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中央ヨーロッパにおけるリーン・かんばんのケーススタディ

原文(投稿日:2013/11/21)へのリンク

Arne Roock氏 (リーン・かんばんコーチ、トレーナー)によると、視覚的マネジメント、フロー、そして、すべてのレベルにおけるリーダーシップは、マネージャたちの共感を呼ぶ。なぜなら、マネージャたちは直面する実際の問題を扱っているからだ。マネージャたちは、継続的にシステムを改善するために、進化的変化を用いてこれらのリーン・かんばんの概念を利用できる。

Lean Kanban Central Europe 2013 (LKCE13)では、変化マネジメント、システムシンキング、リーダーシップ、学習、チームワーク、そして、リーン・かんばんを導入した大企業のケーススタディのプレゼンテーションが行われた。このカンファレンスで行われたプレゼンテーションはカンファレンスプログラムから参照できる。

Arne Roock氏はこのカンファレンス組織に参加した。InfoQは、アジャイルソフトウェア開発にリーン・かんばんを展開したことについて、Roock氏にインタビューした。

InfoQ: かんばんをよく知らない人たちに、かんばんの主な原則を簡単に紹介してください。

Arne氏:  かんばんは、組織の中で進化的な変化を引き起こす手法です。進化的とは、変化の第一歩を踏み出す前に、あらかじめ定義した目標となる状態がないことです。その代わりに、私たちはビジョンのような方向性を定め、その方向性に従い、自分たちのシステムを継続的に改善していきます。そのため、結果は決められていますが、これらの結果を達成するための方法は、見つけていく必要があります。そして、その方法も絶えず変化するかもしれません。

進化的変化のためのかんばんプラクティスは以下の通りです。
1) 見えない作業を視覚化する
2) 進行中の作業を制限する
3) 潜在的な方針を明確にする
4) フィードバックループを実行する
5) 作業フローを管理する
6) モデルを使って試す

これは少し抽象的に聞こえるかもしれませんが、様々な場面で、非常に実際的で役に立ちます。

ここでちょっとした例を挙げましょう。私の顧客の1人が、様々な分野で苦労していました。ワークショップの間、私はマネジメントチームに対して最も重要なゴールは何か尋ねました。マネジメントチームは、より良い品質だと答えました。それから、彼らにとっての品質が何か、品質が改善されたことをどのように知るかについて定義しました。そして、スタッフにかんばんを教え、ほぼ会社全体を巻き込んで、かんばんシステムを作りました。オフィスにカードウォールを設置し、今、どんなタスクがどのくらいあるのか、それらのタスクが現在どのような状態で、問題は何か(例えば、外部的要因で待ち時間が発生している)を分かるようにしました。それから、毎日のスタンドアップミーティングと2週間に1度のふりかえりで、フィードバックループを実施するようにしました。そこで、すぐに明らかになったのは、品質向上のための最大の障壁は、プロジェクトマネージャ、開発者、テスタの協力が不足していることでした。これは、多くの人たちが以前から何かしら「感じて」いたことでした。しかし、今では誰にでも見えるようになり、問題について話し合うために定期的にフィードバックループを実施できるようになりました。そして、進行中の作業を制限することで、すぐに何かを変えなければいけないことが感じられるようになりました。おもしろいのは、そのチームが何度も何度もシステムを変更し始め、一歩一歩品質を改善していったことです。このシステムは、だれも最初から作ることはできなかったでしょう。単に、仮説を立てて、試して、評価して、それから、繰り返し変化させなければならなかったのです。

InfoQ: アジャイルソフトウェア開発を採用している会社を知っています。そのような会社は、大抵スクラムを実施していますが、かんばんやリーンを取り入れることも考えるべきでしょうか?

