2009年の初回から5周年となるDevOps Daysが, 10月27と28の両日,ベルギーのゲントで開催された。初日に続く2日目には,Next Big Soundの技術担当副社長David Zweiback氏,SalesForceのアーキテクトDave Mangot氏,AdRollシニアエンジニアのBrian Troutwine氏による講演の他,ライトニングトークやオープンスペースなども行われた。
完全な自己組織/自己管理型チーム(あるいは企業)を運営する
David Zwieback氏は,Next Big Soundでチームの運営と管理を実践した,自身の経験について報告した。同社のマネージャは社員の長所や望んでいることだけではなく,企業内であれ他であれ,彼らの長期的なキャリアプランをも重視することによって,企業に対する彼らの熱意を向上させている。一般論として,社員の熱意が高い企業は,高い社員定着率,高い顧客維持率と満足度,そして高い利益を得ている。調査によると,所属企業に対して熱意を持つ従業員はわずか30%だというのだから,改善する余地は十分にあるのだ。
熱意を向上する施策として,同社は,従業員が仕事を自ら選択する自己選択など,いくつかのプラクティスを試みている。そこでのマネージャの役割は,社員の不安や束縛の解消を支援することだ。
指揮統制という従来の意味でのマネージャには,まったく意味がありません。制約が明確でなければ,混乱に陥るだけです。
Next Big Soundでは,四半期ごとにブレインストームセッションを行って,次の四半期に行うことを決めている。モノポリーの金を使ってプロジェクトの優先順位を決め,それぞれが自分の作業内容を選択する。陳情や示唆という形を取る場合もあるが,何をするかを決めるのは,各個人に委ねられているのだ。プロジェクトリーダも,自身の役割を自分で選択することができる。コーディネートに関する役割であったり,スコープの明確化であったり,チーム間のコミュニケーションや依存関係の管理であったり,という具合だ。自己選択においては,フィードバックとコミュニケーションが非常に重要になる。
何をすべきかを誰も言ってくれないのですから,フィードバックの必要性は深刻です。
給与に関して,同社ではパフォーマンスレビューを行っていない。各人は毎年,Payscaleを使用してベンチマークされる。その上で,必要ならば生活費や,さらにはインフレーションも加味して給与の調整が行われる。
高い熱意を持っていれば,人々は生活のために最高の仕事をするでしょう。それ以上,何を知る必要があるのですか?人が幸せでなければ,それはすぐに分かります。
同時に氏は,これは個人的な経験であって,もっと大規模な企業や他所でも有効かも知れないし,そうではないかも知れないとも警告している。 文化をコピーすることはできなくても,企業は何よりも人を重視する形でデザインされるべきだ。
共感の認知神経科学: あなたにはDevOpsが相応しい
Dave Mangot氏の講演では,神経科学を話題の中心として,その分野の研究を引用しながら,それをDevOpsプラクティスに適用してみせた。
ヒトの脳にあるミラーニューロンは共感を司る。共感はDevOpsチームの特徴のひとつだ。ミラーリング,情動伝染(emotion contagion),感情の拡散はすべて,経験を共有するための脳の活動の一部であるが,それらと同時に,ヒトにはバイアス(bias)もある。最小化すべきバイアスのひとつである"根本的な帰属の誤り(fundamental attribution error)",あるいは対応バイアス(correspondence bias)が,グループ間の相互作用のあり方に影響を及ぼすのだ。典型的なグループ,あるいはサイロは,グループ内で共感的な作業を行い,他のグループを外部として扱う。他のグループの行動を解釈する上で,自らのグループ内の特性に過度の重点を置くのだ。バイアスはメンタライジングとも関連している。メンタライジングとは他者が心に持つものを理解する能力であり,Sally-Anneテストが示すところによると,4歳の子供にも見られるものだ。
このようなバイアスを最小化するには,期待されているのはすべてのグループが共に作業し,共に成功を収めることだと,各グループに認識させると同時に,必要ならば支援する用意があることを明確にすることだ。他の調査からも,人は自分自身で思うよりもずっと利他的で親切であって,いつでも自分を過小評価しているという結果が見られる。
初日の講演に加えて,Brian Trouwine氏による3回目の講演 "人間を考慮した自動化"の要約もInfoQで公開されている。