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リーン/アジャイルリーダシップとSAFe(Scaled Agile Framework)

原文(投稿日:2015/01/12)へのリンク

SAFe(Scaled Agile Framework)は,企業規模のリーン/アジャイル開発において適用される実践や役割,活動,成果物を規定する。

1月22日にブリュッセルで開催されるScaling Agile for the Enterprise 2015会議でDean Leffingwell氏は,エンタープライズクラスの製品やサービスの構想を実現化する上で,SAFをどのように展開することが可能かを紹介する。プレゼンテーションで氏は,マネージャや経営層がソフトウェア企業をリードする上で必要な知識やスキルを向上するための,リーン/アジャイルリーダシップの原則を探求する予定だ。同会議はAgile Consortium Belgiumの提供により,UNICOMが運営する。InfoQでもQ&Aや記事,アーティクルなどでその様子を報告する予定である。

InfoQでは氏に,SAFeのデプロイ,クロスファンクショナルなアジャイルチームの構築と連携,SAFeの人に関する部分,リーン/アジャイルリーダシップの原則などについてインタビューした。

InfoQ: SAFeについて,それが何であるのか,組織にどのように展開できるのかといったことを中心に,簡単に説明して頂けますか?

Dean: SAFe(Scaled Agile Framework)は,企業スケールでリーンとアジャイル開発を適用するために,実証済の成功パターンを無償公開した,オンラインのナレッジベースです。SAFeのWebサイト(www.scaledagileframework.com)では,“SAFeの全体像”をブラウズして,アジャイルのプラクティスを企業全体にスケールするために必要な役割やチーム,活動,成果物といったものを理解することができます。

アジャイル開発の不変の原則,リーンシステム思考と製品開発フローに基づいたSAFeは,産業のセグメントを越えて,数百という世界最大級のソフトウェア開発企業で採用されています。SAFeを採用することによって,市場提供時間の短縮や,品質,生産性,従業員の意識の向上といった,多大なビジネスメリットが実現されるのです。SAFeの詳細はWebサイトで,IntelやDiscount Tire, John Deere, Nokia, ValPak, Telstraといった企業のケーススタディをチェックしてみてください。

InfoQ: SAFeでは,多数のチームによってソフトウェアを提供する場合の,チーム間の整合性やコラボレーションもサポート可能だということですが,これについて詳しく説明して頂けますか?

Dean: SAFeの重要な点のひとつに,複数のアジャイルチームを,バリューストリームを中心にまとめる,ということがあります。バリューストリームはリーン生産のひとつで,価値(バリュー)の継続的フローを理解し達成するための組織的パターンを提供します。バリューストリームは,ART(Agile Release Train)と呼ばれるプログラムによって実現されます。ARTは,アジャイルチーム中の長期間持続するチームで,バリューストリームの提供メカニズムとして機能します。各トレインには,価値のあるソリューションを継続的にビルド,リリースするために必要な,専用のリソースが用意されます。

ARTにはいくつかの重要な概念があります。

  1. アジャイルチームがイテレーションで動くように,ARTは確立された,信頼できるスケジュール上で実施されます。それによって規則性のあるデプロイメント,信頼に値するベロシティ(計画や予算の上では重要です),予測可能なプランニングが提供できるのです。それと同時に,必要なアーキテクチャやUXガイダンス,リリースガバナンスといったものも提供しています。
  2. ARTで必要とされる人たちの大部分は,職務上の報告構成とは無関係に,そのトレーンに専念します。これによって組織の改編を必要とせず,SAFeを簡単に適用できるようになります。

InfoQ: クロスファンクショナルなアジャイルチームを構築する上で,SAFeにはどのようなメリットがあるのか,説明して頂けますか?

Dean: これはARTに関する,もうひとつの素晴らしい部分です。自分たちのバリューストリームが何であるかを理解できれば,そのバリューストリームに誰が専念すべきかを決定できるようになります。これによって,そのミッションに最適な人材を集めたアジャイルチームとARTの構築が可能になるのです。複数のARTが共に計画し,共に作業を行って,プログラムインクリメント(PI)計画イベントを通じて定期的な意見交換を行った,共通のミッションの下に集います。PIはチームレベルでのイテレーションに似ていますが,複数チームの一連のイテレーションを,ビジネスレビューやリフレクション,さらに必要ならば方向性の変化に適したレベルで,時間と価値の両面から大きな量に集約したものです。

InfoQ:ユーザ価値の提供の重視とビジネス成果を向上を目的にSAFeが展開されたケースのスタディから,いくつかの例を挙げることは可能ですか?

