アジャイルチームで働くとき、必ずさまざまな感情が生まれる。肯定的な感情はチームの働きを強化し、否定的な感情はチームの協力と生産性に影響を与える可能性がある。
Software Adviceでプロジェクトマネジメント技術を研究しているNoel Radley氏はチームのムードがプロジェクトマネジメントに与える影響についてペーパーを公開した。氏はオンラインの調査を実施し、データを収集し、ムードが生産性に与える影響について研究している何人かの学者にインタビューをした。
氏の研究結果によれば、チームのメンバ間の否定的な感情は頻繁で発生することであり、マネージャから否定的な感情を受ける場合もある。否定的な感情は生産性に影響を与え、チームのメンバは否定的な感情に自分たちで対処したいと思っている。
まず、回答者には、どのくらいの頻度で同僚の否定的な感情を受けているかについて質問しました。結果、回答者の大半(84%)が、同僚が怒りや不満をさまざま名頻度で表しているということでした。
私たちは、この調査で、マネージャの感情がチームのメンバに気づかれているかどうかも知りたいと思っていました。結果によれば、同僚と同等ではないものの、多数(73%)がマネージャが否定的な感情を表しているのをさまざまな頻度で気づいていました。
ほとんどの回答者は、自分や同僚の否定的な感情に直面したとき、雰囲気も生産性もさまざまな程度で悪化する(75%)、と答えています。(…).
また、回答者の大多数は個人的な責任を負ったことがわかりました。職場の否定的な感情に対処する責任があるのは誰かという問いに対して、44%が“私に責任がある”と回答しています。(…) 15%がマネージャに責任があると答え、9%が人事が対処するべきだと回答してます。
InfoQは氏にインタビューし、職場で否定的な感情が生まれる理由、アジャイルチームがどのようにその感情に対処するべきかについて話を聞いた。
InfoQ: なぜ職場の否定的な感情について調査しようと思ったのですか。
Noel: プロジェクトマネジメントの研究者として、私は業界の現在のニュースやトレンドを学んでいます。特に技術面には着目しています。多くの企業がプロジェクトマネジメントの重要さに気づいていますが、チームの感情がプロジェクトにどのような影響を与えているかについてはあまり考察されていません。職場の感情についての新しい知見がプロジェクトマネジメントのプロセスに活用され始めたのはつい最近のことです。私たちは1552人に調査を行い、プロジェクトの成功とパフォーマンスがチームの否定的な感情にどの程度影響を受けているのか調査しました。さらに、チームのメンバがマネージャをチームの感情の状態に責任を持つと考えているかどうかについても知りたいと思いました。
InfoQ: チームはどのような否定的感情を持ち得るのでしょうか。
Noel: 失望やフラストレーションやより強烈な敵意や怒りというような感情まで、さまざまな否定的感情が生まれます。もちろん、これらの感情は自然なものですが、チームが避けたいと思うのは“ハリケーン従業員”に直面することです。ハリケーン従業員はプロジェクトを否定的感情で汚染し、生産性や進捗に悪影響を及ぼします。
InfoQ: 否定的感情はなぜわき起こるのでしょうか。何が原因なのでしょうか。
Noel:原因はいくつかあります。感情はプロジェクトの細部から生まれます。厳しい納期に対するフラストレーション、不適切なプロセスコントロールや計画、実行時のコミュニケーション不足から生まれる失望などです。プロジェクトチーム自体も一緒に働いた経験のないさまざまな部門の集まりである可能性もあります。個性と期待がぶつかって否定的な雰囲気になり、プロジェクトの成功に影響を与えます。
多くの否定的な感情は未解決のままです。従業員はチームの否定的な感情についてマネージャに報告することを好みません。マネージャもチームで発生している感情的課題と、それがどのように生産性に影響を与えているかについて気づかないかもしれません。専門家へのインタビューによれば、マネージャはチームの雰囲気や感情の管理は仕事の範囲外だと考える傾向があるようです。従って多くの場合、チームのメンバはマネージャが感情問題を解決しないことを非難します。
InfoQ: あなたの考えではアジャイルチームで働けばある程度否定的な感情が生まれるということですが、なぜでしょうか。
Noel: アジャイルの手法はプロセスを通じて継続的フィードバックをもらいます。そして、そのサイクルを繰り返します。私の考えでは、このやり方はプロセスを通じて対話の機会が多く生まれ、否定的な感情が生まれやすくなります。しかし、重要なのは、この感情を解決することです。否定的感情に適切なスキルやツールで対処できないプロジェクトマネジメントの手法は、どんなものであれ、弱点があります。
InfoQ: 調査結果を見る限り、チームのメンバは否定的な感情に対処したいと考えていると感じます。どうでしょうか。
Noel: 否定的感情に対する対処は職場で一般的なことになるべきだと思います。否定的な感情の責任について、回答者の44%が、個人で責任を取ったと回答しています。しかし、否定的状況や問題が無視されたり、個人の内部に責任が取り込まれてしまうと、チームは生産性に影響を与える感情の問題を扱えないままになってしまいます。
InfoQ: 否定的感情に効果的に対処するにはチームのメンバにどのようなスキルが必要でしょうか。そのようなスキルはどうすれば身に付くでしょうか。
Noel: チームのメンバやマネージャが第一にするべきことは、心の知能指数についてより深く学び、感情を洞察する能力を磨くことです。そうすることでチームメイトとのやり取りも改善するでしょう。さらに、ムードトラッキングソリューションのような新しい技術も表れています。このようなソリューションを実装することで、プロジェクトのあらゆる段階でチームの雰囲気を解読できます。こうすることで、個人の責任ではなくなり、ソフトウエアに基づいて感情がプロジェクトの脅威になっていないかどうかを探ることができます。