企業のアジリティ改革エージェントで組織コーチのDavid Dame氏が,“エンゲージメント・アジリティ(Engagement Agility, アジャイルに対する熱意)”のスケールアップについて,自身のブログで解説している。氏がそこで説明しているのは,スケールアッププロセスよりも重要な,人々の参加意識に対するスケールアップだ。
人々の熱意をスケールアップするというのは,組織内における情熱や目的意識を維持するメカニズムをいかに構築するかの問題です。
大規模な組織全体にアジャイルをスケールアップする場合,たとえ適切なフレームワークやプラクティスを採用していたとしても,人々の参加する姿勢を重視する必要があることに変わりはない,と氏は言う。アジャイルが人間指向である以上,そのスケールアップは単なるプロセスではない。さまざまなレベルの人たちの参加意識が重要なのだ。
社員の行動や才能,情熱といった,形のないものをスケールアップできるプロセスはありません。ボトムアップのイノベーションを起こすためには,人々の関与を促す必要があります。これによって,アジリティをサポートするのに必要な文化の構築が可能になるのです。
アジリティへの関与をスケールアップするためのポイントとして,氏は次のものを挙げる。
- ユーザの気持ちを理解すること。企業が“なぜ”それを行っているのかを理解する上で,これが役に立つ。
- 組織のビジョンを継続的に共有すること。組織が世の中からどのように見られたいと思っているのかを理解させるためには,組織の価値観について説明することが必要なのだ。
- 社員とのつながりを持つこと。彼らの目標に対して,深い理解と関心を持つ。彼らが個人として必要としているものは何か?彼らのニーズを満たすために,あなたにできることは何か?
- "フェイルファースト"し,学習し,修正する文化を確立すること。
- 問題解決力を高めること。積極的に耳を傾け,質問をすることが,自らの課題をより深く理解して,解決のための選択肢を見出す上で有効だ。
- 人々が勝利したならば,彼らの幸福を分かち合うこと。目標を達成した時には,それを振り返る時間を与えて,彼らが成功から学んだことを再確認させる。
参加意識は生産性に影響する,と氏は言う。
組織の発展と成功を自分たちのものだと感じることができれば,人はより生産的になります。エンゲージメント・アジリティは,組織全体におけるリーダの育成を通じて,継続的関与のエコシステム形成に寄与します。
Colin O’Neil,Gillian Clark,Gareth Evans各氏は,“The SAFe way to lean software development”という記事をブログに執筆した。その中で氏らは,人々を尊重することの重要性を説いている。
リーン思考の重要な面として,チームの作業方法を継続的に改善する能力の向上があります。知的労働者(Peter Drucker氏の定義によれば,自身の作業について上司よりも知識を持った人々)は,権限を与えられることによって,問題の解決と品質ソリューションの開発に対して本質的に動機付けられます。それゆえマネジメントに対しては,組織のすべてのレベルにおいて,透明性と信頼,相互尊重に基づいた,従業員やビジネスとのパートナシップの構築が求められます。その中には,製品開発の各ステージにおいて,私たちのユーザが誰であるかを理解すること,敬意を持って彼らに接すること,アジャイルチームに対して,適切な問題解決ツールとそれを使用する権限を与えること,などが含まれています。