Dean: もちろんです。

例えばCSGのScott Prugh氏は,SAFeとリーンとフローの原則がデプロイ関連の問題を5倍以上改善するという,素晴らしいビデオを投稿しています。CSGインターナショナルのケーススタディをご覧ください。

Intel MDOもSAFeを適用して,“2ヶ月間に8つのアジャイルリリーストレーンをローンチする”など,興味深い成果を挙げています。その結果得られた “可視性と予測可能性の大幅な向上”が,“implementing SAFe - MDO test case”で取り上げられました。

Nokia(市場提供までの時間を27週削減)やTelstra(提供コストの50%低減),John Deere(ソフトウェア維持コストの50%削減),BMC Corporationなどのケーススタディもあって,さらに増え続けています。

InfoQ: Lyssa Adkins氏が,SAFeに関するアジャイルコーチのコーチとして,自身の見解を示した記事を書いていますね。“SAFeは“アジャイル活動する”人たち次第だ”,と氏は言っていますが,ご自身の見解はいかがですか?

Dean: まったく同感ですね。 SAFeはその構築システムを,コアプラクティスとしてのアジリティに依存しています。私たちがアジリティとアジャイルマニフェストの肩の上に立っているのは,間違いありません。SAFeでは,“人がすべての作業を行う”という事実を重視します。ARTが最高の成功を収めるためには,全員がアジリティの価値とスキルに関する訓練を受けなくてはなりません。

SAFeの人に関する部分は他にもあります。その全体を見渡せば,重要な役割を果たすたくさんの人たち,House of Leanとの関係,リーン/アジャイルのリーダたちの姿が見えるでしょう。SAFeとHouse of Leanの基礎をなすのはリーダシップです。その基本は極めて単純です - リーン/アジャイル企業の適用と成功に対する最終的な責任は,現在のマネージャやリーダ,経営陣にあるのです。これらの重要人物たちは,リーン/アジャイル原則の訓練を受けて,長期的なこの理念を意思決定の基本とした上で,リーン/アジャイルの成功に対して個人的責任を負わなければなりません。大きな転換ではありますが,その結果は,より幸福で熱意を持った社員によって,より高度なビジネスバリューが提供されるという,素晴らしいものになります。

InfoQ: ブリュッセルのScaling Agile会議でリーンとアジャイルのリーダシップの原則について講演するということですが,これらの原則について説明して頂けますか?

Dean: そうですね,これまで述べたとおり,SAFeの基礎となっているのはアジャイル,リーンシステム思考,そして製品開発フローです。講演では,10の原則について論じる予定です。

SAFeのリーン/アジャイル原則

アジャイル,リーンシステム思考,製品開発フローを基本として,私たちは,

  • システム的な視点に立ちます。
  • バリューチェーンの経済学を理解します。
  • 反復的かつ段階的なシステム開発を行います。
  • 頻繁に統合とテストを行い,迅速に適応します。
  • リスクと有効性を,迅速で同期的な学習サイクルで管理します。
  • フローの活性化: WIP(Work In Progress)の制限,バッチサイズの削減を行い,キュー長を管理します。
  • クロスドメイン計画やコラボレーションと同調します。
  • 開発中システムの客観的評価に基づいたマイルストーンを設定します。
  • 知識労働者の内発的モチベーションを解放します。
  • 意思決定を非集中化します。

InfoQ: これらの原則が重要な理由は何でしょう,組織のアジリティ向上にはどのように役立つのでしょうか?

Dean: これらはSAFeを安全(safe)にする上で重要な,基本価値と原則を抜粋したものです。これらを理解して適用すれば,十分なビジネスメリットを享受することができるでしょう。ビジネスの状況や具体的な方法には関係なく,価値と原則の基本に忠実であってこそ提供できる,そのような種類のものです。これらの原則は,SAFeの隅々にまで組み込まれています。

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