Arne氏: 働き方を改善したい場合や、フローが平坦ではなく、過度の負担(要求が処理能力を超えている)に苦しんでいる場合は、かんばんをもっとよく見てみると良いでしょう。スクラム/アジャイルか、かんばんのどちらかではありません。先ほど述べたように、かんばんは変化する手法です。組織の学習能力を改善することを目的としています。かんばんは、最初からプロジェクト管理ツールでも、チームプロセスでもありません。かんばんは、すでに存在するものに追加する手法です。これはスクラムでも他の手法でも可能です。私は、スクラムを実施しているところが、かんばんを使って改善されてきたのを見てきましたし、かんばんを使うことで、スクラムのようなものに発展していくプロセスもありました。

InfoQ: エンタープライズソフトウェア開発にとって興味深いと思われる、リーンソフトウェアの分野で新しく出てきたものはありますか?

Arne氏: 驚くべきことに、今日、ますます人気が出てきたアイデアのほとんどは、かなり古いものです。例えば、システムシンキングを考えてみてください。Deming氏、Drucker氏、Ackoff氏が書いたものは、何十年も前のものですが、非常に洞察に満ちていて、役に立つものです。難しいのは、これらのアイデアを、ソフトウェア開発のような新しい状況に当てはめ、他のアイデアに統合することです。私たちは、ここ2、3年でかなり前進してきました。私にとって、これらの古いアイデアは、かんばんにあてはめられたことで、より具体的で、適用可能なものになりました。

中規模なビジネスと比較して、エンタープライズについて話す時、私の経験では、リーンとかんばんはマネージャにとってかなり受け入れ易いものです。マネージャたちは、自分たちが直面する実際の問題を扱っているので、視覚的マネジメント、フロー、すべてのレベルにおけるリーダーシップのようなコンセプトに共感します。

また、進化的アプローチは、多くの大規模組織の文化に合います。大規模組織の人たちは、革命的な変化がそれほど好きではありませんし、その作業場所は大きな抵抗を示すでしょう。「今いる場所から始める」、「現在の役割、責任、肩書に最初に敬意を示す」というかんばんの原則は、そのような環境で何かを変化させようと思う時に、とても役に立ちます。

InfoQ: リーンとかんばんを広めることについて、Lean Kanban Central Europeカンファレンスのいくつかの講演で話されました。このカンファレンスに出席した経験について教えてください。

Arne氏: 私にとって重要なことは、かんばんを広めることに関する問題に対して、1つだけ正しい解決策があるわけではないことです。このことは、驚くべきことではありません。Ericssonのリーンとかんばんが、SpotifyやSAPで同じだと本当に思いますか? もちろん違います! これらの企業のビジネスは完全に違います。技術、顧客、歴史、そして、価値がすべて違います。Ericssonのような長い歴史と「忍耐」の価値を誇る企業を思い浮かべて、Spotifyのような若くて、急激に成長した新しい企業と比べてください。両方の企業でうまくいくという青写真があり、「本に書いてあることに従って」当てはめられると考えられるはずはありません!

1つ例を挙げましょう。Spotifyのようにウェブサービスを提供していて、最新式の技術を使っている場合、継続的に開発していくことは、非常に簡単なことです。しかし、ハードウェアが大きく関係するEricssonのような会社から、同じことを実際に期待できるでしょうか? 主要なリリースのために、都市全体でシミュレーションしますし、テスト環境は非常に高価になります。それでは、ここで、これら2つの企業を、何千ものエンジニアが同じERP製品スイートに取り組むSAPと比較してみましょう。もう一度言いますが、完全に異なる環境です。Ericsson、SAP、Spotify、Siemens Health Services、そして、Jimdoは、 Lean Kanban Central Europe 2013でケーススタディを発表しました。これらの企業は、自分たちの環境でうまくいく仕組みを広めようとしています。そして、私が知る限り、銀の弾丸はないと言えます。各企業で自分たちがうまくいくものを見つけなければなりません。うまく広められる解決策が、箱に入って届き、魔法のようにうまくいけばいいのですが、そうはいかないでしょう!

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