著作家でありThoughtworks社のコンサルタントであるMartin Fowlerが、氏のブログの最近の記事で成熟度モデルは道具であると書いた。曰く、この道具を活用して、個人または集団の現在の有効性を分析評価し、次に獲得する必要がある実務能力を割り出すことで、能力の向上につなげることができるとのことだ。
成熟度モデルにおけるはじめの一歩は分析評価の実施である。分析評価によって現在のレベルを算出した後で、次のレベルを達成できるようになるための実務能力について計画を立てる。ある成熟度モデルは1つの評価軸のみ備えていることもあれば、複数のの評価軸を備えていることもある。Martinは次のように述べた。
成熟度モデルの分析評価において、真の成果物はレベルの算出ではなく、改善のためにするべきことのリストである。現在のレベルは、次に獲得するスキルの一覧を決定するための、単なる中間作業の一部に過ぎない。
成熟度モデルを利用すれば、学習という観点での投資判断を決定することも容易になる。Martinは次のように例を提示した。
成熟度モデルは進歩に関する一般的な見積もりを含むこともできる。たとえば、「レベルを4から5に上げるには、通常はおよそ6ヶ月を要し、その間に生産性は25%減少する」といったようなものだ。
Martinは、成熟度モデルは多くの領域で悪評を買っているが、効果的に使うことさえできれば役立てることもできるとしている。
Martinは、ソフトウェア業界における最も有名な成熟度モデルとして、能力成熟度モデル (CMM) について述べた。しかし、CMMは業界のコミュニティから軽視されている。当件について、氏は2つの根本原因を述べた。
- 重厚なドキュメントと事前計画の重視が、アジャイルソフトウェアのコミュニティに適していないこと。
- CMM認証を得ようとする組織の競争行動が、成熟度モデルを備える本来の目的を見失わせてしまうこと。
Thoughtworksの主席コンサルタントであるJason Yipは、成熟度モデルが持つ課題について次のように述べている。
ほとんどの成熟度モデルについて私が悩ましく思う一番の原因は、モデルが単純化されていて直線的だということよりも、学習の順序についての指示がお粗末なことだ。だいたいにおいて、容易なことから高度なことへと進めていくだけである。そうではなく、通常はこのような順番で学ぶべきだが、少し難しい事柄から始まる場合もある、というようにするべきだ。
言い換えれば、成熟度モデルというものは、効果のレベルと学習の道筋が結び付いてしまっているのだ。
Martinによれば、状況を把握して推論結果を導きだすためにモデルを使う場合は必ず、そのモデルが周囲の状況によく当てはまっていることを最初に確認しておかなければならない。もしそのモデルが当てはまっていないのであれば、それはモデルが悪いのではなく、その状況には不適切だというだけなのである。