企業の文化を犠牲にすることなく成長させるには,どうすればよいのだろう? Fridtjof Detzner氏は,DIY Webサイト作成サービスであるJimdoの共同創業者のひとりである。InfoQでは氏に,同社がアジャイルによって起業とスケールアップを果たした方法や,その後の継続的改善のために"カイゼン"とレトロスペクティブを採用した理由などを聞いた。
InfoQ: あなたは他の創業者たちと共にJimdoを起業したのですが,その動機は何でしたか?
Fridtjof: コーディングをしなくても優れたデザインのWebサイトを作ることのできる,DIY方式のWebサイトビルダにニーズがあると気付いたからです。数回クリックするだけで,自分のWebサイトの作成を開始できるものを作ろうと思いました。
2004年に私たちは,Jimdoの前身となるNorthClickという会社を,北ドイツの古い農家で創業しました。
共同創業者のMatthias HenzeとChristian Springubは,私の両親の農場に無一文でやってきました。私たちはそこで,現在のJimdoの中心となっているオンラインソフトウェアを開発したのです。
それから間もなく,ビジネスプランコンペで20,000ドルの賞金を獲得しました。その資金と初期に得たユーザ契約のおかげで,会社をハンブルグに移転することができたのです。そこで最初のオフィスを借りました – それからは着実に事業を拡張して,大きなオフィスに移転し,ユーザとチームメンバの数を着実に増やしながら仕事を続けています。
個人のサイトに私たちのWebサイトビルダが使えないだろうか,と相談してくる友人の数もどんどん増えて行きました。彼らの作ったクールなWebサイトには,本当に心の底から驚きました!自分自身のことをページに書く人たちもいました。初期のJimdoユーザの中には,ドイツからオーストラリアのシドニーまでセーリング旅行したことを書いた人たちや,バンドのプロモートにWebサイトを使った人たちも ... 彼らからのフィードバックには,ただただ驚くばかりでした!
アイデアが生まれたなら,Jimdo - 皆のためのページを使って,あなたが今知っていることを今すぐ伝えてください。 現在Jomdoでは180名が作業しています – これらすべての人たちとJimdoで協力し合えるというのは,本当にすばらしいことだと思っています。
InfoQ: Jimdoは自社で上げた利益によって成長してきた"ブートストラップカンパニー"ですね。この事実は,企業としてスケールアップする過程に影響を与えているのではないかと思うのですが。
Fridtjof: Jimdoの作り上げたビジネスは急速に成長しています。そのためにこの数年間,いくつかのベンチャーキャピタルが関心を持ってきました。私たちはそういったものを辞退してきました。資金によってビジネスが加速する,という感覚を持っていなかったからです。しかし2012年になって,資金が成長にプラスになるかもしれない領域を見付けました – オンラインマーケティングです。そのビジネスを売り込んで,トップクラスのVCと協議し,非常に有利な条件規定書を獲得しました。企業価値評価や投資額(8桁),その他の条件もすべて私たちが望んでいたものだったのです。彼らとの議論もとても有意義で,私たちがこの世界を理解する上で大変役に立ちました。また個人的なレベルでも,とても仲がよくなりました。後はサインを済ませるだけの状態だったのですが,しかしベンチャを選択するということは,私たちが一線から身を引く約束をすることでもあります。私たちはこの会社を長く続けたかったのです。
チーム規模の小ささを補うため,私たちはアジャイルを非常に重要視しています。さらに,口コミによる拡販を進めるため,最高水準のユーザサポートも用意しています。
InfoQ: Magdalena Bethge氏に以前,フィールグッド・マネージャが企業文化をいかに醸成し成長させるかという話題でインタビューしたことがあります。Jimdoでの状況がどのようなものか,少し説明していただけますか?
Fridtjof: オフィスはどちらかというと,生活コミュニティのようですね。現在,私たちのいるハンブルグの本社と,サンフランシスコの米国オフィスの2つがあります。重要なのはお互いが学び,助け合い,協力することです。チームワークとは単なる流行語ではありません。物事をより効果的に成し遂げる手段なのです。百聞は一見に如かずですから,Jimdoでの一日がどのようなものかは,こちらのビデオを見て頂くか,あるいは"Why You’ll Love Working at Jimdo”を読んで頂ければと思います。
InfoQ: InfoQの"Culture is the True North"という記事ではArne Roock氏が,Jimdoが自身を継続的に改善する"カイゼン"の方法について話してくれました。Jimdoの創業者たちは,それにどう関わっているのでしょう?
Fridtjof: MatthiasとChristianと私は,カイゼンを強く信じています。個人的な作業プロセスにもカイゼンを使っていますし,それがチームに対してどのように機能するか,絶えず注意を払っています。私たちはチームからのフィードバックに心を開いていますから,フィードバックループを改良する方法や,Jomdoでのカイゼンのコンセプトについては,Arneとも緊密に連携しています。
InfoQ: Jimdoではアジャイルのレトロスペクティブが重要な役割をしていますが,レトロスペクティブに関わる個人的な経験があれば教えて頂けますか。
Fridtjof: チームに対しては,レトロスペクティブを定期的に行うように奨励しています。レトロスペクティブは本当に,チームや個人に力を与えてくれるものだと思っているからです。問題が複数のチームに関係していたり,大きなシステム変更を要する問題が持ち上がった場合などは,私たちのひとりがレトロスペクティブに加わることもあります。私たちが参加する場合はあくまでも一員として参加して,成果のコントロールなどをしないことが重要だと思っています。レトロスペクティブはチームのものですから。
InfoQ: Jimdoは今後も成長を続けたいと思っていますか? 企業規模が大きくなったことで,どのような影響があるのでしょう?
Fridtjof: 今のところ,チームメンバを積極的に増やそうという考えは持っていません。この数ヶ月間で多数の社員を採用しましたので,今のJimdoにとっては,私たちが企業として培ってきたユニークな社風に対して,彼らをうまく迎え入れることが重要です。このような持続的な成長によって,品質のよい製品を開発することができるのです。