アジャイルは従来的なプロジェクトマネージャという役割を重要視していない。そのためマネージャは,代わりとなる適当な役割を探すことになる。RGalen Consultingの社長で主任アジャイルコーチも務めるRobert Galen氏は先日,自身のブログ記事で,組織におけるリーダシップとマネージメント戦略を考え直す必要性に言及した。
記事の中でGalen氏は,LinkedInでのグループ討議を抜粋して紹介している。ある優秀なCST(Certified Scrum Trainer)が,マネージメントが関与する場合としない場合のチームパフォーマンスの違いについて,自らの経験を公開したものだ。
マネージャが関与しなくてもハイパフォーマンスな作業をするチームは存在します。そのようなチームが,マネージャの関与で効率を低下させてしまった例もあります。マネージャが関与しながら高いパフォーマンスを発揮するスクラムチームというのは,私は見たことがありません。私のこの経験は,Jon Katzenbach,Doug Smith両氏によるチームに関する研究調査("the Wisdom of Teams and The Discipline of Teams")から導き出された結論とも一致します。氏らによると(私の経験でもそうなのですが),リーダがひとりのワークグループでは,"本来のチーム"のような高いパフォーマンスを達成することはできません。理由はさまざまですが,もっとも大きいのは,彼らが自律的でないために相互責任などのソーシャルな関係性を活用できない点にあります。
CSC/CSTコミュニティは,ハイパフォーマンスなアジャイルチームを形成する上で,マネージャはコラボレーションモデルの一部ではあり得ないという意見なのだ。
VersionOneも同じく,マネージメントの問題をアジャイル適用の失敗要因トップ5のひとつとする調査結果を公開している。
アジャイル思想のリーダたちは,マネージャの新たな役割について議論を続けている。関連する書籍もいくつか出版されている。
- Management 3.0: Leading Agile Developers, Developing Agile Leaders - 著者: Jurgen Apello
- The Culture Game: Tools for the Agile Manager - 著者: Daniel Mezick
- The Leaders Guide to Radical Management: Reinventing the Workplace for the 21’st Century - 著者: Stephen Denning
- Coaching Agile Teams: A Companion for ScrumMasters, Agile Coaches, and Project Managers - 著者: Lyssa Adkins
靴や衣料をオンライン販売する新興企業のZapposは,同社の組織モデルを"ホラクラシ(Holacracy)"に移行すると発表した。ホラクラシとは,トップダウンの予測管理(predict-and-control)パラダイムを,権限分散による管理という新たな方法に置き換えるものだ。
同社CEOのTony Hiseh氏は,ホラクラシを採用した同社の組織モデルを次のように説明する。
私たちはZapposを,あまり官僚や企業のようではなく,もっと都市のような構造にする方法を見つけ出そうとしています。都市では人も企業も自己組織的です。私たちは通常の階層構造からホラクラシと呼ばれるシステムに切り替えることで,これと同じことを実行しようとしています。マネージャに指示を仰いだり報告したりするのではなく,社員が自らの作業を管理して,もっと起業家のように行動できるようにしたいのです。
Galen氏はリーダやマネージャを叱責したり解雇したりするのではなく,もっと建設的な関係を持つアプローチがある,と言う。リーダはアジャイルアプローチへの移行時にも必要だ。氏は次のような代替案を挙げて,彼らと協力関係を築くように奨めている。
- 類型化しないこと — すべてのマネージャをユニークな存在として扱い,アジャイルリーダになるための彼らの努力を公平にサポートすること。
- 共感と忍耐を持つこと。
- パートナとなって指導すること。
- 意識を持って聞くこと。
- 対話して真実を伝えること。
- リーダの価値を過小評価しないこと。