製品の本当の要件は必要な機能や提供されるべきユーザストーリーではない。顧客が製品を買うことで得られるパフォーマンスの向上の可能性が本当の要件だ、とMatteo Vaccari氏は言う。XP Days Benelux 2014カンファレンスで、氏はAntonio Carpentieri氏とともに、顧客が必要な価値を定義することについてワークショップを開催した。
Matteo氏曰く、私たちは価値について話すが価値の本当の姿について立ち止まって考えることをしない。氏は次のように価値を定義する。
私にとって、"価値"とは、"顧客が本当に欲しがっているもの"、または、"顧客が支払いをすることで幸せになる"ことです。
顧客は必要なすべての機能を持っているので、ソフトウエアは新しい機能を提供できない。違いは、機能ではなく、品質にある。顧客のニーズの満たし方だ。顧客を幸せにするには、優れた機能を発揮する方法を製品を通じて提供する必要がある、とMatteo氏は言う。
Matteo氏によれば、プロジェクトが頓挫するのは、性能要件を満たさないからではなく、機能要件を満たさないからでもない。
Matteo氏はKai Gilb氏の新車購入の例を提示して説明する。新しい車を購入することで幸せになるべき利害関係者は氏と氏の妻だ。Matteo氏にとっては、安全性とトップスピードが価値だが、氏の妻にとって車が持つべき最も重要な品質はかっこよさとトップスピードだ。ふたりは一緒に価値を定義した。例えば、トップスピードには3つの数字を使った。現在乗っている車のスピード(100 km/h)、新しい車のトップスピード(250 km/h)、そして許容できるスピードレベル(170 km/h)だ。この定義と安全性とかっこよさの定義をつかって車種を評価し、どの車を買うのかを決定した。
カンファレンスの参加者はペアになって誰が利害関係者で、彼らに取っての価値、その価値の計測方法について議論した。機能ではなく、価値にフォーカスするのは難しい、という参加者からの感想も得られた。ある参加者は、顧客とこうした議論を定期的に行うのがいいのではないか、一度価値を提供し、顧客が製品を使い始めたら許容できるレベルと目的のレベルを調整する必要があるのではないか、と話した。
許容できるレベルは達成する必要がある。すべての要件で目的のレベルを達成するのは至難の技だからだ。許容レベルを知ることで、顧客に素早い段階で価値を提供できる。目的レベルに達するまで待つ必要なないのだ。許容レベルに到達したら、さらに多くのお金と時間を使い目的レベルに達するかどうかを決めることができる。