマンスに対する考え方を具体化しており、つぎの3つの要素に注目しています。すなわち、まずは自分の仕事、そしてそれだけでなく、ほかの人からのインプットやアイディアをどのように活用できるか、そして、ほかの人の成功にどのように貢献できるか、です。この3つが合わさってどのようなビジネスインパクトを生み出すか着目しています。
- 従業員の成長と開発に重きを置きます。“コネクト”と呼ばれるプロセスを通じて、よりタイムリーなフィードバックと意義深い議論によって従業員の学習、成長、成果を助けるために、最適化を行っています。企業内でひとつの時間軸に従うのではなく、ビジネスの各部分のリズムに合わせてスケジュールを決め、成果や開発について議論する時期や方法を柔軟にします。
ベルカーブのランキングシステムは1980年代にGEの最高経営責任者のJack Welch氏によって広められ、多くの企業で導入された。しかし、その中には昨年、このシステムを放棄した企業もある。AdobeとExpediaもそうだ。このシステムの中核のアイディアは企業の従業員の成績はベルカーブに従うということだ。それゆえ従業員は、少数のハイパフォーマーと、多くの平均的な能力の従業員と、少数のアンダーパフォーマーに分けられる。ランキングシステムはアンダーパフォーマーを発見し、除外することで企業の労働力全体を改善し、標準偏差を小さくして、より均質な企業にする。次のグラフに示す通りだ。(出典はPunishing by Rewards: When the Performance Bell-curve Stops Working For You - PDF):
しかし、昨年行われたいくつかの研究では、このベルカーブランキングシステムには多くの欠陥があることが指摘されている。The Best and the Rest: Revisiting the Norm of Normality of Individual Performance(PDF)という研究によれば、成績はガウス分布ではなく、次のグラフのような安定分布によって示される。
この研究によれば、大多数の従業員はアンダーパフォーマーであり、ハイパフォーマーは少数しかいない。この研究は、トップパフォーマーを残して残りをレイオフするのではなく、“スパースターを選んで、ボトムラインに影響を与えるポジションに置く”ことを推奨している。
Another study, Punishing by Rewards: When the Performance Bell-curve Stops Working For You(PDF)はベルカーブランキングシステムのほかの問題を指摘している。従業員に与える重圧についてだ。
一定の水準以下であれば、重圧は高いパフォーマンスを導きます。しかし、レイオフが実施されると、重圧は従業員のモラルの低下を引き起こし、パフォーマンスも低下します。成果が一番低い従業員がいなくなると、ベルカーブの固定的な分布に従って、マネージャはハイパフォーマーを平均的な従業員にランク付けしなければなりません。そのような作られた降格によって、ハイパフォーマーはモチベーションを失い、本当に平均的な従業員になってしまいます。そして、小さくなっている会社では、マネージャが従業員を差別化するのが難しくなります。その結果、実際の成果よりも目に見える成果を評価し始めます。ある時点を過ぎると、社会的資本の浸食が企業を不自由にする可能性が生まれます。
この研究は、重圧とモラルのバランスを取り、レイオフからパフォーマンスの評価を分離することを推奨している。
固定的な割合の分布に従わず、トップパフォーマーをトップパフォーマーとして評価するセミベルカーブを使うことを推奨します。さらに、重圧とモラルのバランスを取ることも重要です。バランスを取るのは難しいです。特に企業が小さくなっている場合はそうです。重圧を最適なレベルに保ち、モラルを高く保つ唯一の方法は評価プロセスとレイオフを分離することです。