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かんばん方式におけるメトリクスの適用例

原文(投稿日:2014/11/12)へのリンク

メトリクス(定量的な指標)は,かんばん方式に深く組み込まれている。可視化や管理フローなどのかんばん方式のプラクティスで役割を果たすと同時に,持続可能性やサービス指向,生存性といった面からの課題解決をサポートする。

Lean Kanban Central Europe 2014 ConferenceでWolfgang Wiedenroth氏は,メトリクスの持つパワーについて講演した。プレゼンテーションの中で氏は,かんばん方式におけるメトリクスの使用例をいくつも紹介している。

累積フロー図を使って作業を可視化すれば,メトリクスは目に見えるようになる。到着率や出発率などは測定可能な数値だ。スループットを測定すれば,それを使ってソフトウェアのリリースに要する時間の検討も可能になる。

かんばんは可視化を促進し,メトリクスはそれを支援する。メトリクスを可視化すれば,状況を素早く把握できるようになる。パターンを特定し,すべての人に同じ絵を見せることが,共通理解を構築する手助けとなる。氏が言うように,"可視化されたメトリックは優れたフィードバックループ"なのだ。

かんばん方式のメトリクスは,需要と能力のバランスを取るためのフロー管理に役立つ。データの収集後にワイブル分布(Weibull distribution)を使えば,フローを予測することができる。入手可能なデータから算出した形状パラメータを使って描いたグラフを使用すれば,指定された日には機能の何パーセントを提供可能か,あるいはバグ解決にどの程度の日数が必要か,といったサービスレベルの設定が可能になる。

プロジェクトのリードタイムと予算の算出には,リトルの法則を使用する。これらの計算では,プロジェクトの立ち上がりや完了時の影響が考慮されていないため,プロジェクトの第2段階でなければ有効ではない。氏は"メトリクスを使うことで,推測を含まないプロジェクトの予測が可能になる"と結論付けている。

かんばんの生存性に関する部分では,提供されるサービスの目的と,サービスがその目的を満たすために必要な基準が語られている。David Anderson氏によれば,品質や予測可能性といった適合性基準は,ユーザがサービスを選択する場合に使用するカスタマ価値のメトリクスに他ならない。必要なのは,いくつかの主要な測定値を計測し,トラックすることなのだ。

氏は顧客に対して,何が気になっているのかを尋ねるように勧めている。自身のブログ記事 "Evolving Scrum with Kanban #2 - Measure What?"で氏は,プロダクトオーナの要求を満足するために,氏のチームで使用中の計測を一例として挙げている。

私の場合,チームのプロダクトオーナは,チームに課題として与えていたユーザストーリに関心がありました。それをできる限り早く,提供してほしいと思っていたのです。タスクがどれだけ早く終了するか,ということには興味がありませんでした。知りたかったのはただひとつ,チームに完成とリリースを指示していたユーザストーリを,いつまで待たなければならいのか,ということだけでした。彼女にとって,これが求める価値だったのです。

このような状況であるスクラムチームは,レベル2[3]のかんばんメソッドを使ってサービスデリバリを改善しました。これが私のすべての疑問に対する答でした。

何を測定すればよいのか?ユーザストーリ?それともタスク?もちろんユーザストーリです!

では,いつから始めればよいのでしょう?プロダクトオーナがユーザストーリを提示した時点から,中間点を経て,ストーリのリリース準備が整うまでです!

メトリクスは変革を支援する上でも有効だ,と氏は言う。望ましい変革と望ましくない変革を,客観的な視点から区別する上で,その指標として用いることができるのだ。リワークの量,ブロッカの数,従業員の満足度,WIP(進行中作業)制限違反などが例として挙げられる。

メトリクスが機能するためには,シンプルに保つ必要がある,と氏は言う。シンプルなメトリクスを選択して,測定し,それについて議論するのだ。メトリクスが”珍道具" - まったく何の役に立たないものになっていないか,定期的にチェックすることも必要だ。

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