Microsoftは、昨年Revolution Analytics社を買収し、データサイエンスコミュニティへ接近した。Revolution Analytics社はオープンソースのRプロジェクトをベースにしたソフトウェアやサービスを提供している。この買収によって、Microsoftの製品にRの能力が反映され、Rを使ったソリューションが企業分野に出現することが予想される。Revolution Analytics社は非Windowsバージョンの製品を開発し続け、オープンソースコミュニティに貢献し続けるつもりだ。
イェール大学から2007年にスピンオフするかたちで生まれたRevolution Analytics社が現在、Rのエコシステムの中で重要な役割を担っている。約100の従業員がおり、世界中のユーザグループを支援している。200を超える顧客の中には、Jonhson & Jonhson、Merck、Pfizer、 Citigroupが含まれている。またRのオープンソースコミュニティでの存在感も強く、ParallelR, RHadoopや、フラグシップディストリビューションであるRevolution R Open(RRO)などを展開している。CEOのDave Rich氏への2013年のインタビューによれば、主な競合相手は、SAS、SPSS(IBMによって買収された)、KXEN (SAPに買収された)だ。
技術的視点から言えば、RROはGNU Rのダウンストリームディストリビューションであり、主にふたつの強化がなされている。性能と再現性だ。性能、特にマルチコアハードウエア上での性能は標準的なBLAS/LAPACKライブラリの代わりにIntel Math Kernel Libraries (MKL)を使うことで実現されている。知識のあるユーザならGNU Rを再コンパイルしてMKLをリンクするのは簡単だが、RROはMKLの機能を何もしなくてもそのまま使える。そして、もっと独特なのがふたつ目の強化点だ。CRANのリポジトリの独自のミラーを維持することで、Revolution AnalyticsはRROの各リリースが一定のセットのパッケージバージョンを使うことで、一定の再現可能な結果を常に提供するということを実現している。
Revolution Analytics自体はRの所有者でもなければ作者でもない。Rは無料であり、オープンソースプロジェクトであり、非営利団体のR Foundationが運営している。この財団は1993年にRoss Ihaka氏とRobert Gentleman氏が設立した。2人はオークランド大学の統計学者だった。Rは70年代にベル研究所が設計した統計計算言語Sのモダンが実装の1つだ。もうひとつの実装であるS-PLUSは、現在、プロプライエタリな製品としてTIBCOが維持、販売をしている。
誕生から20年以上たって、Rは産学合わせて200万人以上に使われている。Google、Ford、Microsoft、Facebook、Bank of America、Uber、The New York Times、そして、多くの連邦当局がRを使っている。2013年のNatureの報告によれば、エルゼビアが提供する世界最大級の抄録・引用文献データベースであるScopusに登録されている学術論文のうち、1%はRまたはRのパッケージを引用している。
MWD AdvisorsのIT業界のアナリストであるHelena Schwenk氏が指摘するように、多くの代表的なソフトウェア企業がRの戦略を描いている。Oracle、IBM、Teradata、Pivotal、SAP HANA、SASなどだ。Microsoftも動いている。[...] Microsoftが前進するために、自身のアプローチの価値を明確にし、他社と差別化することを優先している。
と氏は書いている。
調査会社のIDCの予測によれば、2015年に26億ドルの予測分析ソフトウェアの市場は2018に35億ドルになる。Revolution Analytics社は3870万ドルをベンチャーキャピタルから調達し、Wikibonの予想によれば、2013年に1200万ドルの利益を上げていた。