NetflixがPranaをリリースした。JVMベースのプラットフォームサポートライブラリであるNetflixOSSを，異種マイクロサービスアプリケーションで使用するために同社が開発した，オープンソースの“サイドカー”アプリケーションだ。
Pranaは各サービスインスタンス上にデプロイされて，“親”となるサービスに概念的にアタッチする。サイドカーがオートバイに取り付けられるのと同じ方法だ。アタッチしたPranaは第２のプロセスとして，サービスと並行して動作し，サービスディスカバリや動的コンフィギュレーション，レジリエントなサービス間通信といった，HTTP APIを介して公開されるプラットフォームのインフラ機能を提供する役割をする。
Netflixのブログでは，マイクロサービスへの依存度の高いエコシステムの操作や管理において，サイドカーアプリケーションの使用は同社の内外でポピュラーになりつつある，としている。Pranaのようなサイドカーアプリケーションは，実装および展開技術の面で異機種化のますます進むサービスのプラットフォームインフラストラクチャに対して，均質なインターフェースを提供することが可能なのだ。
PranaとHTTP経由でプロセス間通信することで，PythonやNode.jsなど異なる言語で記述されたアプリケーション，あるいはMemcached, Spark, Hadoopといったサービスが，NetflixOSSライブラリの提供する機能を利用できるようになる。ターゲットとしる言語やプラットフォーム毎に，ライブラリを書き直す必要はない。
サイドカーアプリケーションとしてアタッチした親サービスに対して，Pranaは次のような機能を提供する。
- Eurekaサービスを介した，サービスの登録と検出。追加的なNetflixOSSベースのコンポーネントによって，親サービスを"発見可能"にすると同時に，HTTPエンドポイントの状態チェックも実行する。
- Atchaiusによる動的コンフィギュレーション。これによって親サービスは，動的プロパティの更新を受信できるようになる。
- レジリエントなサービス間通信。PranaサイドカープロキシがHystrix/Ribbonを使って他のマイクロサービスにリクエストを送ることで，親サービスが他のサービスを呼び出して，それらのライブラリが提供するサーキットブレーカやバルクヘッド，フォールバック機能を利用できるようになる。
- サービスインスタンスとその対応する環境の，実行時の情報と診断が，Admin Consoleを通じて可能である。
Pranaはまた，カスタムプラグインを追加することで，機能拡張が可能なように設計されている。ただし現時点でこの機能は，プロジェクトのGithubページでは未解決の問題に分類されている。Pranaのコアアプリケーションは，Netflixのマイクロサービス用テンプレートであるKaryon，同じくNetflixの非同期イベント駆動ネットワークアプリケーション用のアプリケーションフレームワークNettyのリアクティブエクステンション(Rx)アダプタであるRxNettyをベースに構築されている。
Pranaのアーキテクチャダイアグラム，Netflix Blogより
サイドカーアプリケーションを利用するこの方法は，Netflix以外の場所，例えばAndrew Spyker氏によるNetflixOSSベースの動的コンフィギュレーションデモアプリであるAcme Airや，Dockerのクロスコンテナリンク，AirBnBのサービスディスカバリ用アプリケーションスイートSmartStackなどにおいては，“アンバサダ”アプリケーションとも呼ばれている。
Pranaサイドカーアプリケーションは，プロジェクトのGithub “Getting Started” ページの指示に従うことで，サービスへの組込みも可能だ。