NHibernate 4.0 GAがリリースされた。 .NET 4.0をサポートする一方で，従来のIesi.Collectionsライブラリが外されている。さらにシーケンスやクエリ結果のページングなど，SQL Server 2012機能も部分的にサポートしている。
今回のリリースには３つの大きな変更がある。その中のひとつである.NET 4.0への移行は，非互換的な変更(Breaking Change)だ。その一環として，Iesi.CollectionのISetが，マッピングクラス内で対応するBCLジェネリック型のISet<T>にリプレースされた。永続的な非ジェネリックコレクションのサポートは削除されている。このISetは，NHibernateがHibernateの.NET移植版として最初に開発された当時の，4.0以前の.NET BCL(Base Class Library)には存在していなかった。これが当初，Iesi.Collectionライブラリを採用したおもな理由のひとつだ。.NET 4.0でISet<T>インターフェースが導入されたため，このライブラリの存在が冗長になり，今回の移行となった。
NHibernateの内部的には，Isei.Collcetionsライブラリへの依存性が残っている点は注意すべきだが，大部分のユースケースにおいては，BCLの実装を使用することが可能だ。
4.0リリースのサポートに加えて，OracleのODP.NET - Managed Data Provider for .NETが新たにサポートされた。さらに，SQL Server 2012のいくつかの機能がSQL Serverダイアレクトに追加されている。
- シーケンス - OracleとPostgresの既存サポートと同様の機能（2012以前のSQL Serverには，主キーを自動生成するためのID列はあったが，シーケンスはなかった)。
- "IIF"機能
- クエリページング - NH LINQのSkip()とTake()で，クエリがOFFSETとFETCHを行うことを保証する。
その他にも，マイナーな改良がいくつかある。
- QueryOverプロジェクションでMath.Round()がサポートされるようになった。
- SQL Serverダイアレクトでのpower()関数のサポート。
- NHibernateUtilの静的フィールドが，NullableTypeやITypeでラップされなくなった。
- Postgresql三角関数のサポート。
- エンティティ名を使用した，Save/Update/SaveOrUpdateの新しいオーバーロード。
- 多対多リレーションの可能なwhere()句。
全体として，100以上のバグフィックスとマイナーな改善があるが，そのうちのいくつかは非互換的な変更の可能性がある。変更点の完全なリストは，リリースノートあるいはNH JIRAを参照してほしい。
次は何か
4.1.0に向けた開発もすでに始まっている - NH JIRAをざっと眺めると，興味深い機能がいくつか目に留まる。
- Oracle 12c ダイアレクトのサポート。ID列や新しいページングキーワード(FETCH FIRSTとOFFSET)の他，新しい型(VARCHAR2, NVARCHAR2, RAW)などがサポートされる。
- PrePersistとPreUpdate属性 (同名のHibernateアノテーションに近い)。
- WCFデータサービス用のNHibernateContext(DataContextに代わる)。
- <join>要素でのプロパティ参照の利用。
WCFデータサービスの将来が渾沌としている現在の状況を考えると，NHibernateがWCFデータサービスをサポートするかも知れないというのは，特に興味深い(反対意見を反映して，最終的にはEF6サポートがWCFデータサービスに追加されたが)。
NHibernateはJava版のHibernateから移植された，完成度の高いオブジェクト-リレーションマッピングである。かつてはORMとして異論のない選択肢だったが，MSがサポートし，現在はオープンソースとなっているEntity Frameworkとの競合をきっかけに，将来性が不安視されている(NHibernateの支援者には，いくつか異論があるかも知れないが)。