我々に必要なのは機能を請け負うことではない,より優れた成果を提供すること,ビジネス上の提供すべき結果に注力することである。その評価基準は,成果に関する洞察を与えるものでなければならない。何よりもそれが重要なのだ。適切な評価値を定義するためにはMobius Loopが使用できる。
Gabrielle Benefield氏は,ブログ記事"Outcome Metrics - Measure What Matters"の中で,スループットやアウトプットではなく成果(outcome)を評価するべきだという意見を述べている。
ほとんどの組織で評価されていないもの,そのひとつが成果です。成果は私たちが作り出す価値です。企業の収益増加への欲求から,製品の使用感や学習可能性に至るまで,成果は広範にわたっています。
成果に注目することで組織が得られるメリットとして,氏はいくつか挙げている。
さまざまな組織が評価値として成果を導入する様子を見るにつれ,それが一種の天啓のように思えてきました。私たちがこれまで見てきた,どのアジャイルやリーンの導入例よりも革新的なのです。プロダクトバックログは,そのほとんどが成果に関係ない,多くは単なるゴミであるとして,破棄されることになります。
マネジメントの参画もこれまでにないほど積極的です。最終的な収益に影響するものは何か,彼らは理解するようになっています。成果が得られれば,それが提供する価値を調べて他への投資と比較することによって,リスクの低減が可能だと分かったのです。
Gabrielle Benefield氏はLean Kanban France 2014カンファレンスで,アウトプットに優先する成果についてプレゼンテーションを行い,Mobius Loopについて取り上げた。Mobius Loopとは,組織による成果の創出と測定,提供を支援するリーンフレームワークである。
一般的にチームは,成果を達成するための最小限のアウトプットではなく,より多くのアウトプットを提供することに注力するものだ,と氏は言う。成果を評価することができれば,必要な成果を提供するためにそれを適用することができる。
Mobius Loopは問題から始まっている。洞察する力を得るためには,問題の奥深くを探ることが必要だ。提供しようとしている目標の成果に対して,問題がどのような影響を持つのかを知るには,その問題を十分に理解しておかなければならない。その上で,問題に対処する選択肢の検討に着手するのだ。
さらに氏は,Mobiusにおける選択肢検討との関連からChris Matts,Olav Maassen両氏の現実的選択肢に関する著作を引用して,選択肢の実施時期を判断するための条件の理解,Mobius Loopフィードバックループの適切な位置でアイデアを即時テストすることによるコミットメントの延期,といったことを説明した。
望ましいのは,先行指標を持ち,成果への適用と成果向上が可能な評価を行うことだ。評価値がその数値ではなく,それを使用する場合の思考プロセスの問題であるというのは,このような理由からだ。
Mobius Loopの適用可能な例もいくつか紹介されている。例として氏は,感染症患者を持った病院における問題を取り上げた。感染症で患者の死亡率が上昇すれば,病院のコストも上がることになる。問題を追及していく中で,患者が院内に持ち込んだバクテリアが原因であることが明らかになった。バクテリアは病院のスタッフ,医療廃棄物や機器などを通じて感染を拡大する。感染の最大の原因は,汚れた手と不適切な消毒だ。
求められている成果は,感染率と患者死亡数を低減すること,それによって数十億ドルの健康保険を節約することだ。成果に到達するためには,患者の検査と隔離,手指衛生の改善,事後管理フォローアップなどが選択肢になる。
選択肢に基づいて彼らは,術後患者の問題に対する手指衛生の試行調査など,いくつかの実験を行うことにした。評価値が定義され,成果達成の可否を評価するベースラインが設定された。
成果を基本とするアプローチを選択すれば,評価値によるフィードバックを使用してコントロールが可能になるので,計画の必要性は低くなるはずだ,と氏は言う。
ある参加者の,成果ベースのアプローチをいつ,どうやって始めたらよいのかという質問に対して氏は,成果について議論することによって意識が生まれ,シフトが発生すると答えている。そうなれば,Mobiusフレームワークが適用可能な問題を探すことができるようになるだろう。