アジャイルマニフェストの第一の原則には、価値のあるソフトウェアを顧客に提供することが書かれている。それゆえ、多くのアジャイル実践者は、ソフトウェア開発ライフサイクルの各ステップで、たえずその価値を考える。だが、フィーチャーのビジネス価値を見積もるのはたやすい仕事ではない。
BssNexus Globalのシニアパートナーで“Agile Value Delivery - Beyond the Numbers”の共著者であるLarry Cooper氏は、アジャイルによって提供される価値についてブログに書いている。彼はこう語る。アジャイルにおける「価値」という言葉は、最も高いビジネス価値から順に仕事を優先順位付けするという意味で使われてきたが、アジャイルプラクティスは「ビジネス価値」の定義を与えてはいない。
アジャイルプラクティスは、実際のところ「ビジネス価値」の定義を与えてはいません。厳密に何がビジネス価値を構成するのか、その高尚な解釈は、ビジネス側のだれか(あるいはプロダクトオーナーという形での代理人)に委ねられています。こうやってプロダクトのフィーチャーを優先順位付けすることで、私たちは価値を定義しようとしてきました。これはほとんど役に立たないやり方だと思っています。
Larry氏はこう語る。何に価値があるか、その解釈は、別の人の解釈と一致しないかもしれない。価値についてきちんとした理解がないと、組織のさまざまな部門同士が衝突を起こすおそれがある。何が価値なのか、いつどのようにそれを提供するのか、という質問は、組織やプロジェクトチームによって一度も検討されていないことが多い。
組織はこれまで価値の他の面を考えてきたでしょうか?
- 顧客/クライアントにどのように影響を与えるか?
- ブランド認識やブランドロイヤルティの改善につながるか?
- リスク軽減についてはどうか?
- ビジネスオペレーションの効率や効果を高めることについてはどうか?
- 他の価値あることをするのに、より多くのリソースや人員をかけることについてはどうか?
- ビジネスケイパビリティの強化や追加についてはどうか?
- コミュニティにおける社会的存在や認識を改善することについてはどうか?
- 意思決定のタイミングや質を高めることについてはどうか?
- 私たちの組織が確実に、適切であり続けて、生存し続けることについてはどうか?
Larry氏は、組織はいつどのように価値を提供するかについても考えるべきだと言う。
- 価値は一度にすべて手に入るのか?それとも徐々に手に入るのか?
- プロジェクトが完了したときに、すべての価値が得られるのか?それとも一部はプロジェクト完了後しばらくして得られるのか?
Blueprint Software SystemsのChief Marketing OfficerであるBrian Hartlen氏は、ビジネス価値を提供すること、そしてその定義方法についてブログで語っている。価値を定義し、理解するため、彼は次のような観点を示した。
- 価値はお金に関するものとは限らない。次のような形をとり得る。
- より良い効率をもたらすこと
- 組織のカルチャーを改善すること
- 生産性を高めること
- 柔軟性を高めること
- ステークホルダーは異なる価値を定義する。それぞれのプロジェクトにはさまざまなステークホルダーがいるが、次の3通りに解釈できる。
- カスタマー・ステークホルダー
- ビジネス・ステークホルダー
- テクノロジー・ステークホルダー
価値の定義に対し、それぞれ独自の優先順位、関心、観点がある。
- 価値の定義はプロジェクトの進行につれて変化する。
- コンテキストが重要。ひとつのプロジェクトのために(もしくは同じプロジェクトを別の視点で)価値を定義することは、必ずしもすべての場面のために価値を定義することではない。